妊娠しやすい体づくりに効果的な漢方薬とは?漢方で冷えを改善できる?

監修医師 漢方専門医・内科医 入江 祥史
入江 祥史 日本東洋医学会認定漢方専門医・日本内科学会認定総合内科専門医。医学博士。1991年、大阪大学医学部卒。慶應義塾大学病院漢方クリニック医長、証クリニック吉祥寺院長などを経て、2017年、入江漢方内科クリ... 監修記事一覧へ

妊活中の女性は、妊娠しやすい体づくりを心がけていきたいですよね。冷えの解消や体質改善のためには生活習慣から変えることが必要とはいえ、それは簡単でなことではありません。そんな人におすすめなのが漢方薬。漢方は副作用が少なく、穏やかな作用が期待できることから、妊活中の女性に人気です。今回は妊娠しやすい体づくりに効果的な漢方薬について、体質別にご紹介します。

妊娠につながる漢方薬とはどんな薬なの?

漢方

漢方とは、もともと中国で発達し、日本に伝播してから日本国内で発展した医学です。人には本来、自分を治す力(自然治癒力)が備わっているとして、この力を高めることで症状を解消します。ホルモン治療やタイミング法、人工授精や体外受精といった西洋医学的な不妊治療ではなく、できるだけ自然な形で妊娠したい、という女性に多く利用されています。

妊娠には、排卵された卵子が精子と出会って受精することと、子宮内膜に着床することの2つの段階が大切です。漢方薬によってホルモンバランスを整えたり、子宮の血行を良くしたりすることで、妊娠したという先輩ママも多くいます。妊活中でまだ漢方を利用したことがない人は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

冷えは妊娠の大敵!漢方で改善できる?

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漢方医学には「気・血・水」という考え方があります。人間が生きる上で必要な3つの要素で、「気」はエネルギー、「血」は血液、「水」は体液のことを指します。この気・血・水の流れが悪くなることで、様々な症状がみられます。

身体の冷えは血行不良が原因となることが多く、漢方薬によって血流を整えることで冷えの改善がめざせます。身体がむくみやすいといった体質をもつ女性にも、溜まりやすい水の流れを促すことで、むくみを解消することもできます。

個人の症状や体質に合った薬を処方してもらえるのが、漢方の魅力ですね。

妊娠に向けた漢方はどこで買うの?

漢方

漢方は効き目が穏やか、というイメージはあるものの、身体に合わない漢方薬を使用すると副作用が出ることもあります。例えば食欲不振やほてり、頻尿、発汗などさまざまな症状がみられます。

初めて漢方薬を利用するときには、漢方の扱いのある産婦人科で医師と相談するか、漢方の専門薬局で漢方医に処方してもらいましょう。一度処方してもらってから、身体にあった漢方薬を一般薬局の薬に切り替えるという人もいます。

妊娠に向けて老化を改善する漢方薬は?

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漢方の中で老化とは「腎虚(じんきょ)」を示し、頭・耳・下半身に症状が現れやすく、生殖機能の衰えが見られます。大病や手術を経験した方、長期にわたって排卵誘発剤などホルモン治療を行っていた方は腎虚体質になりやすいといわれています。

主な症状

● 疲労感や倦怠感がとれない
● 下半身が冷え、逆に上半身はほてる
● 精力減退
● 物忘れが増えた
● 抜け毛・白髪が多い
● 年齢より老けてみられる

主な漢方薬

六味地黄丸(ロクミジオウガン)

手の平や足の裏がほてる、皮膚が乾燥してかゆい、腰が痛い、耳鳴りが起きる、喉が異常に乾くといった症状に効く漢方薬です。他にも「舌に潤いがない」「大量に寝汗をかく」といった症状を緩和してくれます。

成分 ジオウ・サンヤク・サンシュユ・ボタンピ・ブクリョウ・タクシャ

八味地黄丸(ハチミジオウガン)

前述の六味地黄丸と同じ効果に加え、下半身の冷えも緩和してくれます。

成分 ジオウ・サンヤク・サンシュユ・ボタンピ・ブクリョウ・タクシャ・ケイヒ・ブシ

妊娠に向けて「血」の不足を改善する漢方薬は?

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血が不足した状態を「血虚(けっきょ)」といい、月経のある女性によくある体質です。偏食の方や食生活が単調になりやすい方は、血のもととなる栄養がとれず、血虚体質になりやすい傾向にあります。

主な症状

● 血色が悪い
● 肌や髪のつやがない
● 爪がもろい
● めまい、たちくらみがある

主な漢方薬

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

体を温め、血液や水分の巡りを改善する作用があります。生理不順、貧血、むくみ、膀胱炎、やせ型で冷え症、顔色が青白い、疲れやすいといった症状の改善が期待できます。

成分 シャクヤク・ブクリョウ・ソウジュツ・センキュウ・タクシャ・トウキ

十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)

妊娠力をつけ、維持するための漢方薬です。体力がない、貧血、疲労倦怠感、食欲不振、手足の冷え、月経不順、無月経に効果があります。

成分 ニンジン・オウギ・ビャクジュツ・ブクリョウ・トウキ・シャクヤク・ジオウ・センキュウ・ケイヒ・カンゾウ

加味帰脾湯(カミキヒトウ)

食が細い、疲れやすい、風邪を引きやすい、下痢をしやすい、午後になると疲れて眠くなる、お腹が冷えて痛くなるといった症状に効果がある漢方薬です。

成分 ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・サイコ・サンソウニン・リュウガンニク・オウギ・トウキ・サンシシ・オンジ・タイソウ・カンゾウ・モッコウ・ショウキョウ

妊娠に向けて月経の悩みを改善する漢方薬は?

