セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質で、不足すると気持ちが不安定になることが知られています。また、最近の研究では、PMS(月経前症候群)や更年期障害とも関わっていることがわかってきました。今回は、セロトニンについて、不足する原因と症状、婦人科系トラブルとの関係についてご説明します。
セロトニンとは?
セロトニンとは、脳内の神経伝達物質のひとつで、必須アミノ酸「トリプトファン」から生成されます。
セロトニンには、喜びや快楽を伝える「ドーパミン」や、恐怖や驚きを司る「ノルアドレナリン」など、ほかの神経伝達物質の情報をコントロールし、気持ちを安定させる効果があります。
セロトニンの分泌量が減少すると、ドーパミンやノルアドレナリンの作用をうまくコントロールできなくなり、攻撃性や不安が高まったり、うつやパニックを引き起こしたりすることがあります(※1)。
セロトニンが不足する原因は?
セロトニンが不足する最大の原因は、ストレスと考えられています。
過度なストレスを受け続けると、セロトニンの生成に関わるセロトニン神経の働きが弱まり、セロトニンが十分に分泌されなくなってしまいます。
ほかにも、偏った食生活や太陽光を浴びないこと、運動不足、対人コミュニケーションの不足など、様々な要因が組み合わさることで、セロトニンの分泌が不足する可能性があるとされています。
セロトニンが不足するとPMSがひどくなる?
生理前に起こる、乳房の痛みやお腹の張り、頭痛、手足のむくみといった体のトラブルや、怒りっぽくなる、イライラ・不安になりがち、人と会いたくなくなるといった精神的な症状を「PMS(月経前症候群)」といいます。
PMSが引き起こされる要因は様々で、はっきりとわかっていない部分も多いのが事実です。
ただし最近の研究によると、セロトニンの合成に必要なトリプトファンがない食事をしているとPMSの症状が引き起こされたり、PMSに悩まされている女性にセロトニンを補充する治療を行うと症状が効果的に軽くなったりすることがわかっています(※2)。
また、更年期にうつ症状が見られる場合も、セロトニン不足が関係していると考えられています(※1)。
セロトニンの不足を補うには?
「最近なんだか元気が出ないな」というときは、セロトニンが不足しているかもしれません。次に挙げるように、生活習慣の中でセロトニンを増やす方法を取り入れてみましょう。
食事から摂取する
セロトニンは、「トリプトファン」という必須アミノ酸を元に作られます。必須アミノ酸は体内で作ることができないため、食事を通して摂取する必要があります。
トリプトファンは、小麦胚芽やオートミールなどの穀類や、大豆などの豆類などに多く含まれます(※3)。まずは朝食から取り入れてみるのもおすすめですよ。
太陽光を浴びる
太陽光を浴びると、セロトニン神経が活性化され、セロトニン生成を促進させることができます。
目の網膜に光が入ることが大切なので、肌で太陽光を浴びる必要はなく、日焼け止めを塗ったり長袖を着たりと日焼け対策を行っても構いません。
まずは毎朝カーテンを開けて、太陽光を浴びて1日をスタートさせてみてくださいね。
リズム運動をする
水泳やウォーキング、自転車こぎなど、筋肉を緩め、緊張させることを一定のリズムで繰り返すリズム運動は、セロトニンの分泌量を増やすとされています。
運動するのが苦手という人も、食事のときによく噛むようにすると、顔や首の筋肉が緊張と弛緩を繰り返すので、セロトニン生成につながりますよ。
日々のスキンシップを増やす
もともと動物の毛づくろいのことを指す「グルーミング」を行うと、セロトニンの分泌が活性化されるといわれています。
肩もみなどのマッサージを受けたり、恋人と手をつないだり、ペットをなでたりして、日頃のスキンシップを増やしてみてくださいね。
セロトニンが不足しない生活を目指そう
日常生活で感じているイライラや落ち込み、生理前の不快症状は、もしかしたらセロトニンが不足していることで起きているのかもしれません。
まずは食事内容や生活習慣を見直して、セロトニンが増えるような工夫をしてみましょう。自分の普段の生活や気持ちの状態に向き合うことが、すでに「幸せホルモン」の分泌を助ける第一歩です。できることから少しずつ取り組んでみてくださいね。