子供は湿疹や虫刺されをかき壊してとびひを起こすことがあります。とびひも治療が難しい厄介な病気ですが、皮膚がやけどのように赤くただれて、口・鼻から全身に広がる場合は「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)」かもしれません。急速に症状が広がるものの、入院して適切な治療をすれば、多くは治る病気です。今回はブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群について、原因や症状、治療法をご説明します。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)とは?
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群とは、やけどのように皮膚が真っ赤に腫れたり、剥がれたりする皮膚の病気です。3歳以下の赤ちゃんや子供に多く見られますが、生まれたばかりの新生児がかかることは稀です(※1)。
かつては、命を落とす恐れもあった病気でしたが、近年では早期発見・早期治療により、きちんと治ります。全身に症状が及ぶので、パパやママは慌ててしまうかもしれませんが、治療後に跡が残ることもほとんどありません。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の原因は?
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は、とびひの原因でもある「黄色ブドウ球菌」という細菌から出される毒素が、血管を通って全身を回ることで、皮膚がやけどのような状態になります。
黄色ブドウ球菌は、人間の皮膚にどこにでもいる常在菌で、健康なときにはそれほど有害ではありません。
しかし、免疫力が低下していたり、体内に侵入して増殖したりすると「表皮剥離毒素」を放出します。その毒素が血液内に入り込むと血流にのって全身へ広がり、全身に皮膚症状を引き起こすのです。
小さい子供の場合は、転んだりぶつけたりしてできた外傷、虫刺され・湿疹をかき壊してできた傷などから、黄色ブドウ球菌に感染するケースがよく見られます。
この場合、風邪をひいて免疫が低下したときなどに、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を発症することがあります。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の症状は?
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を発症すると、発熱や皮膚症状が現れます(※1)。
まず38℃以上の高熱が出た後、目・鼻の穴・口の周りが赤く腫れてむくみが現れ、むくんだ部分の皮が放射状にめくれてきます。その部分から、膿(うみ)が出たり、かさぶたになったりすることもあります。
赤ちゃんの場合、機嫌が悪くなってぐずったり、黄色い目やにや鼻水が出たりといった症状が見られることもあります。
さらに、首・わきの下・太もものつけ根など、リンパ節のあるところに炎症が起き、腫れることがあります。皮膚の赤い腫れや、皮がむけている状態が、口・鼻から急速に全身に広がり、強い痛みを伴うところが、とびひとは異なる点です。
全身の炎症部分は、水ぶくれになります。水ぶくれは破れやすく、強くこするとずるっと剥がれて火傷のように赤くなります。
だんだんと回復してくると、皮膚が乾燥してきて、皮がボロボロと剥がれます。治療を受ければ1週間程度で症状が治まり、3~4週間後には跡も消えていきます。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の治療法は?
発熱があり、傷口周辺の皮膚が赤くただれてきた場合は、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の疑いがあるので、すぐに小児科を受診してください。
先ほどご説明したような皮膚症状が認められ、検査で目ヤニや、鼻・のどの粘膜から黄色ブドウ球菌が見つかると、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と診断されます。
この病気の場合、症状が重い場合や年齢が低い場合は、1~2週間程度入院して抗菌薬の点滴を受けるのが基本です。また、皮膚が炎症を起こしている部分には抗菌薬を塗り、洗浄布などで覆います。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)の治療の注意点は?
子供がかき壊した皮膚がじゅくじゅくしてきたとき、とびひだと思い込んでステロイド薬を塗ってしまうと、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の症状が悪化することもあるので、注意が必要です。ステロイド薬は、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の治療には効果がありません。
気になる皮膚症状が現れたときは、自己判断で家にある塗り薬を使うのは厳禁です。まずは小児科や皮膚科を受診し、正しい診断と治療薬の処方をしてもらってください。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)を予防しよう
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群にかからないようにするため、普段から予防を心がけましょう。黄色ブドウ球菌が体内に侵入しないように、外出後や食事前には手洗い・うがいを徹底する、傷口はしっかり洗って消毒する、汚れた手で傷口を触らない、といった習慣をつけることが大切です。
爪を短く切っておくと、虫刺されや傷口のかき壊しが減りますよ。赤ちゃんや小さな子供は自己管理することが難しいので、パパやママが気をつけて様子を見てあげてくださいね。