性感染症の一つ「性器クラミジア感染症」は、不妊の原因になることがある厄介な病気です。できるだけ早く治療をするためにも、感染後にどのような症状が現れるのか、知っておきたいですね。今回は、クラミジア感染後の症状として、おりものの臭いや色、量に変化があるのか、痛みやかゆみ、不正出血などが現れるのかについてご説明します。
クラミジアに感染すると、どんな病気になる?
性器クラミジア感染症は、性行為を通じて「クラミジア・トラコマティス(以下、クラミジア)」という病原微生物に感染して発症します。日本国内では、男女ともに性感染症の中でもっとも感染者の多い病気です(※1)。
女性の場合、性交渉で腟内にクラミジアが侵入すると、子宮頸管に炎症を引き起こし、子宮内膜や卵管へと炎症が広がっていきます。
この炎症を放置しておくと卵管などが癒着を起こして不妊の原因になることがあるため、できるだけ初期の段階で治療する必要があります。
最近では、口を使った性行為により、クラミジアが喉に感染するケースもあります。これを「咽頭クラミジア」と呼び、発熱やのどの痛みを引き起こします。
クラミジアでおりものの臭いや色、量が変化する?
クラミジアが腟内に入り込み、感染を引き起こした時点では、おりものの色は透明な状態で水っぽく、量がわずかに増える程度で、臭いなどに大きな変化はありません(※2)。
ただし、クラミジア感染に気づかないままでいると、体内で腟から上に向かって感染が広がり、感染後1~3週間で子宮頸管炎を発症することがあります。
子宮頸管炎が起こると、次のような状態の粘液が子宮頸管から流れ出し、おりものとして現れることがあります(※2,3)。
● 淡く白っぽい黄色になる
● 粘り気がある、または膿(うみ)のようになる
● 量が増える
ただし、こうしたおりものの変化は個人差があり、はっきりわからないことも多くあります。次にご説明するような症状も合わせて判断の材料にしましょう。
クラミジアでおりもの以外にかゆみや出血が起きる?
女性の場合、性器クラミジア感染症になった時点では、おりものだけでなく他の自覚症状もほとんど現れません。なんらかの症状が現れる頃には、子宮内膜や卵管へと炎症が広がってしまっている可能性があります。
クラミジア感染から1~3週間経つと、生理痛のような軽い下腹部痛、陰部のむずがゆさ、下着に軽くつく程度の不正出血が見られる人もいます。ただし、それでも少し違和感があるくらいの症状なので、この段階でも見落とされることが多くあります。
一方、男性がクラミジアに感染すると、排尿するときに痛みがあったり、白い膿のような分泌液が出たりすることがあります。
女性に自覚症状がなくとも、男性パートナーに何らかの症状が見られたら、2人一緒にクラミジアの検査を受けましょう。
クラミジアの検査・治療はどうやって行うの?
クラミジア感染が疑われる場合、女性は腟内や頸管内をこすって分泌物を採取し、男性は血液や尿を採って検査を行います。
検査で陽性反応が現れた場合は、クラミジアの増殖を防ぐために、抗生物質を服用することになります。激しい腹痛を伴うほど重症のときは、入院して点滴治療を行うこともあります。
薬によって症状が治ったとしても、パートナーの体内にクラミジアが残っていた場合、性交渉を通じてうつされてしまい、また再発する可能性もあります。
そうならないよう、パートナーと同時に治療を行い、再検査で陰性と確認されるまでは、性交渉を控える必要があります。
クラミジアで生理不順になる?
生理不順の原因は様々ありますが、クラミジア感染によって引き起こされることもあります。
クラミジアの感染が広がり、卵管が炎症を起こすと、すぐ近くにある卵巣にも炎症が波及しやすく、卵管炎と卵巣炎を合併することがよくあります。
この炎症がひどく、卵巣の機能が低下してしまうと、卵胞が十分に発育しないため、排卵が起こらない「無排卵」の状態になることもあります(※2)。
また、卵巣から分泌されるはずのプロゲステロンという女性ホルモンが不足し、子宮内膜がすぐに剥がれ落ちてしまうため、生理不順や経血量の異常などが見られる原因となるのです(※2)。
先述のとおり、クラミジア感染による炎症を放置してしまうと、生理不順だけでなく不妊にもつながる恐れがあるので、注意が必要です。
クラミジアによるおりものの変化は人それぞれ
クラミジアに感染すると、おりものの色や量、状態が変化したり、デリケートゾーンに痛みやかゆみが現れたりすることもありますが、多くの場合は無症状なので、自分で気づくのはなかなか難しいものです。
症状が悪化する前にクラミジア感染を発見するには、定期的に婦人科で検査を受けておくことが大切です。特に、これから妊娠を望んでいる女性は、妊活を始める前に性感染症の検査を受けておきましょう。