桑実胚とは?移植による着床率は?5日目でも妊娠できる?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

不妊治療で体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)での妊娠を目指す際に、「胚移植」を行うことがあります。これは、採取した卵子と精子を体外で受精させて、ある程度まで育った受精卵を女性の子宮の中に戻す方法です。受精卵の成長にはいくつかの段階がありますが、今回は、そのうちの「桑実胚」について、移植のタイミングや着床率、妊娠可能性などについてご紹介します。

桑実胚とは?受精の何日後?

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精子と卵子が受精した後、受精卵は細胞分裂(卵割)を繰り返します。受精卵の大きさは変わりませんが、細胞の数はどんどん増えていきます。

最初は1個の細胞だった受精卵が、受精からおよそ2日後には4個、3日後には8個に分裂します。これらを「初期胚」と呼び、この段階での胚移植が「初期胚移植」です。

さらに細胞分裂は進み、受精からおよそ4~5日目に、受精卵は8~16分割された「桑実胚」になります。この状態まで受精卵を培養させてから子宮の中に移植するのが、「桑実胚移植」です。

受精後5~6日目、「胚盤胞」という段階になると、周りを取り囲む「外細胞塊」という層と、中心部分の「内細胞塊」という細胞群に分かれ、内部に液体を溜めこみます。やがて外細胞膜は胎盤、内細胞塊は胎芽(赤ちゃんのもと)を形成していきます。この状態まで成長させた受精卵(胚)を移植する「胚盤胞移植」を行う場合もあります。

桑実胚移植の着床率(妊娠率)は?

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胚移植は、「初期胚(4細胞期胚または8細胞期胚)」「桑実胚」「胚盤胞」と受精卵をどの段階まで培養させるかによって、着床率(妊娠率)やリスクが異なります。

一般に、初期胚よりは桑実胚、桑実胚よりも胚盤胞というように、受精卵(胚)の成長が進んでいる状態で移植するほど、胚移植1回あたりの着床率は高くなります(※1)。

桑実胚移植に関する統計データはあまり多くありませんが、「桑実胚移植の着床率は約30%」とする病院の臨床データもあります(※2)。同じ病院のデータで、着床率が50%以上の胚盤胞移植と比べると確率は低いものの、桑実胚移植でも十分な妊娠可能性があるといえます。

なお、体外受精や人工授精で受精卵を培養する場合、桑実胚や胚盤胞まで発育がたどり着かずに胚移植自体がキャンセルとなる可能性もあるため、採卵1回あたりの妊娠率は初期胚移植とあまり変わらない、ともいわれています(※1)。

5日目の桑実胚で妊娠できる?

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通常、受精から4日(96時間)後には桑実胚になることが多いのですが、受精卵(胚)によっては分裂スピードが遅く、培養期間をかけても思ったように発育しない場合もあります。

たとえば、受精卵を5日間培養させて胚盤胞移植をする予定だったけれど、実際は5日目の時点で桑実胚までしか育っていなかった…という経験がある人も少なくありません。

「培養5日目で桑実胚」だと、成長速度としては少し遅いため、着床率が低い可能性も考えられます。しかし、5日目の桑実胚をそのまま胚移植して着床する人もいますし、場合によっては6日目まで培養した胚盤胞を凍結保存し、別の周期に溶解して子宮に戻す、という方法もあります。

どのように胚移植を進めるかは、担当医と相談のうえで検討しましょう。

桑実胚を凍結保存して移植する方法もあるの?

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体外受精や顕微授精でできた受精卵(胚)を凍結保存し、別の周期にその凍結胚を融解して子宮に戻す「凍結胚移植」という方法があります。

胚を凍結しない「新鮮胚移植」を行ったあと、残った胚を凍結保存しておく場合もあれば、新鮮胚移植はせずに全ての胚をいったん凍結することもあります。

胚移植の方針は、病院や医師によっても異なります。「桑実胚や胚盤胞の新鮮胚移植のみ行う」というところもあれば、「初期胚を新鮮胚移植し、残りの胚を胚盤胞まで培養して凍結保存する」ということもあります。

不妊治療で胚移植という選択肢を考え始めたら、自分に合った方法で進められる病院を選べるように、情報収集をしっかりして医師と相談してください。

桑実胚移植は妊娠するための一つの方法

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以前は、初期胚の胚移植が主でしたが、近年の医療技術の発達で、より成長した段階の桑実胚や胚盤胞まで培養できるようになり、着床率が高まってきています。桑実胚移植は初期胚移植よりも妊娠できる可能性が高いといわれている方法の一つなので、不妊症に悩む人の助けになるかもしれません。

また、胚移植をした後のプロセスが順調に進むには、子宮が着床に適した状態であることが大切です。採卵後、子宮内膜の厚さなどを医師がチェックし、もし子宮内環境が着床に不適切と判断した場合には、その周期での胚移植を見送ることもあります。

できるだけ早く妊娠したいと望む場合、充分な睡眠・栄養のとれた食事・適度な運動を普段から心がけ、ホルモンバランスを整えておきましょう。自分の体を大切に過ごすことが、きっと桑実胚移植での妊娠を後押ししてくれますよ。

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