ロタウイルスの検査方法や費用は?子供も検査キットを使うの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供が感染すると激しい下痢を引き起こすロタウイルス。しかし、下痢が症状として出る病気は多く、下痢症状だけでその原因がロタウイルスへの感染によるものかどうかを判別するのは困難です。そこで今回は、ロタウイルスの検査方法にはどんなものがあるのか、検査キットで子供も検査できるのか、検査費用に保険は適用されるのかなどをご紹介します。

ロタウイルスとは?

ロタウイルスは、感染者の便と一緒に排泄されたウイルスが口から入ることで感染します。

ロタウイルスに感染すると、2~4日間の潜伏期間を経て、腹痛、水っぽい下痢、吐き気、嘔吐、発熱などがあらわれます(※1)。感染者の便の色に特徴があり、白色や、黄色っぽい白色になることがあります。

ロタウイルスは、0~5歳の子供が感染しやすいウイルスで、5歳までにはほとんどの子供が感染すると言われているほど感染力の強いウイルスです(※1)。乳幼児が初めて感染したときには特に強い症状が出ることが多く、脱水症状になることもあります。

5歳までの急性胃腸炎の入院患者の40~50%近くが、ロタウイルスが原因だというデータもあります(※1)。また、合併症として、頻発するけいれんや肝機能異常、特に重症化すると急性腎不全、脳症、心筋炎を併発することもあり、ごく稀ですが、死に至る可能性もあります(※1)。

一方、大人は免疫ができているため、感染しても目立った症状が出ないことがほとんどです。

ロタウイルスの検査方法は?

実験 検査 ウイルス 菌

ロタウイルスの診断は、現れている症状と、家族や通っている保育園での感染状況などの情報を元にして行われます。

しかし、これらの情報だけではロタウイルスにかかっているとは断定できないため、検査が行われることもあります。

ロタウイルスの検査方法には、以下のようなものがあります(※2)。

● 迅速診断検査(イムノクロマト法)
● ELISA法
● RNA抽出
● PAGEによるウイルスRNAの検出
● マルチプレックスPCR
● RT-PCR
● シークエンス解析
● ウイルス分離・培養法

このようにロタウイルスの検査には多くの種類がありますが、一般的に病院で行われるロタウイルスの検査では、検査キットによる迅速診断検査が行われることが多いです。

迅速診断検査は、患者の便を用いて検査する方法で、15~20分程度で結果が分かるのが特徴です(※1)。キットによっては、ロタウイルスと同様に下痢や嘔吐の症状を引き起こす、ノロウイルスへの感染を同時に調べられるものもあります。

ただし、検出感度は他の方法に比べると低いうえ、ロタウイルスのタイプによっては検出できないというデメリットがあります(※2)。

その他の検査については、行政機関や学術機関によって、主に食中毒や集団感染の研究などの目的で行われます。

ロタウイルスの検査は保険適応?費用は?

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ロタウイルスへの感染を調べるために外来診療で行われる迅速診断検査には、基本的に健康保険が適用されます(※1)。

かかる費用は検査を行う病院によって異なり、一般的に数百~2,000円以内(健康保険適用後)になることが多いです。

ロタウイルスの検査キットで陽性だったときの対処法は?

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ロタウイルスには特効薬がないため、ロタウイルスに感染していることが検査でわかったときに行う治療は、対症療法が主となります。

ただし市販の下痢止めを使うと、腸の中にウイルスを長い時間留めることになり、結果として病気の回復を遅らせることになってしまいます。自己判断で薬を使用するのは控え、病院で医師に相談するようにしてください。

家庭では、下記のような方法で対処を行いましょう。

家庭でできるケア

家庭でできるケアとしては、脱水症状にならないように、スポーツドリンクや経口補水液などで水分補給をさせたり、体力を保つためにこまめに栄養を補給させたりと、症状を和らげてあげることが中心になります。

ホームケアを行っていても、万が一、脱水症状による顔色不良・哺乳低下・衰弱などが現れた場合は、病院で点滴を受けるなどの治療が必要になります。一度病院を受診していたとしても、再度診てもらうようにしてください。

家庭でできる感染予防

大人がロタウイルスに感染しても症状は軽いことが多いものの、感染している子供と接触すると30~50%の人がうつるといわれています(※3)。そのため、家族間での感染対策はとても重要です。

子供がロタウイルスに感染していた場合、感染を広げないように、家族全員で次のような予防に取り組みましょう。

● こまめに手を洗う
● おむつの処理は飛び散らないように慎重に行う
● 家具やリネンなどを消毒液で消毒する

おむつを捨てる際や、家具やリネン類を消毒する際には、次亜塩素酸ナトリウムを含んだ消毒液を使うと、感染予防により効果的です。

消毒液はハイターやミルトンなど、市販の材料からも作ることができます。おむつなどを捨てるときは塩素濃度が1,000ppmになるように、家具などの消毒の際には200ppmになるように、それぞれ水で薄めて使いましょう(※4)。

ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させることがあるため、金属を消毒したあとは、10分ほど経ってから水拭きを忘れずにしてください(※4)。

ロタウイルスの検査後、保育園はいつから?

チェック カレンダー 女性

ロタウイルスの検査を行い、感染していることがわかった場合の保育園登園の目安は、日本小児科学会の「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」において、「下痢、嘔吐症状が消失した後、全身状態のよい者は登校(園)可能であるが、手洗いを励行する」と定められています(※5)。

これは、子供に下痢や嘔吐などが見られなくなっており、子供自身が症状によるつらさを感じていない状態であれば、登園してもよいということをさします。

しかし、これは絶対ではなく、保育園や自治体によって基準が違う可能性があるので、どのような状態なら登園してよいかは、通っている保育園に確認しましょう。

ロタウイルスの検査で、感染を広げない

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ロタウイルスの力を弱めるような特効薬は見つかっていないため、検査で感染が分かったとしても、対症療法でケアしていくしかありません。

しかし下痢や発熱の原因がわかれば気持ちも少し落ち着きますし、対処法が明らかにもなります。また兄弟姉妹などにうつさないための対策を取ることも可能です。

ロタウイルスの検査は医師が必要と認めた場合に行われるので、受けられるかどうかは病院によって異なります。子供に下痢や嘔吐があり、つらそうで心配であれば、検査が受けられる病院を探してみましょう。

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