最近よく聞くようになった「溶連菌感染症」。明治時代には「猩紅熱」(しょうこうねつ)と呼ばれ、感染者が隔離入院させられるほど恐れられていた病気も、現代では薬の服用と自宅の療養での療養で治すことができる溶連菌感染症として分類されています。熱が出ることが特徴の溶連菌感染症ですが、熱なしの場合もあるのか、また、熱が下がらないときに解熱剤を使用していいのかなどをご紹介します。
溶連菌とは?
溶連菌感染症は、A群β(ベータ)溶血性連鎖球菌に感染することで発症する病気です。
溶連菌感染症が特に発症しやすい年代は5〜15歳の子供です(※1)。感染しやすい季節は冬で、また、クラス替えがある一学期にも感染が拡大しやすい傾向がありますが、一年を通して感染することがあります(※2)。
溶連菌感染症の特徴は発熱と喉の痛みといった症状が主で、ときには頭痛や吐き気、嘔吐も伴います(※2)。また、場合によっては、舌が赤くなり、つぶつぶができる「いちご舌」と呼ばれる症状が現れることもあります。
溶連菌は高熱が出る?
溶連菌感染症を発症すると、38.5度以上の高熱がしばしば見られます(※2)。さらに、熱とともに、かゆみを伴う細かい赤い発疹が全身に出ることがあり、これを昔は「猩紅熱」(しょうこうねつ)と呼んでいました(※3)。
発疹は1週間ほどで無くなりますが、数週間後にわきや手の皮が細かいくずとなってポロポロと剥けることがあります(※4)。
溶連菌で熱なしの場合もある?
溶連菌感染症の特徴は高熱が出ることです。しかし3歳以下の子供が溶連菌に感染した場合は、熱や発疹などの特徴が現れないこともあります(※5)。
ただし、咳や鼻水、息を吸うときに出るゼーゼー・ゼロゼロといった喉の音や、声のかすれ、下痢などの症状がある場合は、溶連菌感染症の可能性は低く、他のウイルスによる病気の可能性も考えられます(※2)。
風邪のような症状が現れたら、自分で判断せず、早めに病院を受診することをおすすめします。
溶連菌の検査は?
溶連菌に感染しているかどうか疑われる場合、外来診療ではその検査結果の早さから、「溶連菌迅速診断キット」がよく使われています。
綿棒でのどの粘膜をこすって菌を採取し、キットによって判定する方法で、キットにもよりますが、5〜10分ほどで結果が出るものが多いです。
溶連菌の検査方法はその他にも、綿棒でのどの菌を採取し、そのあと専用の容器で細菌を増やしてから顕微鏡で調べる「咽頭培養検査」、血液を採取し、溶連菌が産生する毒素対する抗体の数値を測定する「血清抗体検査」があります(※5)。
3つとも基本的には健康保険が適用される検査です。検査の希望があれば、かかりつけの病院で検査を受けられるかどうか、受診前に病院に問い合わせたほうがよいでしょう。
溶連菌で熱が下がらない!熱が続くときはどうすればいいの?
溶連菌感染症は高熱が特徴ですが、抗菌薬を服用すれば、通常は24時間以内に熱は下がります(※2)。
溶連菌感染症に対しては、ペニシリン製剤が最も効果が高いと考えられています(※2)。ただし、ペニシリンにアレルギーがある人もいるので、その場合はセフェム系やマクロライド系の抗菌薬が処方されることもあります(※2)。
これらの抗菌薬は溶連菌に対して効果が高いものです。抗菌薬を使っても熱が下がらない場合は、薬の不十分な服用が原因、またはほかの病気との合併であることが多いです(※2)。
ただし抗菌薬を使う際に注意しなければいけないのは、処方された薬の服用を途中でやめないことです。
途中でやめてしまうと、再発したり、急性糸球体腎炎や、リウマチ熱といった合併症を発症する危険性が高まります(※4)。症状が治まったとしても、病院で処方された薬は必ず飲み切りましょう。
また、薬を飲み切ってから、再び熱が高くなった場合、新たに別の型の溶連菌や他のウイルスに感染している可能性があります。処方された抗菌薬を飲み切ったあとに、再び溶連菌感染症の症状が現れた場合には、病院を受診してください。
溶連菌で熱が下がらないとき、解熱剤は飲んでもいい?
英国では、解熱鎮痛剤のイブプロフェンが、脱水症状が見られる子供の腎臓に害を及ぼす可能性があるとして、解熱鎮痛剤を溶連菌感染症の最適な処方薬として与えることを認めていません(※2)。
日本では、溶連菌の感染者に対する解熱鎮痛剤の処方は、基本的には容認されていますが、医師によって意見が異なります。そのため、溶連菌感染症にかかったときは、自分の判断で家に残っている置き薬の解熱剤を使用せず、必ず医師に相談してください。
溶連菌が流行り始めたら受診しましょう
これまでご紹介してきたように、溶連菌感染症にかかると、多くの場合は高熱が出ます。しかし、3歳以下の子供には高熱や発疹といった症状が出ないこともあり、ただの風邪か、溶連菌感染症なのかの判断がつきにくい病気でもあります。
溶連菌感染症は感染力が強く、特にかかりはじめの時期はきょうだい間で25%という高い感染率を誇ります(※5)。そのため、周囲で溶連菌感染症が流行り始め、子供にも疑わしい症状が現れたら、他者への感染拡大を防ぐ意味でも早めに病院を受診させましょう。
また、溶連菌感染症は処方される抗菌薬の用法・用量を守らないと、再発や合併症のリスクがある病気でもあります。医師から処方された抗菌薬は必ず用法・容量を守って飲み切りましょう。