猩紅熱(しょうこうねつ)という病気を聞いたことはありますか?猩紅熱は、子供がかかりやすい感染症の一つですが、熱と発疹という特徴的な症状の他にも、様々な体調の変化が現れます。今回は猩紅熱について、原因や症状、治療法をご紹介します。
猩紅熱とは?
猩紅熱とは、「A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)」という細菌によって起こる感染症の一つです。いわゆる「溶連菌感染症」の一種で、「猩紅熱」という名前でなく、溶連菌感染症と呼ばれることの方が多くなっています。
喉の痛みや高い熱、赤い発疹、いちご舌などが特徴的な症状で、幼稚園や保育園、小学校に通う年齢の子供がかかりやすい病気です。
昔は死亡率が高かったことから、コレラや日本脳炎などと一緒に「法定伝染病」に指定され、かかった場合は隔離して治療にあたっていました。しかし、今では抗生物質での治療が可能になり、一般的な感染症の一つとして扱われています。
猩紅熱にかかる原因は?
猩紅熱の原因である溶連菌そのものは、ごくありふれた細菌の一つです。赤ちゃんがかかることは比較的少ないですが、幼稚園や保育園、小学校に通う子供の場合、くしゃみや咳などの飛沫感染でうつりやすくなります(※1)。
また、溶連菌は唾液を介して感染することもあるため、感染した子供の食べ残しをパパやママが食べることは避けましょう。大人でも、免疫力が低下しているときや妊娠しているときには感染する可能性があるので、油断は禁物です。
猩紅熱の症状は?発疹が現れるの?
猩紅熱にかかると、まず喉に強い痛みが現れます。38〜39度の高熱が出て、頭痛や腹痛、悪寒、吐き気、嘔吐があるほか、筋肉痛や関節痛が出ることもあります。
その後、かゆみを伴う赤い発疹が首や胸あたりから出始め、やがて全身に広がります。発症直後は、舌が白いコケで覆われたような状態になりますが、3~4日すると赤くぶつぶつになる、いわゆる「いちご舌」という特徴的な症状が現れます。
また、症状が引いて数週間たった後に、脇や指先の皮がポロポロと剥けてくることもあります。治療をきちんと行わなかった場合には、目立った症状が治まって1~2週間たってから急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの合併症を起こすことがあるため、注意して経過を観察する必要があります(※2)。
猩紅熱かも?病院へ行くタイミングは?
猩紅熱は人にうつす恐れのある病気なので、先ほどご説明した症状から猩紅熱が疑われたら、感染の拡大を防ぐためにも早めに小児科を受診しましょう。咽頭の「迅速検査」などを行い、猩紅熱かどうかを診断します。
学校保健安全法における猩紅熱の扱いは「第三種感染症(その他の感染症)」で、「条件によっては出席停止の措置が必要」とされています。(※3)。
症状が治まったあとは再度病院に行き、医師から許可を得てから子供を登園・登校させるようにしてください。
猩紅熱を治療するには?
猩紅熱は細菌性の病気なので、ウイルス性の風邪と異なり、自然治癒には時間がかかります。
猩紅熱の治療には、7~10日間抗生物質を服用します。適切に治療すれば24時間以内に感染力はなくなり、症状は回復していきます(※3)。
しかし、溶連菌が体から完全に取り除かれる前に服薬をやめると、再発の恐れがあります。症状が改善された場合も、医師の指示通り最後まで薬を飲み切ってください。
猩紅熱の予防法はある?
猩紅熱には予防接種できるワクチンがないため、日常生活の中で意識して予防するしかありません。
先ほども触れたとおり、原因となる溶連菌はくしゃみや咳、唾液を介して感染します。手洗いやうがいをしっかり行い、感染症が流行っている時期は、できるだけ人が多い場所ではマスクを使うようにしましょう。
家族内で猩紅熱がうつる確率は約5%あるので(※1)、家族の誰かがかかってしまったら、感染が広がらないよう、同じ食器やタオルの共用は避けてください。
猩紅熱を家庭でケアする方法は?
熱が高いときはまずは寝かせて頭を冷やしてあげてください。猩紅熱にかかると、子供が強い喉の痛みを訴えることが多いので、喉の周囲を冷やし、時折うがいをさせます。食欲があるようならお粥やうどんなど、やわらかくて消化の良いものを食べさせてあげましょう。
また、発疹はできる限り掻きむしらないようにしたいので、爪を短く切ってあげることも大切です。冷やすとかゆみをやわらげることができますが、かゆみがひどいときは医師に伝えて、軟膏をもらうなどして対処してあげてください。
猩紅熱をうつさないよう早めに治療を
溶連菌は、タイプによって猩紅熱以外にもさまざまな感染症を引き起こす細菌です。ワクチン接種による予防ができないので、うがいや手洗いなど普段の生活における基本的な予防法を心がけましょう。
また、感染拡大の心配もあるので、2日以上のどが腫れて痛がるときは、なるべく早く小児科を受診し、検査と治療を受けてください。