子宮付属器炎とは?原因や症状、治療法は?妊娠はできるの?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

いつもよりおりものが増えたり、生理でもないのに激しい下腹部痛が続いたり…。もしかしたらそれは「子宮付属器炎」の症状かもしれません。子宮付属器炎とは、卵管炎と卵巣炎の総称ですが、具体的にはどのような病気なのでしょうか。今回は、子宮付属器炎の原因や症状、治療法、妊娠への影響についてご説明します。

子宮付属器炎とは?

卵管と卵巣

女性の生殖器である卵巣・卵管をまとめて「子宮付属器」と呼び、そこに起こる炎症を「子宮付属器炎」といいます。卵管炎が卵巣炎を引き起こすことが多いので、ひとくくりに呼ばれることがよくあります。

子宮付属器炎は、軽症のうちに抗菌薬を投与して完治させることが大切です。重症化すると骨髄腹膜炎や卵巣・卵管留膿症などの合併症を起こしてしまうこともあるため、できるだけ早い発見と治療が必要な病気です。

子宮付属器炎になる原因は?感染経路は?

? 疑問

子宮付属器炎のうち、卵巣炎だけ単独で発症することはあまりなく、卵管炎から波及するケースがほとんどです。

クラミジア感染症や淋病などの性感染症がきっかけで、腟から子宮、卵管や卵巣に炎症が広がることもあれば、避妊リングやタンポンなどを腟の中に長時間入れっぱなしにすることで、大腸菌やブドウ球菌などの細菌増殖が原因となることもあります(※1,2)。

通常、腟内は乳酸菌の働きによって細菌が侵入しにくくなっていますが、体の免疫力が落ちているときなどは腟内環境が崩れ、細菌感染しやすくなるので注意が必要です。

子宮付属器炎の症状は?

女性 腹痛 生理痛

子宮付属器炎の急性期の症状として、下腹部の激しい痛みや発熱が特徴的です。症状が進むと、突然の寒気を感じるようになったり、吐き気、嘔吐、膿っぽいおりもの、不正出血が増えたりします(※1)。

卵管の炎症が重症化すると、卵管が体液や膿で塞がれてしまう「卵管留水症」や「卵管留膿症」を併発することもあります。また、腸にも炎症が広がることで、下痢を起こすこともあります(※1)。

子宮付属器炎が周りの器官にも波及し、骨髄腹膜と癒着を起こす恐れもあります。慢性化すると不妊の原因になるので、初期段階でしっかり治療することが大切です。

子宮付属器炎の治療法は?

子宮付属器炎の基本的な治療法は、炎症の原因となっている病原体に効く抗菌薬を投与することです。症状が軽いときは飲み薬だけで済むこともありますが、下腹部痛がひどかったり、骨盤腹膜炎まで引き起こしていたりする場合は、入院して点滴治療を受けます(※1)。

卵管・卵巣とほかの器官との癒着が見られるときは、投薬だけでなく手術が必要になることがあります。炎症を起こしている部分を切開して膿を取るほか、卵管留水症や卵管留膿症などを合併した場合は、卵管を摘出しなければならないこともあります(※3)。

子宮付属器炎になっても妊娠はできる?

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抗菌薬で治る程度の軽症であれば、妊娠への影響は少ないといえます。しかし、治療後も定期的に受診し、経過観察することをおすすめします。

子宮付属器炎が重症化し、卵管が膿や癒着で塞がってしまうと、卵子と精子がうまく受精できなかったり、受精卵が子宮までスムーズに到達できなかったりといったことが起こるので、妊娠しにくくなる可能性はあります。それだけに早期発見、治療が望まれます。

ただし、卵管も卵巣も左右に1つずつある臓器なので、片方だけ塞がったり、摘出されたりしても、もう一方が正常に機能していれば、妊娠への影響はないこともあります。

妊娠を希望する場合は特に、医師と相談しながら、前向きに根気強く治療に取り組みましょう。

子宮付属器炎の予防法は?

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普段からデリケートゾーンを清潔に保つことが一番の予防につながります。特に、免疫力が低下しているときや体調がすぐれないときは、腟内環境が悪化しやすいので、生活習慣を整えましょう。

また、子宮付属器炎の原因となりうるクラミジア感染症や淋病などの性感染症は、性交渉を通じてかかります。コンドームを装着することで予防してください(※2)。

子宮付属器炎のサインを見逃さないで

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妊娠、出産を望む女性にとっては特に、子宮と同じくらい大切な器官である卵巣と卵管。病原体に感染しやすい場所だけに、生理中や性交渉のときには清潔を心がけましょう。

また、下腹部痛やおりものの色や匂いの変化など、体調の異常に気づいたら、すみやかに婦人科を受診してください。

子宮付属器炎は、子宮外妊娠の可能性を高めるため、できるだけ早く治療することが大切です。特に、子宮付属器炎で治療を受けた経験がある人は、子宮外妊娠が起こりやすいため、妊娠に気づいたらすぐに産婦人科を受診しましょう。

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