1歳前後の発症が多い、原因不明の病気「川崎病」。全身の血管が炎症を起こして高熱が続き、冠動脈瘤などの後遺症が現れることがあります。この川崎病の治療には、抗炎症剤として知られるアスピリンが使われますが、どのような効果があるのでしょうか?今回は、川崎病のアスピリン治療の効果や副作用、退院後の服用について、ご説明します。
川崎病とは?
川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気で、正式には「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」といいます。はっきりした原因はわかっていませんが、体質や免疫異常が関係しているのではないかと考えられています。
4歳以下の子供に多く見られ、特に1歳前後で発症が多くなります。血管が炎症を起こすことで38度以上の高熱が5日以上続き、全身に発疹が現れるほか、目の充血やイチゴ舌、リンパ節の腫れ、手足のむくみなどの症状も見られます。
また、血管の炎症が引き金になって冠動脈瘤を発症することがあります。冠動脈瘤が大きくなってしまうと、心筋梗塞を起こして死に至る危険性もあるので、川崎病は予後の管理も重要な病気です。
川崎病の治療法は?アスピリンを使うのはなぜ?
川崎病は発症する原因がはっきりしていないため、根本的な治療法があるわけではありません。そのため、対症療法を行うことになりますが、命の危険がある冠動脈瘤を併発させないために、できるだけ早く血管の炎症を抑える必要があります(※1)。
川崎病の治療として、まず発症から7日以内に「免疫グロブリン」と呼ばれる血液製剤を大量に投与することで、血管の炎症を鎮静化させます。
また、免疫グロブリン療法と並行して、「アスピリン」という経口薬を投与します。アスピリンには血液を固まりにくくする作用があるので、血管の炎症を抑えて、冠動脈瘤の引き金になる血液の塊「血栓」ができるのを防ぐことが期待できます。
アスピリンには解熱・鎮痛作用もあるので、川崎病の急性期の症状緩和に対する効果もあります(※2)。
アスピリンに副作用はあるの?
川崎病の治療薬として効果を発揮するアスピリンですが、次のように注意すべき副作用もいくつかあります(※2)。
アスピリンには解熱効果がありますが、服用後、体温が下がりすぎてしまったり、手足が冷たくなってしまったりすることがあるので、川崎病にかかって高熱が出た子供に飲ませたあと、様子をよく観察することが大切です。
また、副作用として、アナフィラキシーショックが現れることも。呼吸困難、全身の潮紅、血管のむくみ、じんましんなどの症状が見られたときは、すぐに投与を中止し、適切な処置を行わなければなりません。
消化器官に潰瘍ができたり、肝機能障害などを起こしたりすることもあるので、腹痛や嘔吐、胸焼け、食欲不振などが見られたときには担当の医師に相談しましょう。
川崎病の患者に対してアスピリンを長期的に投与する場合には、定期的に尿検査や血液検査、肝機能検査などを行い、異常があったときには薬の量を減らしたり、しばらく休薬したりするなどの対応を取ることになります。
川崎病のアスピリン治療はいつまで続けるの?
川崎病を発症した場合、原則として2~3週間程度の入院治療を行います。急性期の症状が治まり、退院したあとも、しばらくはアスピリンを飲み続け、定期検査を受けながら経過観察を行う必要があります。
これは、一度川崎病の症状が治まったあとに再発したり、発症から1~2年ほど経った後に冠動脈瘤が現れる可能性もあるためです。
最初の発症で冠動脈瘤がなくても、退院後2~3ヶ月間はアスピリンを服用し、発症から1ヶ月後に心臓の超音波検査(心エコー検査)を受けます。それ以降も年に1回は心エコー検査や心電図でチェックを続け、5年間は経過観察が必要になります。
冠動脈瘤ができている場合は、瘤が小さくなったことが確認できるまでは、専門医のもとで治療を続け、定期的な検査を受けます。冠動脈瘤が大きい場合になどは、バイパス手術などの外科手術も検討することになります。
川崎病の治療後もアスピリンの服用を続けよう
冠状動脈瘤を起こさないようにするために、川崎病の症状が治まった後でもアスピリンは重要な役割を担います。高熱や発疹などの目に見える症状が治まると安心してしまいがちですが、数ヶ月~数年たってから冠動脈瘤を起こしてしまう可能性もあります。
アスピリンの服用を忘れてしまったり、自己判断で止めたりしないように気をつけましょう。退院後も長期間服用し続けるのは大変ですが、子供が健康に過ごせるように、パパやママがサポートしてあげてください。