トゥレット症候群とは?原因や症状、治療法は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

「子供が自分の意思とは異なる言動を繰り返していて、気になる」という場合、「トゥレット症候群」が起きている可能性があり、きちんと対処する必要があります。トゥレット症候群とは、どんな病気なのでしょうか?今回はトゥレット症候群について、原因や症状、治療法などをご紹介します。

トゥレット症候群とは?どんな症状が現れる?

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突然かつ無意識に同じ動きを繰り返すことをチック症と呼び、このチック症が形を変えながら1年以上にわたって続くのが「トゥレット症候群」です。

トゥレット症候群は約300~2,500人に1人の割合で起こり、女性より男性に多く見られます(※1)。

チック症には、運動チックと音声チックがあり、それぞれ以下のような特徴があります。

運動チック

運動チックには、持続時間が短くて、明らかに無意味な「単純運動チック」と、持続時間が長くて、意味があるように見える「複雑運動チック」の2つがあります。

単純運動チックは、まばたきをする、顔をしかめる、首や肩を動かすといった動きを繰り返し、複雑運動チックは、跳ねる、触る、においを嗅ぐなどの動きを繰り返します。

音声チック

運動チックと同様に、音声チックも「単純音声チック」と「複雑音声チック」に分けられます。

単純音声チックで繰り返される行為は、咳払い、鼻鳴らし、奇声などで、複雑音声チックでは、状況に合わない言葉を繰り返し発したり、卑猥な言葉や人を罵倒する言葉を発する汚言症になったりします。

トゥレット症候群は何歳頃になりやすい?

トゥレット症候群の多くは、6歳頃から単純運動チックが現れ、そこに単純音声チックが加わります。2~3週、2~3ヶ月の周期で良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、1年以上にわたって症状が続きます(※1)。

10歳頃から複雑運動チックや複雑音声チックが現れ、成人期初めまでに消失や軽快に転じる割合は80〜90%とされています。ただし、少数ですが、成人まで重症なチックが続くことや、成人後に再発することもあります(※1,2)。

トゥレット症候群の原因は?

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トゥレット症候群の原因については、まだはっきりしたことが分かっておらず、ドーパミンなどの脳内神経伝達物質の異常や遺伝によって起こると考えられています(※1)。

「親からの愛情不足」や「育児上の問題」が原因でトゥレット症候群が起こるという声もありますが、これを証明する医学的・科学的根拠はありません。

トゥレット症候群に合併症はある?

トゥレット症候群の合併症として、注意欠陥多動性障害や強迫性障害、学習障害になることがあります。

この他にも、睡眠障害やパニック障害、自閉症スペクトラム障害を併発することもあり、トゥレット症候群を患わっている人には様々なケアを行っていくことが大切です。

トゥレット症候群の診断・治療法は?

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トゥレット症候群は、数回の問診と医療面接を行ったうえで診断するのが一般的です。

そして、トゥレット症候群の治療は、本人や家族、学校や職場などの関係者が症状を理解することから始まり、軽症であれば、特別な治療を行わないこともあります。

症状がひどい場合は、以下のような治療を行います。

薬物療法

薬物療法では、まず不安や強迫行動を抑える作用を持つクロニジンといった薬を使用しますが、重度の症状が現れている場合には、チックを抑制するために抗精神病薬を使用します。

ただし、抗精神病薬には筋肉の硬直や思考力の低下などの副作用があるので、注意して使う必要があります。

ハビットリバーサル

行動療法の一つである「ハビットリバーサル」は、チックが起きそうなときに、それとは逆の動作をするように訓練することで、症状を改善させていく方法です。

ただし、適切な方法でやらないと、症状を悪化させてしまう恐れがあります。自己判断で行うのではなく、必ず専門医の指示のもと行うようにしてください。

深部脳刺激療法

どの治療法を行っても症状が良くならない場合に、深部脳刺激療法を検討することがあります。

深部脳刺激療法は、チックに関係していると考えられる脳領域に電極を設置して刺激する方法です。

歯科スプリント治療

歯科スプリント治療とは、スプリント(マウスピース)を装着することで症状の改善を目指す治療法で、アメリカの医師によって開発されました。

日本では、トゥレット症候群治療推進学会が歯科スプリント治療の導入に向けて活動を行っています。

トゥレット症候群は周囲の理解と心のケアが必要

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トゥレット症候群は、動作や声で周囲の人を驚かせることが多く、学校や会社などでの社会生活に支障が出ることがあります。しかし、悪意があってやっていることではなく、あくまで病気の症状の一つとして起こっていることです。

トゥレット症候群の本人は、症状を止められない悔しさや、周りの不理解によって、精神的にも苦しんでいます。

周囲にトゥレット症候群について理解してもらいながら、本人への心のケアも行い、子供の笑顔と健やかな成長を支えていきましょう。

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