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月経の悩みを引き起こす「瘀血(おけつ)」とは、普段はスムーズに流れている血が何らかの原因で滞ってしまっている状態を指します。女性の場合、冷えが原因となることがほとんどだといわれています。

主な症状

● 肩こりや頭痛がひどい
● 顔色がどす黒い
● 目の下にクマがある
● 月経痛がひどい

主な漢方薬

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

滞っている血の巡りを改善してくれます。生理不順、生理痛がひどい、手足が冷えるのに顔はほてる、赤ら顔、唇・舌が赤黒い、額やあごにニキビができやすい、歯茎が腫れる、歯茎が赤紫っぽい、といった症状の改善に効果的です。

成分 ケイヒ・シャクヤク・トウニン・ブクリョウ・ボタンピ

桃核承気湯(トウカクショウキトウ)

桂枝茯苓丸の症状に加え、便秘や瘀血症状がより強い人に処方される漢方薬です。

成分 トウニン・カンゾウ・ケイヒ・ボウショウ・ダイオウ

温経湯(ウンケイトウ)

足腰は冷えるのに手のひらがほてる、口内や皮膚が乾燥している、肌荒れしやすいといった症状を持つ人に効果があり、月経不順や無月経、不妊を解消するとされる漢方薬です。

成分 トウキ・センキュウ・シャクヤク・ケイヒ・ボタンピ・ショウキョウ・カンゾウ・ハンゲ・バクモンドウ・ニンジン・ゴシュユ・アキョウ

月経前症候群・イライラを改善する漢方薬は?

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漢方には「気滞(きたい)」という考え方があり、ストレスや心配事などが続き、気の巡りをコントロールする機能が乱れている状態をいいます。気が滞った状態を放っておくとストレスに弱くなり、気と一緒に体内を巡っている血の巡りも悪くなることがあります。

主な症状

● 憂鬱感がある
● イライラする
● ストレスに弱い
● 脇やお腹が張ったように痛む

主な漢方薬

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

生理不順、生理時の出血量が多い・少ない、生理前に胸が痛い、疲れやすい、イライラするなどの症状がある女性に処方される漢方薬です。ホルモンや自律神経の異常によって起こる頭痛やのぼせ、めまい、動悸、不眠、体のかゆみ、疲れやすい、背中に汗がバーっと出て、その後寒さを感じるといった症状の改善に効果的です。

成分 サイコ・シャクヤク・ソウジュツ・トウキ・ブクリョウ・サンシシ・ボタンピ・カンゾウ・ショウキョウ・ハッカ

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

精神的な不安やイライラ、不眠症などの改善に効果があります。

成分 ハンゲ・ブクリョウ・コウボク・ソヨウ・ショウキョウ

妊娠に向けて冷えやすい体質を改善する漢方薬は?

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陰陽説では、正常な体温を保っているのは「陽」の働きであるといわれています。寒がりで手足がいつも冷たい、下半身が冷えやすいといった症状を「陽」が足りない「陽虚(ようきょ)」の状態と呼んでいます。

主な症状

● 寒がり
● 手足がいつも冷たい
● 下半身が冷えやすい
● 顔が青白い

主な漢方薬

八味地黄丸(ハチミジオウガン)

尿漏れや残尿感に効果があるとされるハルンケア(大鵬薬品)は八味地黄丸由来の8種類の漢方を使用しています。生理が遅れ気味、出血の量が少ない、顔の血色は良くない、日頃からおりものが多い、お腹と手足が冷える、腰痛がある、性欲があまりない、歩くとすぐ疲れてしまう、腰から下にかけての脱力感がある、頻尿といった症状の改善に効果があります。

成分 ジオウ・サンシュユ・サンヤク・タクシャ・ブクリョウ・ボタンピ・ケイヒ・ブシ末

牛車腎気丸(ギュウシャジンキガン)

八味地黄丸に牛膝(ゴシツ)、車前子(シャゼンシ)を加えた生薬です。不健康で疲れやすい、手足が冷えやすい、腰痛があるなどの症状があるときに処方される漢方薬です。ただし、胃腸の虚弱や下痢気味の人には用いられません。

成分 ジオウ・サンシュユ・サンヤク・タクシャ・ブクリョウ・ボタンピ・ケイヒ・ブシ末・ゴシツ・シャゼンシ

漢方で妊娠しやすい体質に

漢方 診察

漢方医学における「体質」は、血液型のように一生変わらないものではなく、年齢や環境、季節の違いによって変化することもあると考えられています。自覚症状だけで漢方薬を購入するのではなく、漢方の専門医に診てもらい、適切なものを処方してもらいましょう。

漢方は値段が高いイメージもありますが、保険適用される場合もあるので、服用を考えているときには、まず病院に問い合わせてみてください。妊娠しやすい体質に改善できるといいですね。

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