B型肝炎とは?症状や感染経路は?完治するの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃんが受ける予防接種の中に「B型肝炎ワクチン」があります。B型肝炎にかかるのを未然に防ぐためのワクチンですが、もしB型肝炎を発症してしまったら、どのような症状が現れるのでしょうか。今回はB型肝炎について、原因や症状、治療法、感染経路などをご説明します。

B型肝炎とは?

赤ちゃん お腹 手 触診

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスが原因で肝臓が炎症を起こす病気です。B型肝炎ウイルスが肝臓内に長い期間存在すると、肝臓の細胞が破壊されて、肝硬変や肝臓癌などを引き起こします(※1)。

国立感染症研究所の発表では、B型肝炎ウイルスにかかると、1歳未満で90%、1〜4歳では20〜50%、5歳以降だと1%以下の割合で、B型肝炎ウイルスが持続的に存在するようになり、このなかで10〜15%が慢性肝炎、さらにその10〜15%が肝硬変や肝臓癌に進行するとされています(※2)。

日本では約100人に1人の割合でB型肝炎ウイルスを持つ人がいて、日本肝臓学会によると、現在も年間で1万人近くが新しく感染しているようです(※1)。

B型肝炎の感染経路は?

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスへの感染によって引き起こされますが、感染経路はどこにあるのでしょうか。

B型肝炎ウイルスへの感染は、ウイルスが含まれる血液や体液が体に入り込むことで広がります。日本でも、輸血によって年間10例ほど感染があるとされています(※1)。

また、大人になってからのB型肝炎ウイルスへの感染については、B型肝炎ウイルスを保持しているパートナーとの性交渉で起こることが多くあります。

B型肝炎は赤ちゃんにも感染するの?

女性 混乱 謎 疑問 矢印 クエスチョン

B型肝炎ウイルスは、主に血液や体液から感染するものですが、まれに感染者の唾液や涙、汗からも感染する可能性があります(※3)。

ママやパパ、親族などの同居者がウイルスを保有していると、気づかないうちに接触し、赤ちゃんに感染してしまうことがあります。

また、ママがB型肝炎ウイルスに感染している状態で出産をすると、血液や体液との接触で母子感染を起こすこともあります。そのため、出産後すぐに対処できるように、事前に妊婦さんがB型肝炎ウイルスに感染しているかどうか検査することが一般的です。

ただ、子供の場合は明確な感染経路がわからないことも多く、知らないうちに感染していることも。もし赤ちゃんへの感染がわかっても、自分を責めないようにしてください。

B型肝炎の症状は?

分岐 分かれ道 二股 選択 

B型肝炎は、「急性肝炎」と「慢性肝炎」で症状が異なります(※2)。

急性肝炎

急性肝炎は成人後に感染した場合に多く見られ、B型肝炎ウイルスに感染してから1~6ヶ月くらいの潜伏期間を経て発症します。肝臓が炎症を起こし、倦怠感や食欲不振、嘔吐、茶色い尿などの症状が現れます。

一般的に、症状がひどくならないときは、数週間で症状が治まり、回復期に入ります。もし激しい症状が見られるときには、肝不全を引き起こす可能性があるため、すぐに病院を受診しましょう。

なお、一過性の急性肝炎の場合、ウイルスは体にすみつかず、完治します。

慢性肝炎

慢性肝炎は3歳未満の赤ちゃんが感染した場合に多く見られ、ウイルスが体にすみつく持続感染となります。B型肝炎ウイルスに感染しても目立った症状が現れず、数年~数十年後に、慢性的に肝機能障害を起こすのが特徴です。

赤ちゃんは免疫機能が未熟なので、B型肝炎ウイルスが肝臓にすみついても排除しようとせず、共存してしまい、長期間症状が現れないのです。

赤ちゃんの成長とともに免疫力が強くなってくると、肝臓内にすみついたB型肝炎ウイルスを攻撃し始め、肝臓の細胞も一緒に攻撃してしまうので、慢性的に肝臓が炎症を起こすようになります。

B型肝炎の治療法は?完治するの?

病院 医師 聴診器 

B型急性肝炎であれば、一般的にはウイルスを退治するための治療は行わず、嘔吐などへの対症療法を続けてB型肝炎ウイルスが体外に排出されるのを待ちます(※4)。ただし、症状によっては血液透析などの治療が必要になります。

慢性肝炎の場合、B型肝炎ウイルスが自然に体外に排出されることはないため、抗ウイルス薬などを服用して体内ウイルスの増殖を防ぎます。

ただ、持続感染の場合、どれだけ治療をしても体内からウイルスを完全に消すことはできないので、B型肝炎への感染を予防することが大切です(※2)。

B型肝炎は予防できるの?

予防接種 子供 腕 注射 ワクチン

B型肝炎ワクチンの予防接種を受けておけば、かなりの確率で感染を防ぐことができます。

WHO(世界保健機関)も、赤ちゃんが生まれたらすぐにB型肝炎ワクチンの予防接種を受けるように推奨しており、日本でも2016年10月に任意接種から定期接種に変更されました(※2)。

生後2ヶ月から受けられる公費助成対象のワクチンなので、赤ちゃんの健康のことを考えて、忘れないように受けておきましょう。

また、ママがB型肝炎ウイルスに感染していて母子感染を起こした場合でも、生後すぐに免疫グロブリンの予防接種を受けることで、母子感染のリスクを減らすことができます。

B型肝炎への予防接種を忘れずに受けよう

赤ちゃん 予防接種 注射

年齢が低ければ低いほど、B型肝炎に感染したときのリスクは高まります。予防接種を受けるのを先延ばしにして接種時期を逃してしまうと、周囲に感染者がいなくてもどこで感染してしまうかわかりません。

また、妊娠中に感染が判明したときは、医師と相談して出産後の対応を確認しておきましょう。慌てず、落ち着いて対処してください。

B型肝炎ワクチンの予防接種を受けることで、子供がB型肝炎に感染することを防ぎましょう。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう