片時もじっとしていられない、順番を待てない、忘れ物が多い…といった行動がみられると「うちの子はADHDなのかな」と思うママ・パパもいるかもしれません。ADHDかどうかは小学生になってわかるケースが多いですが、もしADHDだった場合、学校で友達と仲良くできるのか、授業についていけるのかなど、気になりますよね。
今回はADHDの小学生について、特徴や学校生活でのポイント、勉強法などをご紹介します。
ADHDは小学生になってわかることが多いの?
ADHDは日本語で「注意欠如・多動性障害」といい、「不注意」「多動性」「衝動性」を特徴とする生まれつきの脳の機能障害で起こります(※1)。
ADHDの診断年齢はさまざまですが、小学校に入学してしばらくした8〜10歳頃が一番多いとされています(※2)。
ADHDの子どもは4歳頃までに何かしらの徴候が現れることがほとんどですが、幼児期は多くの子が「不注意」や「多動性」に関係する行動をとるので、小学校入学まではADHDだと気づかないことが多いのです。
小学生になると、学校生活の中で「忘れ物が多い」「ノートをとれない」「授業中に立ち歩く」「順番を待てない」といった行動がみられることで気づきやすくなります。
ただし、幼児期から「道具や遊びの順番を待てない」「他の子のものを取り上げる」といった「衝動性」に分類される行動をとることが多いと、小学校入学前にADHDとわかるケースもあります。
ADHDの小学生にみられる特性は?
ADHDの特徴は「不注意」「多動性」「衝動性」ですが、ここでは小学生の時期にみられる特性を具体的にご紹介します(※3)。ただし、特性の現れ方や程度には個人差があります。
・連絡帳やノートをとれない
・忘れ物が多い
・作業が雑
・よそ見が多い
・ケアレスミスが多い
・宿題をしない
・提出物を出さない
・授業中に立ち歩く
・授業中に大声で話しかける
・いつも多弁で騒々しい
・いつも体をもじもじ、そわそわ動かしている
・むやみに走り回り、興味のおもむくままに乱暴にものを取り扱う
・軽はずみで唐突な行動が多い
・ルールの逸脱が多い
・順番が待てない
・教師からの質問へ指される前に答えてしまう
・他の子にちょっかいを出してトラブルになる
・道路に突然飛び出す など
上記の特性のいくつかに当てはまるからといって、必ずしもADHDであるとは限りません。ADHDの診断は、専門の医師によって時間をかけて行う必要があります。
小学生になってADHDと診断されたらどうしたらいい?
ADHDと診断されたら、家庭と学校、医療機関と連携し、しっかりと情報を共有していくようにしましょう。
診断されない状態が続くと、子どもは「他の子はできるのになぜ自分だけできないんだろう」「どうしていつも自分だけ注意されるんだろう」などと悩みながら小学校生活を送ることになるかもしれません。
できるだけ早く気づき、子どもの特性を理解して学校や社会に適応する力を育むサポートをすることが大切です。
ADHDは生まれつきの脳の機能障害のため根本的に治す方法はありませんが、本人にあわせた治療を行うことで、落ち着いて学校生活を送れるようになることもあります。具体的には、以下のような方法を組み合わせると効果的だとされています(※1,3)。
環境を整える
学校や家庭で勉強や作業をするときの環境を、子どもが集中しやすい状態に整えます。
成功体験を増やす
「授業中にきちんと座っていられた」など望ましい行動をしたときはしっかり褒め、不適切な行動はできるだけ見逃すことで、成功体験を増やして子どもの行動を変えていきます。
ソーシャルスキルトレーニングを受ける
ソーシャルスキルトレーニングとは、ADHDの子ども自身が社会で自立した生活を送るためのスキルを学ぶプログラムです(※4)。
さまざまな状況に応じて、どのように相手とコミュニケーションをとったらいいか、どんな行動をしたらいいのか、といったことを学びます。
ペアレントトレーニングを受ける
ペアレントトレーニングは、ママやパパなど保護者がADHDの子どもとの関わり方を学ぶプログラムです(※5)。褒め方や指示の仕方、子どもの行動分析などを学びます。
薬を処方してもらう
薬を服用することで不注意・多動性・衝動性といった症状が和らぐこともあります。
ただし、効果には個人差があり、副作用が現れることもあるため、専門の医師とよく相談したうえで子どもにあった薬を処方してもらうことが大切です。
ADHDでも小学校で友達と仲良く過ごせるの?
ADHDの特性には個人差がありますが、「授業中に立ち歩く」「忘れ物ばかりしている」「ルールを守らない」といった行動が目立つと、クラスの中で孤立したり友人関係がうまくいかなくなったりして、学校生活にストレスを感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、その子の特性に適した発達支援や治療をしっかり行えば、望ましくない行動が少しずつ減り、周りの子ともコミュニケーションをとれるようになって、友達とも問題なく仲良く過ごせるようになります。
ADHDはあくまでも個性のひとつなので、「ADHDだから友達と仲良くできないかも」という先入観を持つことはせず、学校で友達と楽しく過ごせるようにサポートができるといいですね。
ADHDの小学生におすすめの勉強法は?
ADHDの子どもは、授業に集中できなかったりノートがうまくとれなかったりすることもあるため、ほかの児童と同じように授業を受けて勉強をするのは少し大変に感じるかもしれません。
しかし、ADHDだからといって、勉強ができないわけではありません。子どもの特性に合った勉強法を見つけることができれば、やる気を引き出しながら勉強を進められるはずですよ。
ここでは、ADHDの特徴である「不注意」「多動性」「衝動性」の傾向別に、おすすめの勉強法をご紹介します。
不注意の傾向が強い子におすすめの勉強法
勉強中に集中力が切れないように、勉強を始める前に周りの音を消す、ゲームやパソコンのある部屋では勉強をさせない、周りに飲み物やおやつを置かない、といった工夫をするといいでしょう。
勉強に使うものは事前にすべて準備し、予備も用意しておきましょう。勉強中に鉛筆や消しゴムがなくなったときに集中力が切れるのを防ぐことができます。
多動傾向が強い子におすすめの勉強法
多動傾向が強い子は、椅子にじっと座っていることや体を動かさないでいることがストレスとなり、勉強に集中できなくなることがあります。
少し体を動かしながらノートをとったり、映像や音を使って説明を聞いたりと、子どもが集中して勉強できる方法を優先しましょう。
衝動性が強い子におすすめの勉強法
行動をコントロールするのが難しい傾向になるので、それまでやっていたことをやめて勉強を始めたり、他のことへの関心を我慢して勉強に集中したりすることが苦手です。
そのため、「何時になったら何分間勉強する」など具体的な予定を立て、その通りに行動できたら褒めるといったトレーニングをするといいでしょう。動的な刺激が好きな子が多いので、テンポよく次から次へと問題を出すような勉強法もおすすめです。
ADHDへの理解を深めよう
厚生労働省によると、ADHDは小学生から中学生までの児童・生徒の3~7%程度にみられます(※1)。つまり平均するとクラスに1~2人はいるということになり、決して珍しい発達障害ではありません。
小学生になってからADHDであると診断されることが多いので、子どもの普段の行動を見ていて「もしかしてADHDかな?」と思ったら、早めに発達障害者支援センターや市区町村の保健センターに相談してみてくださいね。
学校とも連携をとりながらADHDについてよく理解し、子どもが円滑な小学校生活を送れるようにサポートしていけるといいですね。