急性腹膜炎とは?原因や症状、治療法は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供の虫垂炎(盲腸)の発見が遅れると、重症化することがあります。その場合に、「急性腹膜炎」という命に関わる病気を合併することも。急性腹膜炎を起こしたときはすみやかに病院で治療を受けることが大切です。今回は急性腹膜炎になったときに備えて、その原因や症状、治療法などをご説明します。

急性腹膜炎とは?

男の子 子供 疑問

「腹膜」と呼ばれる、お腹の内側や臓器を覆っている薄い膜が炎症を起こし、短期間で急速に広がってしまう病気を「急性腹膜炎」といいます。

炎症が長く続く「慢性腹膜炎」もありますが、子供が発症することは極めて稀です。単に「腹膜炎」と呼ばれるときは、急性腹膜炎を指すのが一般的です。

急性腹膜炎には、腹膜全体が炎症を起こす「急性汎発性腹膜炎」と、腹膜の一部が炎症を起こして膿がたまる「限局性腹膜炎」の2種類があり、特に急性汎発性腹膜炎の場合は命に関わる恐れもあるため、緊急手術など迅速な治療が必要になります。

急性腹膜炎の原因は?

本

子供が急性腹膜炎を発症するのは、急性虫垂炎(盲腸)の進行が主な原因です。虫垂炎の炎症が放置されることで、腸管を覆っている腹膜にも炎症が広がり、発症します。

その他には急性胆嚢炎や急性膵炎など、お腹の中にある臓器の病気が原因となることもあります(※1)。また、交通事故などでケガを負ったり、手術などで消化管に穴が空いて消化液が漏れ出たりすることで、腹膜が炎症を起こすこともあります。

稀に、小さな赤ちゃんが急性腹膜炎を起こすことがあり、これは先天的な腸管の障害による「胎便性腹膜炎」といいます。胎便性腹膜炎は、ママのお腹から生まれてくる直前に腸管が癒着を起こしたりすることで、腹水が多く溜まることにより引き起こされます(※2)。

急性腹膜炎の症状は?

イメージ 注意 雷雨 空 不安 曇り

急性腹膜炎を発症すると、激しい腹痛が現れます。腹膜炎の前兆として下腹部の違和感や軽い痛みが現れることもありますが、ほとんどの場合は何の前触れもなく、突然激しい腹痛に襲われます。吐き気や嘔吐、発熱などの症状を伴うこともあります。

急性虫垂炎を起こしていても最初はそれほど痛みが現れず、激しい腹痛を感じたときには急性腹膜炎を合併しているということもあります。歩けない、痛みで生活に支障があるなど子供が強い腹痛を訴えたときには、すぐに病院へ連れて行きましょう。軽い腹痛が続くときも、念のため病院を受診しておくと安心です。

急性腹膜炎の治療法は?

子供 腹痛 診断 病院 医師

急性腹膜炎の疑いがある場合、原因になった病気を突き止める必要があります。問診と触診を行ったうえで、血液検査や腹部CT検査、超音波検査などの結果を総合的に見たうえで、診断を下します。

急性腹膜炎と診断された場合、治療のため3~4週間の入院が必要です。まず点滴で栄養を補い、抗菌薬を投与して炎症を鎮めます。

そのうえで、原因となっている病気の治療を行い、お腹の中に溜まっている液や膿を洗い出します。臓器に穴が空いている場合は縫合手術や切除手術を実施することになります。

手術後も、安静にするため入院し、点滴による栄養補給や抗生剤の投与などを数週間続けます。

急性腹膜炎の疑いがあるときはすぐに病院へ

ママ 子供 泣く なだめる 抱っこ 叱る

小さい子供はお腹の痛みを表現するのが苦手なので、急性腹膜炎の前兆を見落としかねません。そのため、吐き気があり、元気や食欲がなく、機嫌も悪いといった不調が見られるときは一度小児科を受診することをおすすめします。

火がついたように激しく泣いてお腹を痛そうにしているときは、急性腹膜炎の可能性もあるので、すみやかに小児科や内科へ連れて行ってください。病院に行くべきか判断に迷うときも、放っておかず、医師の判断を仰ぎましょう。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう