赤ちゃんが欲しいと思ったとき、まずは体のリズムを知ることが大切です。たとえば、「基礎体温」を測ることで体の健康状態や排卵日を知ることができますが、基礎体温がガタガタで不安定だと「妊娠できるのかな?」と不安になるかもしれません。今回は、基礎体温が不安定になる原因や妊娠への影響、改善法などをご説明します。
そもそも基礎体温って何?
「基礎体温」とは、運動や食事、感情の起伏などの条件を取り除き、基礎代謝だけが反映された体温のことです。
正確にいえば、寝ているときの体温が基礎体温といえますが、睡眠中に測り続けるのは難しいため、朝、目が覚めて体を起こす前の安静な状態で測ります。
毎日、基礎体温を記録してグラフにすることで、生理周期や排卵日をおおよそ把握することができます。なお、体の状態を判断するには少なくとも3周期(3ヶ月)ほど記録を続ける必要があります。
基礎体温の測り方は?正しいやり方は?
自分の体のリズムを正しくつかむためには、基礎体温を正しく測ることが大前提です。具体的には次のようなポイントに注意して測りましょう。
● 睡眠をしっかりとる
● 枕元に体温計を置いておき、目が覚めたら体を動かさずに測る
● 舌の下に体温計を入れて測る
● 毎日できるだけ同じ時間に測る
基礎体温はどんなグラフになるの?
ホルモンバランスが正常であれば、基礎体温のグラフは上図のとおり「低温期」と「高温期」の二相に分かれます。
生理が始まってから排卵日前後までが低温期で、そこからぐっと体温が上昇して高温期に入り、次の生理まで基礎体温が高い状態が続きます。
排卵は、低温期から高温期に移行する時期に起こります。排卵された卵胞から、体温を上げる作用のあるプロゲステロンという女性ホルモンがたくさん分泌されるため、基礎体温が上がるのです。
このように、生理周期に合わせて基礎体温は変動します。基礎体温表をつけることで、排卵の有無や次の生理日、妊娠しやすい時期を予測できたり、妊娠しているかどうかをおおまかに判断できたりします。
また、基礎体温のリズムが安定しない場合、婦人科系の病気が潜んでいる可能性があります。普段から基礎体温をつけることで、いち早く病気を発見できることもあります。
基礎体温がガタガタで不安定でも妊娠できる?
基礎体温表をつけてみたところ、ガタガタと不安定で理想的な形と全然違う…という人もいるかもしれません。妊娠への影響も気になりますよね。
通常、低温期が終わる前後2~3日間に排卵が起こります(※1)。しかし、基礎体温がガタガタで、低温期と高温期がはっきり分かれていないと、排卵の時期を予測しにくくなります。
そうなると、妊娠の可能性が高い時期に性交渉を持つことが難しいため、妊娠しづらくなる可能性があります。
また、基礎体温の動きが不安定になる場合、何らかの体の不調のサインであることが考えられるので、何も対処せず放置してしまうと、不妊になる恐れもあります。
しかし、基礎体温がガタガタになってしまう原因を突き止め、治療などで取り除くことができれば、妊娠できる確率は高まります。
基礎体温がガタガタの原因は?
「基礎体温がガタガタ」と一口に言っても、乱れ方は様々です。
グラフの形に個人差はありますが、今回は代表的な3つのタイプとその原因をご紹介します。
二相に分かれているが、全体的にガタガタ
基礎体温を記録すると低温期と高温期の二相には分かれるものの、毎日の基礎体温の変動が激しく、安定しないタイプです。
この原因の多くは、ストレスや疲労による自律神経の乱れと考えられます。引越しや転職など、一時的な環境の変化が原因となることもあります。
高温期が安定しない
高温期が短かったり、高温期のなかで体温が上がったり下がったりするタイプもあります。
先述のとおり、排卵後に分泌されるプロゲステロンの作用によって、基礎体温は高い状態に保たれるはずです。しかし、プロゲステロンの分泌量が少なく、「黄体機能不全」などに陥っていると、高温期が不安定になってしまいます(※2)。
黄体機能が低下していると、子宮内膜が厚くなる前に剥がれ落ちてしまい、受精卵が着床しにくくなったり、着床した受精卵を受け止めていられなくなったりする恐れがあります。
はっきり二相に分かれない
高温期に入る時期になってもあまり基礎体温が上がらず、グラフが低温期・高温期の2相にはっきり分かれないタイプは、排卵していないことがほとんどです。
この場合、発育が不十分な卵胞が卵巣の中に溜まってしまう「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」などの病気が原因となっている可能性があります(※2)。
PCOSも不妊につながる恐れがあるため、適切な治療が必要となります。全体的に基礎体温グラフがガタガタしていないとしても、低温期がずっと続いているような状態のときは、要注意です。
基礎体温がガタガタでも排卵しているの?
基礎体温は女性の健康のバロメーターともいえ、ストレスや疲れによる体調不良などによって影響を受けやすいものです。
基礎体温がガタガタであっても、それが一時的なものであったり、高温期と低温期の二相に分かれていたりすれば、排卵はきちんと起きている可能性が高いと考えられます。
ただし、基礎体温のグラフがニ相に分かれず、生理周期がバラバラだったり、遅れたりすることが続く場合、排卵が起こっていない「無排卵月経(無排卵周期症)」である可能性もあります(※2)。
基礎体温を3周期ほどつけてみてもガタガタした状態が続く、生理不順が治らないといった人は、早めに婦人科で相談してくださいね。
基礎体温のガタガタを改善する方法は?
疲労やストレスが原因で、基礎体温のグラフがガタガタになる女性は結構多いものです。
心当たりがある人は、「食べ物」「運動」「睡眠」の3つのポイントを意識して、規則正しい生活を心がけてみましょう。女性にとって冷えは大敵なので、体質改善も大切ですよ。
● 体を温める食材を選び、足湯や半身浴などで体を温め、冷えを改善する
● ウォーキングなど、適度な運動を行うことで基礎代謝を上げる
● 就寝前はリラックスし、質の良い睡眠を心がけることで自律神経を整える
このように生活習慣を改善しても基礎体温のガタガタが治らない場合、婦人科系のトラブルが原因となっている可能性があるので、基礎体温表を持って病院を受診しましょう。
基礎体温のガタガタは漢方でも治せる?
基礎体温がガタガタになってしまったとき、長期的に体質改善を目指すなら、漢方薬を試してみるのも一つの方法です。たとえば、次のような漢方薬が効果的とされています(※3)。
● 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
● 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
● 加味逍遥散(かみしょうようさん)
漢方薬は、自分の症状や体質に合ったものを選び、正しく服用することが大切です。医師や薬剤師のアドバイスをもらったうえで処方してもらいましょう。
基礎体温がバラバラのときは婦人科で相談を
基礎体温を知ることで、女性ホルモンのバランスをチェックすることができ、妊娠に向けた体のリズムを知ることができます。気になることがあれば、基礎体温表を持って産婦人科を受診しましょう。
また、基礎体温グラフで妊娠しやすさを把握することもできます。妊娠するために理想的な基礎体温について、詳しくは関連記事を参考にしてください。