4歳以下の子供に多く見られる原因不明の病気「川崎病」。最近は医療技術の進歩でかなりの確率で治せるようになっていますが、ときに合併症が現れたり、再発したりするケースもあります。今回は川崎病の予後について、後遺症が出る可能性や再発の確率などをご説明します。
そもそも川崎病とは?
川崎病は、全身の血管に炎症が起こる病気です。正式には「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」といい、この病気を発見した川崎富作医師の名前をとって川崎病と呼ばれています。
はっきりした原因はわかっていませんが、体質や免疫システムの異常が関係して起こると考えられています。主に4歳以下の子供に発症し、1歳前後の乳幼児に最も多く見られます。
発症すると38度以上の高熱が5日以上続き、全身の赤い発疹や目の充血、唇や手足にも湿疹が現れるなど特徴的な症状が現れます。
ほとんどの場合は免疫グロブリン製剤の投与やアスピリンの内服により、1~2週間ほどで症状が治まります。ただし、症状には個人差があり、免疫グロブリン療法で改善せずに後遺症が現れるケースや、治療が終わってしばらくしてから再発するケースもあります。
冠動脈瘤ができると2~3週間で大きさがピークになるため、川崎病と診断されたら2~3週間程度の入院治療が必要です(※1)。
川崎病は予後に後遺症が現れる?
川崎病自体は血管の炎症が治まれば予後は良好で、今までと同じように生活できるようになります。しかし、炎症が治まった後に「冠動脈瘤」が作られ、後遺症を引き起こすことが稀にあるため、注意が必要です。
冠動脈瘤とは、心臓に血液を送り込む「冠動脈」の構造がもろくなり、瘤(こぶ)ができる状態です。冠動脈瘤は時間の経過とともに少しずつ小さくなっていくことが多いものの、発症から1~2年ほど経った後に再び現れることもあるため注意が必要です。
川崎病の後遺症で冠動脈瘤が残る確率は4%ほどで、直径8mm以上の巨大瘤ができるのは約0.4%です(※2)。巨大瘤を放置しておくと心筋梗塞を起こしたり、特に症状がないまま突然死に至るケースもゼロではありません。
また、急性期の症状が強い場合、1ヶ月以上続くこともあり、心臓の筋肉に炎症が起こる「心筋炎」のため心不全が起きると、命に関わる危険性もあります。
川崎病は再発する?再発率は?
たとえば麻疹(はしか)や風疹は、一度かかると体内に抗体が作られ、二度と感染する心配がない病気です。しかし川崎病は、うつる病気ではないものの、再発の可能性があります。
再発率は2~3%と高くはありませんが、冠動脈瘤の後遺症と同様に経過観察をする必要があります(※3)。また、兄弟でかかる場合が1~2%あることがわかっているので、子供のうち誰かが川崎病にかかった場合、ほかの子の体調にも気をつけておく必要があります。
川崎病が再発するのは、最初の発症から数ヶ月~数年後とまちまちなので、一度かかったら長い目で子供の様子を見守るようにしてください。
川崎病は予後の経過観察と検査が重要
近年では、治療法が発達したことで川崎病による死亡率は2,000人に1人(約0.05%)と下がってきていますが(※3)、後遺症の重症化や再発をいち早く発見できるよう、退院後も定期検査を受け、経過観察することが重要です。
急性期を過ぎたあとの検査と経過観察については、日本川崎病研究会運営委員会の「川崎病の管理基準」により方針が示されています(※4)。
冠動脈瘤がなかった場合でも、症状が治まったあと2~3ヶ月間はアスピリン投与を続け、定期的に心臓の超音波検査(心エコー検査)を受けながら5年間経過観察を行う必要があります。
薬の服用期間や検査の受診タイミングについては、医師の指示に従ってください。
川崎病の再発や後遺症を防ぐには?
川崎病に一度かかると、炎症を起こした血管は弱っている状態です。ただし、長期的な予後として、動脈硬化から来る病気にかかりやすいかどうかは、まだ明らかになっていません(※3)。
基本的には、普段からバランスのとれた食事と適度な運動を心がけ、十分な睡眠を取るようにすることで、生活習慣病を予防しすることが大切です。
川崎病の予後は、再発や後遺症に注意しましょう
子供が川崎病と診断されると、後遺症や再発のリスクを考えてパパやママは不安になってしまいますよね。しかし最近では、医療技術の進歩により、診断・治療ともに効果が高くなっており、急性期の段階で適切な治療を受けることができれば、死亡率は低いとされています。
医師から病状をよく聞き、治療後も子供の体調に気をつけて過ごしましょう。子供のうちから生活習慣病の予防に努めることも大切ですよ。
また、再発や後遺症が現れたときに、いち早く気がつけるように、治療が終わったあとも定期的に病院で検査を受けることも忘れないでください。