嘔吐、下痢に発熱も!高熱ならどんな病気の可能性がある?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供は大人よりも免疫力が弱いため、さまざまな病気にかかりやすく、嘔吐や下痢、発熱などの症状も出やすい傾向があります。そのため、それらの症状が見られた場合、どの病気かの特定が難しいという問題もあります。そこで今回は、嘔吐や下痢、発熱などの症状が子供に現れた場合、どのような病気の可能性があるのか、高熱が出るのはどんなときなのかなどをご紹介します。

嘔吐、下痢、発熱はなぜ起こる?

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子供の嘔吐、下痢、発熱の各症状は、次のようなメカニズムで起こります。

子供が嘔吐するメカニズム

子供の嘔吐には、大きく分けて、感染症を原因とするものと、感染症以外を原因とするものの2種類があります。

感染症が原因で嘔吐する場合は、胃腸炎の例が多いです。細菌やウイルスが出す毒素によって胃に炎症が起きることで、胃が刺激され、嘔吐が起きます(※1)。

また乳児の場合、中耳炎や尿路感染症、髄膜炎など、胃腸炎以外の感染症でも体調不良のサインとして嘔吐の症状が出る場合があります。

これらの感染症では、脳にある嘔吐中枢と呼ばれる部分が刺激されることで、嘔吐が引き起こされます。

一方、感染症以外の原因で嘔吐する場合は、遊びのなかで頭を打ったり、精神的なことが原因になったりして、嘔吐中枢が刺激されて嘔吐するケースが見られます。

また、咳がひどいときや喘息の発作があるときには横隔膜が胃を刺激することで嘔吐が起きることがあります(※1)。

子供が下痢するメカニズム

子供の下痢症状は、腸の運動が活発な場合に起こります。腸の運動が活発だと、消化した食べ物が腸を通過する時間が短いため、腸が便から水分を十分に吸収できなくなり、下痢になるのです(※2)。

嘔吐と同様、細菌やウイルスが消化管で炎症を起こすことでも、腸の動きが活発になり、下痢の症状が出ることがあります。

また、アレルギーや精神的なストレスでも、下痢が起こることがあります(※2)。

子供が発熱するメカニズム

子供に発熱の症状が出るときは、ウイルスが体内に入っているケースも多くあります。体温が高くなっているほうがウイルスを退治しやすいため、発熱につながるのです。

熱はさまざまな要因で出ますが、子供の発熱で最も多いのが、風邪などの感染症です。また、精神的なことが原因でも熱が出る場合があります(※3)。

嘔吐、下痢、発熱する病気は?高熱が出ることもある?

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先にご説明したとおり、子供に嘔吐や下痢、発熱が起こるのには様々な原因がありますが、ほとんどが病気によるものです。

発症すると、嘔吐や下痢、発熱の症状が出る病気はたくさんあります。

また、子供は体温調節の機能が大人に比べて未発達なため、室内の気温や着ているものによっても体温が変化します(※4)。そのため、熱が出ると高熱になりやすい傾向があります。

子供が発症すると、嘔吐、下痢、熱などの症状が現れる代表的な病気には、下記のようなものがあります。

アデノウイルス感染症

アデノウイルス感染症とは、プール熱とも呼ばれる病気で、特に夏に流行します。アデノウイルスには様々な型があり、40型、41型という種類のウイルスに感染すると、発熱や腹痛、嘔吐、下痢といった症状が現れます(※5)。

インフルエンザ

インフルエンザは、毎年冬に流行する感染症です(※5)。インフルエンザの症状は高熱や呼吸器に関するものが多いものの、吐き気や嘔吐の胃腸症状が見られることもあります。

溶連菌感染症

溶連菌感染症とは、5~15歳の年齢で特にかかりやすい感染症です(※5)。高熱や嘔吐、頭痛、喉の痛み、舌の表面に赤いブツブツが現れる「イチゴ舌」などの症状が現れます。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎とは、ノロウイルスやロタウイルスに感染することで発症する胃腸炎の総称です。特にノロウイルスに感染すると、水っぽい下痢や熱、嘔吐の症状が見られます。ノロウイルスの感染者は、特に冬場に増える傾向があります。

自家中毒(周期性嘔吐症/アセトン血性嘔吐症)

自家中毒とは、体内で脂肪を分解して作られる「ケトン体」という物質が、血液中で増加しすぎるために起こる中毒症状です。3~8歳ぐらいの子供によく発症します(※5)。繰り返し嘔吐したり、発熱に加え、体のだるさや腹痛などの症状が現れたりします。

嘔吐、下痢、発熱のときに気をつけることは?

チェックリスト

嘔吐と下痢、発熱の症状が同時に出ている場合、気をつけたいのが脱水症状です。

嘔吐と下痢の症状が出ていると体内の水分や塩分が失われていきますが、発熱の症状が同時に出ている場合には食欲がなくなることもあるため、食事や水分補給が難しく、ますます体内の水分が足りなくなってしまうことがあります。

水分を補給させる際は、嘔吐の症状がある程度治まってから、スプーン1杯ほどの少量ずつ、こまめに飲ませてあげましょう。水分と一緒に塩分も摂れるよう、OS-1などの経口補水液がおすすめです。

食事も、回数を分けて少しずつ与えます。食欲がない場合は、子供が食べやすいように柔らかく煮たうどんやおかゆ、みそ汁など、でんぷん質が多く含まれるものを与えましょう(※6)。果物では、バナナやリンゴなどがおすすめです。

嘔吐、下痢、発熱は、なるべく早く病院へ

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子供に現れる嘔吐、下痢、発熱などの症状の裏には、さまざまな病気の可能性が隠れています。

病気によっては合併症を起こすものもありますが、早期に治療を始めれば重症化しないものがほとんどです。症状が出ても焦らず、脱水症状に気をつけて、落ち着いたらなるべく早く病院に連れていくことをおすすめします。

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