顕微授精のリスクは?ダウン症や障害児の確率が高いの?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

不妊治療に取り組む中で、顕微授精を受けるかどうかを検討するときには、費用や成功率だけでなく、ママ自身の体や生まれてくる赤ちゃんへのリスクはないのかと気になりますよね。特に、ダウン症など胎児の染色体異常や障害について知りたいという人は多いようです。そこで今回は、顕微授精のリスクについて、障害児が生まれる確率が高いのかどうかも含めてご説明します。

顕微授精にはリスクがあるの?

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顕微授精とは、精子と卵子を体外に取り出し(採精・採卵)、医師が顕微鏡で見ながら授精を行う治療法です。顕微授精によってできた受精卵は、そのまま体外で培養し、ある程度まで発育させてから女性の子宮内に注入します。

タイミング法や人工授精、体外受精で妊娠が成立しなかった場合や、女性の体内で自然に受精できない「受精障害」があるとわかっている場合に、顕微授精を検討します。

顕微授精の安全性・リスクについては、現在もなお研究が続けられている段階で、必要がないのにむやみに顕微授精を行うことは避けるべきとされています(※1)。

顕微授精による女性の体へのリスクは?

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顕微授精に限ったことではありませんが、採卵をする前に排卵誘発剤を使う場合、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」によって卵巣が腫れるリスクが考えられます。これは、重症化すると腹水や胸水がたまり、呼吸困難に陥る場合もある病気です(※1)。

排卵誘発後に下腹部の張りや痛み、吐き気、嘔吐などの症状が現れたときは、顕微授精の予定があったとしても、まずOHSSの治療を行う必要があります。

また、採卵をするときは卵胞に針を刺す必要があるため、お腹の中でわずかに出血します。ほとんどの場合、出血してもそのまま体内に吸収されますが、大量出血を起こすリスクもゼロではありません。

採卵後に体調の異変を感じたら、すぐに担当の医師に相談しましょう。

顕微授精はダウン症など障害児が生まれる確率が高い?

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オーストラリアのある研究グループからは「顕微授精の場合、赤ちゃんに染色体異常が発生する確率が高い可能性がある」という報告もありますが、医学的な根拠ははっきりしていません(※2)。

ただし、顕微授精を行う夫婦は、何年かほかの不妊治療を続けていることが多く、平均年齢が高いため、精子と卵子の老化が進んでおり、ダウン症など染色体異常のある赤ちゃんが生まれる確率が高い、ということは考えられます。

顕微授精かどうかに限らず、ダウン症の子供が生まれる可能性は、25歳の女性で0.07%、30歳で0.11%、40歳だと0.89%と年齢とともに高くなっていくことがわかっています(※3)。

顕微授精後、障害リスクを調べるには?

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顕微授精にチャレンジする時点で夫婦の年齢が高い場合、妊娠が成立したあとに「出生前診断」を受けることで、ダウン症など染色体異常の可能性を調べることができます。

出生前診断によって、胎児に先天性の病気や染色体異常がある可能性が高い、とあらかじめわかれば、生まれてくる前に親が心の準備をしておけるなどのメリットがあります。

一方で、障害があることを知ってしまったがゆえに悩みが深くなってしまう可能性もありますし、出生前診断で胎児の異常の全てが見つかるわけではない、ということも理解しておく必要があります。

出生前診断のメリット・デメリットなどについて、夫婦そろって専門医からしっかりカウンセリングを受けたうえで、検査をするかどうか慎重に検討することが大切です。

顕微授精のリスクを医師に確認しよう

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顕微授精は、1つの卵子に対して1つの精子さえあれば実施できるため、精子の数や運動率が少ないといった理由でほかの不妊治療がうまく行かなかった夫婦でも、高い受精率を期待できる治療法です。

顕微授精は高い技術が必要とされる治療法ということもあり、リスクについては未知数な部分もありますが、担当の医師からよく説明を聞き、できるだけ疑問や不安を解消したうえで治療に臨みましょう。

受精後に無事、受精卵が着床して妊娠が成立するよう、夫婦二人三脚で健康的な生活を心がけ、妊娠しやすい体の状態を作っておきたいですね。

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