毎年流行を繰り返すインフルエンザは、子供から高齢者まで、性別を問わず、多くの人がかかっています。今回は、インフルエンザで腹痛になると、どんな対処をすべきなのか、A型とB型で症状は違うのかなどについてご紹介します。
インフルエンザってどんな病気?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる呼吸器感染症です。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型があり、それぞれにさまざまな派生型があります。
流行するのは主にA型とB型で、日本を含む北半球では、晩秋から初冬に流行が始まり、冬に流行のピークを迎えます(※1)。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを保菌する人のくしゃみや咳で飛び散った飛沫に含まれるウイルスを吸い込んだり、ウイルスが付着した手などで鼻や目の粘膜に触れたりすることで感染します。
感染後は、1~3日の潜伏期間を経て、38~40度の高熱や全身のだるさが急激に起こり、発熱に伴って悪寒がします(※1)。そのあと、鼻水やのどの痛み、くしゃみ、関節痛、筋肉痛に加えて、嘔吐や下痢などが起こることもあります。
またインフルエンザウイルスは、感染後2~3日のあいだに人の体内で急激に増えるものの、その後急激に減少し、感染後6日ほどで体内からはほとんどいなくなるという特徴があります(※1)。
インフルエンザで腹痛になることもある?
前述したとおり、インフルエンザは呼吸器系にウイルスが感染する病気ですが、消化器系の症状が起こることもあります。
その際は、下痢や嘔吐といった症状がみられ、腹痛が伴うこともあります。下痢や嘔吐がなくても、腹痛だけ起こることもあります。
インフルエンザはA型もB型も腹痛になる?
インフルエンザにかかったからといって、必ずしも腹痛が起こるわけではありませんが、ウイルスがA型でもB型でも、嘔吐や下痢を伴う腹痛になる可能性はあります。
また2009年に流行し、その後ほかの季節性インフルエンザと同様に流行を繰り返している新型インフルエンザ(A/H1N1 2009pdm型)は、下痢などの消化器系症状が多い傾向があり、腹痛が起こる可能性が高くあります(※2,3)。
インフルエンザの腹痛は薬が原因のことも?
インフルエンザが発症したとき、抗インフルエンザウイルス薬を使うことで、治癒を早めることができます。しかしこれらの薬を使用することにより、腹痛の症状がみられることがあります。
たとえば抗インフルエンザウイルス薬の中でも特によく使われる、タミフル、リレンザ、イナビルは、副作用として下痢や嘔吐など、消化器の症状があらわれることがあります(※4,5,6)。
またインフルエンザは高熱が出ることが多いため、一時的に熱を下げる効果がある解熱剤を使うこともありますが、その副作用として、腹痛や下痢があらわれることもあります。
インフルエンザの腹痛はどう対処する?
インフルエンザで腹痛があらわれても、安静にしておけば自然と治っていくことがほとんどです。しかし腹痛と一緒に下痢がみられた際は、脱水症状に注意する必要があります。
インフルエンザは高熱により体がだるくなることが多く、それによって水分や食事を摂りにくくなります。そこでさらに下痢になると、脱水症状を起こしやすくなってしまいます。
インフルエンザで下痢を伴う腹痛がみられたときは、できるだけ水分や塩分を摂り、脱水にならないように気をつけることが大切です。
また、整腸薬や下痢止めを使用すれば症状を抑えることもできますが、自己判断で市販薬を使わず、医師から処方してもらった薬を使いましょう。
インフルエンザ以外の病気が原因で腹痛になる可能性もある?
インフルエンザと同じ時期に発症しやすく、発熱と腹痛が見られる病気は他にもあります。
ロタウイルス感染症
ロタウイルス感染症は春先に多く見られる病気です。生後6ヶ月~2歳の子供が発症しやすく、5歳までにほぼすべての子供がロタウイルスに感染します(※7)。
ロタウイルスは何度も感染し、大人も感染することがありますが、特に子供が初めて感染したときは、水のような下痢や、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛などの症状がみられます。
ロタウイルス感染症にかかった子供の1/3に39度以上の発熱がみられるので、インフルエンザと勘違いしてしまうこともあります。
ノロウイルス感染症
ノロウイルス感染症は、11月~翌3月にかけて多く発症します(※8)。ノロウイルスを保菌する人の咳やくしゃみ、便や吐しゃ物、保菌者が調理した料理などで感染します。
また、ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を十分加熱せずに食べることでも、感染することがあります。
感染すると、嘔吐、下痢、腹痛、吐き気などが見られ、軽度に熱がでることがあります。子供が感染すると、大人よりも重症化する傾向があり、注意が必要です。
子供がインフルエンザで腹痛を訴えたときは、脱水に気をつけて
インフルエンザは高熱が主な症状ですが、腹痛や下痢、嘔吐など、消化器の症状が見られることもあります。また、治療薬の影響で腹痛になることもあります。
腹痛だけでなく下痢も起きた場合は、まず脱水にならないように気をつけてください。他の病気の可能性がないかにも注意して、経過をみてあげてくださいね。