HPVワクチンの基礎知識!効果や副反応などまとめ

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

HPVワクチンの基本情報について、以下にまとめました。気になる項目がある方は目次のリンクから見てみてくださいね。

HPVワクチン・基本情報まとめ

予防できる病気 子宮頸がん、子宮頸がんの前がん病変など
定期接種/任意接種 定期接種 ※女子のみ
接種費用 無料
接種時期・回数 2価・4価:小学6年生~高校1年生相当の間に3回
9価:小学6年生~15歳の誕生日前日の間に2回
もしくは、15歳以上〜高校1年生相当の間に3回
副反応 接種箇所の痛み、腫れ、微熱など
生/不活化ワクチン 不活化ワクチン

予防できる病気

HPVワクチンを接種することで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防することができます。

HPVには多くの種類があり、感染すると子宮頸がん、中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの原因になります。また尖圭コンジローマという良性のいぼの原因にもなります(※1)。

特に子宮頸がん(女性の子宮頸部にできるがん)の発生にはHPVが強く関わっており、子宮頸がんにかかった人の90%以上にHPVが見つかっています(※2)。

HPVの感染は主に性行為によって起こります。感染しても90%以上は自然に排出されるものの、自然に排出されず持続的に感染した場合、がんになることがあると報告されています(※2)。

ワクチンを接種することで、子宮頸がんの前がん病変(そのまま放っておくと子宮頸がんになってしまうもの)の主な原因とされる16型と18型の発生を95%以上防ぐことができます(※1)。

4価ワクチンであれば、尖圭コンジローマの原因とされる6型と11型の発症も防ぐことができます。

2023年4月に定期接種として打てるようになった9価ワクチンであれば、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます(※3)。

ワクチンの種類

HPVワクチンには、2価・4価・9価の3種類があります。

対応する病気の違いに加え、起きる副反応にも若干の違いがあります(※2)。どれを接種するかは、かかりつけの医師と相談してください。

2価ワクチン

子宮頸がんの主な原因となる2種類のウイルス(16型・18型)の感染を予防する「2価ワクチン(サーバリックス®)」。

4価ワクチン

上記の16型・18型に加えて、尖圭コンジローマの原因となる種類のウイルス(6型・11型)にも対応する「4価ワクチン(ガーダシル®)」。

9価ワクチン

9価ワクチンは、6型・11型・16型・18型に加えて、女性の膣がんや中咽頭がん、外陰がんなどの原因にな種類のウイルス(31型・33型・45型・52型・58型)にも対応する「9価ワクチン(シルガード®9)」。

定期/任意接種・費用

HPVワクチンは、予防接種法に基づく「定期接種」に分類されています。

定期接種のワクチンは、接種費用を公費で負担しているため、無料で接種できます。

無料で受けられる(定期接種の対象になる)期間は限られているため、その期間内に接種を済ませましょう。

接種時期・回数

2価・4価のHPVワクチンは合計で3回、9価は初回接種が15歳未満の場合は2回、15歳以上の場合は3回接種する必要があります(※2)。

ワクチンの種類や打つ時期によって、接種間隔や接種回数が異なるので注意しましょう。

予防接種 HPVワクチン 202304版

定期接種法では、HPVワクチンは小学6年生から打てますが、日本小児科学会は中学1年生の期間中に接種をはじめることを推奨しています(※3)。

「定期接種」として無料で接種できる期間は、2価・4価・9価ともに12歳から17歳未満(小学6年生〜高校1年生相当)です(※3)。期間中に接種を終わらせるようにしましょう。

2価(サーバリックス®)の場合

推奨接種スケジュール(全3回)

1回目 12〜13歳(中学1年生)
2回目 初回から1ヶ月以上あけて
3回目 初回から6ヶ月以上、かつ2回目から2ヶ月半以上あけて

4価(ガーダシル®)の場合

推奨接種スケジュール(全3回)

1回目 12〜13歳(中学1年生)
2回目 初回から2ヶ月以上あけて
3回目 初回から6ヶ月以上あけて

9価(シルガード®9)の場合

推奨接種スケジュール(全2回)

1回目 12〜13歳(中学1年生)
2回目 初回から6ヶ月以上あけて

副反応・注意点

副反応

HPVワクチンの副反応は、ワクチンの種類によって違いがありますが、主なものは以下の通りです(※2)。

  • 接種した部位の痛み、はれ、赤み

  • 頭痛、発熱、疲労感

また、接種後まれに以下のような重い症状が報告されています(※2)。

  • アナフィラキシー(重いアレルギー反応):約96万接種に1回

  • ギラン・バレー症候群(手足の力が入りにくいなどの症状):約430万接種に1回

  • 急性潜在性脳脊髄炎(脳などの神経の病気):約430万接種に1回

  • 複合性局所疼痛症候群(外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気):約860万接種に1回

HPVワクチンは、接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛等の報告があったため、積極的な勧奨を一時的に差し控えられていました。

しかし、2021年に安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められて、接種を受けるよう推奨されています(※2)。

注意点

ワクチン接種の際には、以下の点に注意してください(※1)。

  • 接種日に、37.5℃以上の「明らかな発熱」などがある場合、ワクチンを接種することはできません。

  • これまでの予防接種で、接種後2日以内に発熱や全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を認めた人、過去にけいれんの既往がある人は、接種前にかかりつけ医に相談してください。

  • 接種後30分ほどは座って休み、体に異常がないかどうかを確認するようにしてください(※2)。

その他、わからないことがあれば、かかりつけ医に相談すると安心です。

受け忘れたときは

もし標準スケジュールの期間に打てず、やむを得ず接種間隔の変更が必要な場合は、以下のような間隔で接種することができます。

2価ワクチン:1回目と2回目のワクチンは1か月以上あけて、1回目と3回目の間は5か月以上、かつ、2回目と3回目の間は2か月半以上あけて接種する。

4価ワクチン:1回目と2回目のワクチンは1ヶ月以上あけて、2回目と3回目は3ヶ月以上あけて接種する。

9価ワクチン:1回目と2回目のワクチンは1ヶ月以上あけて、2回目と3回目は3ヶ月以上あけて接種する。
※9価ワクチンのみ、15歳以上で初回接種する場合、接種回数が2回から3回へ増えるので注意してください。

定期接種に定められた期間内に予防接種を受けられなかった場合は、「任意接種」として自己負担で接種することもできます。

また、HPVワクチンは、積極的な勧奨が差し控えられていた期間がありました。そのため、1997年4月2日から2006年4月1日の間に生まれて、過去にHPVワクチンを合計3回接種していない女性は、2022年4月〜2025年3月までの3年間、定期接種としてワクチンを接種することができます(※2)。

詳しくはお住いの自治体窓口へご確認くださいね。

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