萎縮性腟炎とは?性交痛や臭いなどの症状がある?治療法は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

子宮や卵巣、腟など、女性の器官は非常にデリケートで、加齢によってトラブルに見舞われることもあります。「萎縮性腟炎」もそのひとつで、閉経後の女性に多く見られる病気です。今回は、萎縮性腟炎について、原因や症状、検査・治療方法についてご説明します。

萎縮性腟炎とは?

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「萎縮性腟炎(老人性腟炎)」は、閉経を迎えたあとの女性に多く見られる腟の炎症です。

閉経後の女性のうち10~40%に委縮性腟炎の症状が見られるというデータもあります(※1)。

また、婦人科系の病気の治療により卵巣を摘出したあとの女性は、閉経を迎えていなくても萎縮性腟炎にかかることがあります(※2)。

萎縮性腟炎の原因は?

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萎縮性腟炎の原因には、加齢に伴うエストロゲンの分泌低下が関係しています。

女性の卵巣機能は、年齢が上がるとともに低下していき、エストロゲンなど女性ホルモンの分泌量が少なくなっていきます。やがて、50歳くらいになると卵巣機能がなくなり、一般的には1年以上生理が来なくなったら「閉経」と診断されます(※2)。

閉経を迎えると、エストロゲン不足の状態が長く続きます。すると、本来酸性に保たれている腟内の状態が中性に近づきます。

中性の腟内は、細菌が繁殖しやすい環境です。そのため閉経後は、腟内で細菌が繁殖し、炎症が起こることがあるのです(※2)。

萎縮性腟炎の症状!性交痛や臭いがある?

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萎縮性腟炎にかかると、外陰部や腟の潤いが少なくなることで刺激に弱くなり、ヒリヒリとした痛みやかゆみ、性交痛や不快感、不正出血などがよく見られます(※2)。

また、人によっては、粘り気のある、淡い黄色のおりものが出ます。このおりものは膿(うみ)を含んでいるため、悪臭をともなうこともあります(※2)。

多くの場合、萎縮性腟炎の症状は軽くて済みますが、放置しておくと腟内に雑菌が住み着いてしまい、「細菌性腟症」にかかることもあるので、早めに検査と治療を受けることが大切です(※3)。

萎縮性腟炎の検査方法は?

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性器からの不正出血や黄色いおりものが見られる場合、「子宮体がん」の可能性も疑って詳しく検査する必要があります。子宮体がんも、萎縮性腟炎と同じく閉経後に不正出血が見られ、初期は特にほかの症状がないという特徴があるためです(※2)。

具体的には、婦人科で「経腟超音波検査」や、子宮内部の細胞を採取して検査する「子宮内膜細胞診」を受け、がん細胞の有無を確かめることになります(※3)。

なお、この検査により子宮体がんの可能性が否定されたとしても、40代後半以降の女性は特に、「子宮体がん検診」を定期的に受けることをおすすめします。

一般的に公費で受けられる子宮がん検診は、「子宮頸がん」のみを対象とすることが多いので、子宮体がん検診を希望する場合には婦人科で相談してみましょう。

萎縮性腟炎の治療方法は?

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検査の結果、がんの心配がなく、萎縮性腟炎が原因で諸症状が現れていると診断された場合には、「エストリオール」などの薬を腟内に投与し、エストロゲンを補います(※2,3)。

薬によりエストロゲンの量が増えると、腟の血流量が増え、上皮細胞の増殖と代謝が活発になることで、腟内の自浄作用が回復し、細菌感染が抑えられます。

また、外陰部や腟のかゆみを抑えるために、対症療法としてかゆみ止めの薬が処方されることもあります。

萎縮性腟炎を予防するには?

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加齢とともに女性ホルモンの分泌量が減少するのは生理的な現象なので、萎縮性腟炎になりやすい体の状態になるのはある程度仕方のないことといえます。

しかし、生活習慣を見直して「腟の自浄作用の低下」と「腟からの細菌感染」を防ぐことで、萎縮性腟炎の予防につながります。

まず、腟の自浄作用は、エストロゲンの不足のほかに、疲労やストレスが溜まっていたり、体調不良で免疫力が下がっていたりすると、弱くなってしまいます。日頃から、あまり無理のない健康的な生活を心がけたいですね。

また、体を締めつけず、風通しの良い下着を身につけることで、デリケートゾーンの通気性を良くし、雑菌が繁殖しにくい状態を保つことも大切ですよ。

萎縮性腟炎を放置せず、快適な生活を

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閉経を迎えたあと、デリケートゾーンのかゆみやひりつきが気になる場合、萎縮性腟炎にかかっているかもしれません。また、不正出血や黄色いおりものもあるときは、子宮体がんの可能性も否定できないので、できるだけ早く婦人科で受診しましょう。

また萎縮性腟炎の症状として、性交痛を感じることがあります。もちろん、まずは病気の治療が最優先ですが、挿入までのスキンシップに十分な時間をかけたり、ジェルなどの潤滑油を使ったりすることで、より快適な夫婦生活を送れる工夫もしてみるといいかもしれませんね。

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