子供の口の中を覗いてみたときに、舌にブツブツができていると驚いてしまうかもしれません。これは「いちご舌」と呼ばれるもので、子供がかかりやすい病気のサインです。あらかじめ基礎知識を持っておくと、いざというときに落ち着いて対処できるので安心ですね。
今回は、いちご舌の特徴と、子供がいちご舌になったときに考えられる病気について、原因や治療法、予防法をご紹介します。
いちご舌とは?
舌が腫れ、表面にいちごのようなブツブツの赤みができる状態を、「いちご舌」と呼びます。通常、いちご舌が見られるときには、高熱、くちびるやリンパ腺の腫れ、のどの痛み、全身の発疹など、体のほかの部位にも症状が現れるので、総合的に考えて病気の診断をします。
いちご舌が見られる子供の病気は?
子供にいちご舌が見られた場合、考えられる病気が主に2つあります。それぞれについて、症状と原因を説明します。
溶連菌感染症
「溶連菌感染症」は、A群β溶血性連鎖球菌という細菌によって起こる感染症で、4~10歳の子供がかかりやすい病気です(※1)。
初期症状は風邪に似ていて、38~40度の発熱や吐き気、腹痛などが見られます。子供が溶連菌に感染すると、風邪のときよりも強いのどの痛みを訴える傾向にあるのが特徴です。
溶連菌感染症にかかると、咽頭の発赤、顔や体の皮膚に淡い発疹が出るなど、全身の皮膚に変化が見られます。口の中の変化の1つがいちご舌で、舌の表面が赤くブツブツと見えることもありますが、特に目立った変化がない場合もあります。発熱後、かゆみのある小さな赤い発疹が全身に現れ、それが治まったあとに手や足の指の皮膚が細かいくずとして、むけてくることもあります。
川崎病
川崎病は、正式には「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」いう名称の病気です。主に4歳以下の子供、特に1歳ぐらいの乳幼児に多く見られます。原因はまだはっきりわかっていません。
川崎病にかかると、いちご舌のほかにも「39~40度の高熱が5日以上続く」「目が充血する」「全身に発疹が出る」「手足が赤く腫れ、そのあと指先の皮がむける」「リンパ腺が腫れる」といった特徴的な症状が出ます。
後遺症として冠動脈に動脈瘤ができることもあり、無治療であると動脈瘤の破裂や心筋梗塞など命に危険がでる場合があります。この病気にかかった子供の死亡率は2%ほどでしたが、現在はほとんどありません(※2)。
いちご舌の治療法は?
上でご説明したとおり、いちご舌は溶連菌感染症や川崎病の初期症状の1つとして見られるものです。したがって、いちご舌を治すというよりも、病気そのものを克服するための適切な治療を行うことが必要です。子供のいちご舌に気づいたら、すぐに小児科に行き、診察を受けましょう。
溶連菌感染症
溶連菌感染症と診断されたら、病院でペニシリンなどの抗菌剤(抗生物質)が処方されるのが一般的です。服薬から1~2日ほどで発熱や発疹がおさまり、1週間ほどでのどの痛みがひきます。そのあと、手足の指先の皮膚がポロポロとむけてくることもありますが、おおよそ3週間程度でおさまります。
ただし、症状が治ったからといって、完治する前に自己判断で薬の服用をやめてしまったり、回数を減らしたりするのは禁物です。発熱から2~3週間後に、急性腎炎やリウマチ熱、血管性紫斑病などの合併症を引き起こし、治療が長引く恐れもあります。医師から処方された量や回数を守り、指示通り抗菌剤を服用し続けましょう。
川崎病
川崎病の発症原因がまだ究明されていないため、根本的な治療法はありません。しかし、早急に血管の炎症を鎮めることで、冠状動脈瘤などの危険な合併症を予防することができます。
川崎病と診断された場合、すみやかに入院を指示され、ガンマグロブリン製剤の静脈注射(点滴投与)を中心に治療を行います。それと同時に、抗炎症作用があり、血液を固まりにくくさせるアスピリンを内服することで冠状動脈瘤の発症を抑制します。ガンマグロブリン製剤も効かないほどの重症のケースでは、ステロイドの投与や血漿交換療法などが行われることもあります。
発症1ヶ月以降にも冠動脈障害が起きてしまった場合、抗血小板薬や抗凝固剤の服用を継続することも多く、定期的なフォローが必要となります。また、退院後も日常生活において制限が必要な場合もあるので、専門医との連携が重要です(※3)。
いちご舌が見られたら、まず小児科へ
今回ご紹介したとおり、子供の舌が腫れ、いちごのようなブツブツができる「いちご舌」は、溶連菌感染症や川崎病発症のサインである可能性が高いので、気づいたらすみやかに小児科にかかることが大切です。どちらの病気も、発見が早ければ早いほど合併症を予防するための適切な治療をすることができます。
「少し様子を見ればそのうち治るかな?」と自己判断せずに、すぐに病院で診察と検査を受け、医師の指示にしたがって治療に臨むようにしましょう。