月経不順や体調不良、更年期の症状などで血液検査をして、エストラジオールの数値が高い、あるいは低いと言われたことはありませんか?エストラジオールの数値によっては、不妊や更年期障害などの原因になる可能性があります。今回は、エスラジオールの数値が高い・低いときの問題点、正常値に戻すための対処法についてご紹介します。
エストラジオールの働きは?
エストラジオール(E2)とは、女性の体の機能に重要な女性ホルモンである「エストロゲン」の主要成分です。エストロゲンにはエストロンとエストリオールという他の成分も含んでいますが、エストラジオールがもっとも多く含まれます(※1)。
婦人科系の病気が疑われる際に血液検査でエストラジオールの値を調べることで、卵巣機能が正常かどうかなどがわかります(※2)。
エストラジオールの数値はどれくらいが普通?
女性ホルモンの一種であるエストラジオールの数値は、月経周期や妊娠、閉経などで大きく変化します。1ヶ月の間だけでも月経の周期次第で数倍の差が出るので、自分の時期にあわせた数値を確認する必要があります。
下記の表ではそれぞれの時期の数値を紹介しますが、あくまでも28日周期で生理が訪れる場合の数値なので注意してください(※2)。
生理後経過日数 | 正常値(pg/mL) |
0~14日目 (卵胞期) |
13~70 |
14日目前後 (排卵期) |
70~240 |
14~28日目 (黄体期) |
70~160 |
生理なし (閉経期) |
10以下 |
エストラジオールの数値が高い・低い原因は?
エストラジオールの数値が高いあるいは低い場合、「加齢」や「卵巣機能不全」などの原因が考えられます。
加齢
加齢によってエストラジオールの数値は低くなります。エストラジオールの量は性成熟期の20~30歳でピークを迎え、30代に入ると徐々に低下しはじめます(※1)。閉経後(50歳前後)には、エストラジオールはほとんど分泌されなくなります。
卵巣機能不全
エストラジオールのほとんどが卵巣で作り出されているため、卵巣機能になんらかの障害があると数値が乱れてしまうことがあります。エストラジオールをうまく作り出せない場合もあれば、たくさん作り過ぎてしまうこともあるようです。
エストラジオールの数値は不妊症だと高い?低い?
不妊症の原因を確かめる一環で血液検査を受け、エストラジオールの数値に異常がある場合、いくつかの不妊の原因が想定されます。
例えばエストラジオールの数値が低いときには、卵胞の成長が促進されず、排卵まで至っていない可能性があります。また排卵後のエストラジオールの分泌量が低いと、子宮内膜が十分に厚みを増しておらず、受精卵ができたとしても、着床しにくい環境になっている可能性もあります。
また、不妊治療を行う中で排卵誘発剤を使用していると、まれですが、エストラジオールの分泌量が急激に高い値に変わることがあります。急激な値の変化は卵巣過剰刺激症候群の可能性があり、吐き気や下腹部痛、体重の急な増加、尿量の減少などの症状が現れます。
重症化したときには腎不全や血栓症のリスクも高まるため、排卵誘発剤を使用した後に上記の症状が現れたら、早めに病院を受診しましょう(※3)。
エストラジオールの数値が低いと更年期障害を招く?
女性は加齢に伴って卵巣の働きが低下し、エストロゲン、つまりエストラジオールの分泌量が減少します。これは更年期になればほとんどの女性に起こる生理現象です。40代~50代頃に分泌量が減ったのであれば、そこまで心配する必要はありません。
ただし、更年期の年齢じゃないのに何らかの原因でエストラジオールの分泌量が少ないと、若い年齢で閉経を起こして更年期のような症状を招く場合があります(早期閉経)。
早発閉経を起こすと月経がなくなるため、妊娠したくてもできないなど、様々な問題が起こり得ます。完全に閉経が起こる前に発見して、治療を行うことが大切です。
閉経時期に感じる更年期障害の症状としては、ほてりや発汗、不眠などの自律神経失調の症状や、不安感、抑鬱、恐怖感といった心の変化などがあります(※1)。
これらの症状は「PMS(月経前症候群)」の症状と似ていて、自分ではどちらなのか判断しにくいものです。心配であれば20〜30代であっても婦人科を受診し、症状の原因をはっきりさせてもらいましょう。
エストラジオールの数値が高い・低いときの治療法は?
エストラジオールの数値が高い・低いときには、それぞれ合わせた治療方法があります。治療をすることで、エストラジオールの数値を一般的な値に戻すことは可能です。
エストラジオールの数値が低い
エストラジオールの数値が低くなるときには、その原因に対する処置が必要です。
卵巣機能の低下であれば、ホルモン補充療法(HRT)でエストラジオールを人工的に増やします。症状によっては当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方薬を使う場合もあります。
エストラジオール数値が高い
エストラジオールの数値が高いときは、卵巣に「エストロゲン産生腫瘍」ができている可能性が考えられます(※4)。これはエストロゲンを過剰に分泌する腫瘍が卵巣内にできた状態で、腫瘍を取り除く外科的手術が必要になります。
エストラジオールの数値は生活習慣で改善しよう
エストラジオールといったホルモンの数値の「高い」「低い」は、日頃の生活習慣によっても大きく左右されます。
ホルモンの分泌を促すためには、質の高い睡眠や栄養バランスの取れた食事を心がけ、ストレスを溜めない、健康的な生活を送ること大切です。
ぜひ、エストラジオールの数値だけでなく、体全体の調子を整えるつもりで、生活習慣を変えていってくださいね。