十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)という漢方薬をご存じですか?十全大補湯は薬局でも一般に販売されているので、見たことがある、使ったことがあるという人は多いかもしれません。十全大補湯は、病後の体調不良や疲れやすい人、食欲がない人などに有効とされますが、不妊にも効果が見込める漢方薬です。今回は、十全大補湯の効能や副作用についてご紹介します。
十全大補湯とは?
十全大補湯は、中国に古くから伝わる漢方薬です。1107~1110年頃につくられた医学書「和剤局方」に掲載されており、現在も同じ分量で配合されています(※1)。
病後の体力低下を自覚する人、疲れやだるさを感じる人、食欲がない人、寝汗が多い人、手足が冷える人、貧血の人などに効果があります。
十全大補湯は、厚生労働省が定める「一般用漢方製剤製造販売承認基準」に適合しており、病院などで処方してもらうことができます(※2)。また薬局などで購入することもできます。
十全大補湯に含まれる成分とその効能は?
十全大補湯には以下の生薬が含まれています(※1)。
黄耆(オウギ) | 気を補い利尿を促すことにより、汗を止める作用、貧血・めまいなどを和らげる作用、むくみを改善する作用など |
桂皮(ケイヒ) | 血流を良くして体を温める作用、発汗作用、精神不安・不眠・めまいを緩和する作用、関節・筋肉の痛みを和らげる作用など |
地黄(ジオウ) | 血を増やす作用、乾燥性の咳を止める作用、止血作用など |
芍薬(シャクヤク) | 筋肉痛やけいれん、腹痛を治す作用や、月経不順・おりもの・月経痛を治す作用、寝汗を減らす作用など |
蒼朮(ソウジュツ) または白朮(ビャクジュツ) |
胃腸を整えて他の薬を受け入れやすくする作用、食欲不振・消化不良・腹部膨満感・下痢を治す作用など |
川芎(センキュウ) | 血流を改善し、月経不順・月経痛・腹痛・難産・冷え症などを治す作用や、頭痛を治す作用など |
当帰(トウキ) | 血流を改善して冷えを解消し、月経不順・月経痛などを治す作用、不妊症を治し、妊婦であれば安胎を図る作用、便秘を改善する作用など |
人参(ニンジン) | 気を補って元気をつける作用、疲れにくくする作用、精神を安定させる作用など |
茯苓(ブクリョウ) | むくみを治す作用、食欲不振・消化不良を治す作用、精神安定作用など |
甘草(カンゾウ) | 気を補う作用、消化を安定させる作用、他の薬の副作用を起こしにくくする作用など |
十全大補湯の効果は?
「十全(完全)に、大いに補う」効能を持つのが、十全大補湯です。漢方でいう気虚(ききょ)・血虚(けっきょ)の双方が重なっている状態に対して、特に有効です(※3)。
気虚とは、活動力が鈍くなり、疲れやすかったり、息切れがしたり、体がだるくて動くのが億劫な状態のことです(※1)。
一方血虚とは、血の栄養作用の不足で、血液循環量の不足や貧血などの状態のことをいいます。
十全大補湯は、以下のような症状を持つ人に対して改善効果が期待できます。
● 病気の後に体力が低下してしまった人
● 食欲がない人
● 疲れやすい人
● 顔や皮膚の色が悪く、皮膚や口の中が乾燥している人
● 貧血の人
十全大補湯は不妊にも効果がある?
前述した「血虚」は、特に女性がなりやすい状態です。偏食の人や食生活が単調になりやすい人は、血をつくるための栄養を十分に摂れず、血虚になってしまいます。
血虚は、冷え症、月経不順、月経後の症状悪化などを引き起こします。これらの症状は、妊娠しやすい体づくりにとってはとても重大な問題です。
十全大補湯は血虚の症状に対して有効なので、不妊に悩む女性に対し、病院で処方されることがあります。
十全大補湯に副作用はあるの?
西洋薬に比べるとその症状は穏やかといわれていますが、漢方薬にも副作用があります。十全大補湯の副作用には、以下のようなものがあります(※4)。
● 発疹、発赤、かゆみ、じんましん
● 食欲不振、胃部不快感、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢
人と状況によっては、以下のような重度の副作用が出ることもあります。以下のような症状があらわれたら、十全大補湯の使用をやめて、直ちに病院へ行きましょう(※4)。
● 偽アルドステロン症(尿の量が減る、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる)
● ミオパチー(体がだるく手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる)
● 肝機能障害(AST、ALT、Al-P、γ-GTPの上昇を伴う肝機能障害)
● 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
十全大補湯は妊娠しやすい体の基礎を作ります
十全大補湯は、性別を問わず、疲れやすい人、病後に体力が低下した人などに効果が期待できる漢方薬です。また血をつくる機能を補ってくれるので、月経不順などに悩む女性にもおすすめです。
十全大補湯は妊娠を望む女性にも効果が見込める漢方薬ですが、服用する際は医師か薬剤師にあらかじめ相談しましょう。
十全大補湯を正しく服用して、妊娠に向けた健康な体をつくることができるといいですね。