性病というと、ちょっと病院にも相談しにくい、という人が多いかもしれません。しかし、実は非常に身近で、知らずにかかっている人も多い病気なのです。今回は性病の中でも特に患者数が多いクラミジア感染症について、「自然治癒するらしい」という噂は本当なのか、また放置したときはどんなリスクがあるのかについてご紹介します。
クラミジアとは?
俗にいう「クラミジア」とは、性器クラミジア感染症のことを指します。性器クラミジア感染症は、「クラミジア・トラコマチス」という微生物が、性行為を通じて尿道や腟に感染することで発症します。
性器クラミジア感染症には、16~25歳の男女の5~6%が感染しているともいわれており、2016年に報告された患者数は男性が11,723名、女性が12,673名で、合わせると2万人をゆうに超えています(※1,2)。
クラミジアの特徴は、潜伏期間が1~3週間と比較的長く、さらに症状が弱いことが多いため、保菌しても気づかないままの人が多いことです(※3)。それにより感染がさらに拡大しているという実情があります。
クラミジアの症状とは?
クラミジアに感染すると、以下のような症状が出ます。
子宮頚管炎(女性)
クラミジアが腟の中に侵入することで、子宮頚管炎が起こります。不正出血、下腹部の痛み、性交時の痛みなどの症状があります。
1~3週間の潜伏期間があり、また自覚症状を感じないケースが半数以上を占めるともいわれるため、感染経路やいつ感染したかがわからないことも多くなっています(※3)。
尿道炎(男性)
感染後1~3週間で発症します。排尿する際の痛みや尿道からネバっとした分泌物が出るなどの症状があります(※3)。
尿道のかゆみや違和感を覚えることもありますが、自覚できないほど症状が軽い場合もあります。
精巣上体炎(男性)
精巣上体(副睾丸)という、精巣の横についている器官が炎症を起こす症状です。精巣の横にしこりが現れ、発熱することもあります。
しこりを触ると痛みを感じ、歩いている際に触れることで痛むこともあります。
クラミジアを放置したときの女性のリスクは?
自覚症状が少なく、性病としては痛みなどの症状が軽いため治療が遅れがちなクラミジアですが、放置したままにしておくと様々なリスクを高めてしまうことになります。
女性が感染を放置した際のリスクとしては、不妊症につながってしまうことが挙げられます。
これは子宮頚管炎から卵管炎が併発してしまうことで起こります。卵管の細胞の障害により受精卵が通りにくくなったり、卵管が狭くなることで卵管に受精卵が着床してしまう「異所性妊娠(子宮外妊娠)」が起こる可能性が生じます(※3)。
クラミジアを放置したときの男性のリスクは?
クラミジアにより精巣上体炎が起こり、そのままにしておくと、精巣上体炎でできたしこりが、精管(精子の通り道)をふさいでしまうことがあります。
そうすると精子が尿道まで運ばれなくなるため、精液の中に精子の数が少ない「乏精子症」や、もしくは全くない「無精子症」になってしまいます(※4)。
クラミジアは自然治癒するの?
クラミジアは自覚症状がないことが多い病気のため、そもそもクラミジアになったかどうかがわからなかったり、クラミジアになっていたとしても治ったか治ってないかがわかりにくいのが実情です。
しかし、基本的にクラミジアが自然に治ることはありません。
唯一の例外としては、ほかの病気を治すために処方された抗菌薬の影響で、偶然クラミジアが治ってしまった、というケースです。しかしこれはあくまで偶然の産物なので、クラミジアが自然に治癒するという噂は、ここからきているのかもしれません。
クラミジアの検査や治療法は?
クラミジアの検査は、男性は尿検査、女性は腟の分泌液検査によって行われます。男性は泌尿器科、女性は産婦人科で検査しますが、簡易的に市販の検査キットを使って自分で確かめることもできます。
しかし、確実に診断と治療を行うためには病院を受診する必要があります。
もしクラミジアと診断されたら、抗菌作用がある薬を病院で処方してもらいます。その際は、男性だけ、女性だけで治療するのではなく、必ずパートナーとともに治療を行いましょう。
もし自覚症状がなかったとしても、パートナーのどちらかが保菌していれば、再びクラミジアをうつしてしまうことになりかねません。これをピンポン感染と言います。
クラミジアは自然治癒しないので放置してはいけません
自覚症状が少なく、感染したからといって辛さを感じることが少ないクラミジアですが、治療をしないままでいると、男女ともに不妊につながる恐れがあります。
放っておくと将来後悔してしまうかもしれません。もし感染の可能性があれば、自覚症状がなくてもまず検査をしてみましょう。