生理中に温泉は入れるの?旅行で入りたいときはどうすればいいの?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

温泉旅行に行くときに、「旅行の日程と生理が重なってしまったらどうしよう」と気になることもありますよね。もし温泉旅行中に生理が来てしまった場合、温泉に入ってもいいのでしょうか?今回は、生理中に温泉に入ってもいいのか、入るときの注意点やマナーをご説明します。

生理中に温泉に入ると経血は出るの?

女性 温泉

生理中に温泉やお風呂に入っても、基本的には、水圧や体の仕組みによって経血が出ることはないとされています。

しかし、生理中の経血の出方には個人差があるため、絶対に出ないとは言い切れません。温泉のなかで体勢を変えることで漏れてしまうケースもあります。

また、温泉の水圧がない状態では経血が出てきてしまうので、脱衣所や洗い場などを汚してしまう可能性も考えられます。

生理中に温泉に入ってもいいの?どんな影響がある?

生理中に温泉に入ることは、基本的にはおすすめできません。その理由は、「公共の場でのマナー」「衛生面」「体調」の3つに影響することがあるからです。

下記に、生理中に温泉に入ることで生じる影響やおすすめできない理由をご説明します。

公共の場でのマナー

先述のように、生理中に温泉に入ると、湯船のなかはもちろん、脱衣所や洗い場でも経血が漏れてしまう可能性があります。周りからみたら、たとえ同じ女性同士だとしても良い気分はしませんよね。

一時的に貸し切りができる浴場であっても、その場で経血が見られていなければ良いというわけではありません。

経血がお湯に混ざったり、浴場に経血が垂れていたりすると、後から入る人にとって衛生的な環境とはいえません。ほかの人のことも考えて判断しましょう。

衛生面に関する影響

生理中の腟内は雑菌に弱い環境になるため、感染症にかかりやすい傾向にあります。

温泉は不特定多数の人が利用するため、どんなに衛生面が配慮された施設でも、完全に清潔とは言い切れません。生理中に温泉のお湯が腟内に入って感染症にかかると重症化することもあります。

例えば性感染症のひとつである「腟トリコモナス症」は、浴場から感染するケースもあります(※1)。

腟トリコモナス症は、一度感染すると完治まで時間がかかるため、注意が必要です。

体調への影響

温泉に入ると体が温まるため、生理中に入って生理痛の緩和を期待する人もいるかもしれません。しかし、生理中は貧血や頭痛を起こしやすいため、湯温の高い温泉に長時間入り続けていると、吐き気やめまいなどを助長させることもあります。

また、生理中は免疫力も低下しています。

過去に、循環ろ過装置を使用している循環式浴槽や、温泉や井水等利用するために貯湯タンクを利用している浴場で、レジオネラ菌が繁殖し、肺炎や発熱を引き起こしたというケースがありました(※2)。

現在は厚労省により、浴場の衛生管理が推奨されていますが、絶対に安全だとは言い切れません。特に生理中は気をつけた方がいいでしょう。

生理中にどうしても温泉に入りたいときはどうする?

温泉 女性

前述のような理由から生理中に温泉に入ることはおすすめできませんが、どうしても入りたいという場合はどうしたらいいのでしょうか。

経血の量が少なく生理痛などの体調不良がみられない時期であれば、タンポンや月経カップといった生理用品を使って、腟から経血が外に出ないように対処して入ることはできます。月経カップは、シリコン製のカップで腟内に入れて経血を溜めるものです。

タンポンや月経カップといった生理用品を使用して温泉に入る際は、脱衣所へ行く前に新しく清潔なものをつけてください。必ず体を洗い流してから湯船に入り、短時間であがるようにしましょう。温泉から出たあとは、トイレで清潔な生理用品と取り替えてください。

ただし、こういった生理用品を使用したとしても、経血の漏れを100%防げるわけではありません。脱衣所や洗い場などでも、常に漏れていないかを確認するようにしましょう。

生理を遅らせれば温泉に入れる?

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経口避妊薬の「ピル」を服用すると、生理を早めたり遅らせたりすることができます。前々から温泉旅行の日程が決まっていて、その時期に生理が重なりそうな場合は、婦人科でピルを処方してもらい、旅行中に生理が来ないようにすることもできます。

生理予定日の5日前からピルを飲み始めれば、服用中はほとんどの場合、生理が来なくなるので、温泉旅行の直前でも予定生理開始日を遅らせることが可能です。

ただし、生理不順の人は生理予定日が定まらず5日前から飲むのは難しいため、婦人科に相談してできるだけ早くからピルを服用するようにしましょう。前の生理中からピルを飲み始めることで、その次の生理を早め、温泉旅行前までに終わらせることもできます。

また、ピルを服用するとホルモンバランスが急激に変化して、吐き気や嘔吐、食欲不振といった副作用が現れることもあります。せっかく生理を遅らせることができても温泉旅行中に副作用が出ると辛いので、その点もよく考えたうえで服用するかどうかを決めるようにしましょう。

生理中に温泉に入るときの注意点は?

温泉施設によっては、そもそも生理中の入浴を控えるように注意喚起をしているところもあります。その場合は、タンポンや月経カップを使用しても入ることはできないため、内風呂で済ませるようにしましょう。

また温泉には、体調に特定の症状がある場合、入ってはいけないとされる「禁忌症」というものがあります。

主に以下の症状があるときは注意が必要です(※3)。

・ 病気の活動期(熱があるときなど)
・ 活動性の結核、進行した悪性腫瘍で著しく体が弱っている
・ ひどい貧血がある
・ 少し動くと息苦しくなるような、重い心臓や肺の病気がある
・ むくみのあるような重い腎臓の病気がある
・ 消化管からの出血や、目に見える出血がある
・ 慢性の病気(糖尿病や高血圧など)の症状が急に悪化している

生理に関するものは直接制限されていませんが、貧血などは生理中におこる症状のため、注意が必要であることは意識しておきましょう。

生理中の温泉はマナーと体調を優先しよう

生理中の温泉は基本的には控えるようにしましょう。前々から旅行の日取りが決まっているときは、ピルを服用するのも一つの方法です。

どうしても入りたいときは、周囲への影響と自身の体調を考えて判断することが大切です。生理中に無理をして温泉に入ると、周囲に迷惑をかけてしまうだけでなく、場合によってはのぼせや吐き気などの体調不良を起こして、旅行自体を楽しめなくなってしまいます。

一緒に温泉に行く人にも生理中であることを理解してもらい、温泉以外の時間も楽しめるように計画を立てられるといですね。

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