体外受精や顕微授精で胚盤胞移植をした後、着床してくれることを祈りながら判定日を待っている人もいるのではないでしょうか。「胚盤胞移植後の過ごし方が、妊娠率に影響を与えることもあるのかな?」というのも、気になるポイントですよね。今回は、判定日までの期間に心がけたいことや避けたいことなど、胚盤胞移植後の過ごし方をご紹介します。
胚盤胞移植後はどんな状態?判定日はいつ頃?
胚盤胞移植は、体外受精・顕微授精において、受精卵を体外で5~6日ほど培養して「胚盤胞」という状態に成長させ、子宮へ移植する方法です。受精してから2~3日後の「初期胚」を移植するのに比べて、費用はかかりますが、妊娠率(着床率)が高いというメリットがあります。
胚盤胞移植後は、順調に行けば3~5日後に着床するといわれています。ただし、着床完了、つまり妊娠が成立しているかどうかを確認できるまでは7~10日ほどかかります。確実な妊娠判定を行うために、胚盤胞移植から2週間前後たった日を「判定日」と設定する病院が多いようです。
胚盤胞移植後、体調の変化はあるの?
胚盤胞移植をしたあと、いつもとは体調が違うと「もしかして妊娠したかな?」と期待を抱いたり、逆に何の変化もないと「着床しなかったのかな…」と落ち込んでしまったりすることもあるかもしれません。
ただし、微量の出血がある、胸が張る、下腹部痛が起きる…といった「妊娠初期症状」は着床前には見られません。
妊娠初期症状には、受精卵が子宮内膜に着床したあとに分泌される「hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」など、着床後のホルモンバランスの変化が関係していると考えられています。
胚盤胞移植後しばらくは着床しておらず、たとえ体調変化があっても、基本的には妊娠とは無関係だといえます。
ただし、不妊治療の一環で、受精卵を採卵してから妊娠判定までの間、着床しやすい子宮環境を整えるためにホルモン剤の投与を行う場合があります。もし胚盤胞移植後に不正出血や吐き気、胸の張りなどが見られた場合、妊娠初期症状ではなくホルモン剤の副作用かもしれません。
胚盤胞移植後の体調で何か不安なことがあれば、まずは担当医に相談してみましょう。
胚盤胞移植後、フライング検査はできる?
基本的には、胚盤胞移植から2週間前後たった判定日に病院で尿検査、もしくは血液検査を行い、妊娠しているかどうかを確認します。
しかし、不妊治療に取り組んでいる人にとっては、2週間がとても長く感じられるもの。「病院へ行く前に、1日でも早く妊娠の有無を確かめたい」と思う人も多いかもしれません。なかには、判定日を待たずに、市販の妊娠検査薬を使って「フライング検査」を行う人もいます。
先ほどもご説明したとおり、胚盤胞移植後に3~5日で着床すると考えられていますが、具体的な着床のタイミングは人によって異なり、移植の段階で予測することはできません。
しかし、移植後5~7日目あたりから、「早期妊娠検査薬」を使ってフライング検査を始める人もいます。
妊娠検査薬は、先ほども触れた「hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」に反応する仕組みです。検査のタイミングが早いと、hCGホルモンの濃度が高まっておらず、結果が正確に出ない可能性があります。
妊娠検査薬によるフライング検査で陽性・陰性どちらが出たとしても、結果を鵜呑みにせず、「参考程度」と考えて、落ち着いて判定日を待つようにしてくださいね。
胚盤胞移植後の過ごし方は妊娠率に影響する?
胚盤胞移植してから判定日までの約2週間は、どう過ごすのがベストなのか気になりますよね。医学的には、「胚盤胞移植後の行動によって妊娠率が変わる」という因果関係を示すデータがないのが現状です。
しかし、即効性のある方法はなくても、妊娠しやすい体づくりを目指して過ごすことは大切です。胚盤胞移植後はあれこれ考えて不安になってしまうかもしれませんが、下記のことに気をつけながら、できるだけ健康的な毎日を過ごせると良いですね。
ストレスを溜めない
ホルモン分泌に大きく関わる脳の視床下部や脳下垂体は、ストレスの影響を受けると機能が低下しやすく、結果的にホルモンバランスが崩れてしまうこともあります。
胚盤胞移植後の2週間は、やきもきしたりイライラしたりしてしまうかもしれませんが、パートナーと趣味の時間を過ごしたり、リラックスできるアロマを焚いたりと、ストレスを解消する時間を持つようにしましょう。
栄養バランスのとれた食事をとる
人間の体は、食べたもので作られています。栄養素と妊娠しやすさとの間に明確な因果関係があるわけではありませんが、体の健康を保つために食生活に気を配りたいですね。
世間では「これを食べれば妊娠しやすくなる」と言われている食材もありますが、ある特定の食材だけに偏るのはおすすめできません。栄養バランスの良い食事を規則正しくとることで、ホルモンバランスを整えていきましょう。
軽めに体を動かす
胚盤胞移植当日は安静にしておいたほうが無難ですが、翌日以降は日常生活の範囲であれば、体を動かすことは問題ありません。軽いジョギングやストレッチ、ヨガなどの適度な運動をすることで、ストレス発散にもつながりますよ。
子宮や卵巣の機能を低下させる恐れがある「冷え」は妊娠の大敵ですが、軽く体を動かすことで血行が良くなることが期待できます。ただし、極度に激しい運動は控えてくださいね。
胚盤胞移植後の過ごし方で避けたいことは?
胚盤胞移植後の過ごし方について、それほど制限事項があるわけではありませんが、万が一のことを考えて、できれば避けておきたいことも。一般的に妊娠を妨げる要因としてあげられることもあわせ、下記のことを気をつけるように医師から説明されることが多いようです。
胚盤胞移植後の過ごし方は、担当医の指示に従い、少しでも疑問点や不安なことがあれば、すぐに相談するようにしましょう。
胚盤胞移植後に避けたいこと
● 体を冷やす行為や服装
● タンポンの使用
● 移植後2~3日間の夫婦生活
● 自転車での長距離移動
● 極端に激しい運動
● 飲酒と喫煙
● 移植当日の入浴や水泳(翌日以降はOK)
胚盤胞移植後の過ごし方は考えすぎないで
胚盤胞移植後の過ごし方で妊娠率が変わるのかどうか、医学的に因果関係は示されていませんが、大切なのは「気にしすぎないこと」と「後悔しないこと」です。
1つ1つの行動を制限したり、一喜一憂したりしていると精神的に疲れて、かえってストレスがたまってしまうことも。あまり考えすぎず、判定日までの約2週間をリラックスして過ごせるといいですね。