妊娠・出産はとてもおめでたいことである一方で、検診費や出産費など、かかる費用が高額になりがちです。すぐには支払えないような額になることも珍しくなく、そうした費用を補うために民間の医療保険に加入する人もいます。そこで今回は、妊娠したら保険は必要なのかや、そもそも妊娠中は保険に加入できるのかなどについてご説明します。
保険の種類は?
一口に「保険」といっても、大きく分けて2種類の保険があります。基本的には誰もが加入することになる社会保険と、加入するかどうかを自分で選べる民間保険の2つです。
社会保険の種類は?
社会保険には以下の4種類があります(※1)。
年金
65歳以降の人に給付される老齢年金や障害を負った人に給付される障害年金、被保険者が亡くなったときにその配偶者や子供に給付される遺族年金などがあります。
医療保険
いわゆる健康保険と呼ばれているもので、医療費の7〜8割を負担してもらうことができます。
なお、民間の医療保険と区別するため、以降では「健康保険」と呼ぶことにします。
雇用保険
失業した場合に支給される保険です。
労災保険
労働災害が発生したときに給付される保険です。
民間保険の種類は?
民間保険には様々なものがありますが、大きく分けると以下の3つがあります(※2)。
生命保険
人が亡くなったときに、あらかじめ決められた金額が支払われる保険です。子供よりも先に自分が亡くなってしまうことを考えて、妊娠や出産を機に加入を検討する人が多いようです。
損害保険
偶然の事故によって生じた損害額に応じて支払われる保険です。
第三分野の保険
傷害保険や医療保険など、生命保険でも損害保険でもない保険のことです。なかでも医療保険は、出産に備えて加入を検討する人が多いようです。
妊娠中は保険が適用されない?
社会保険の一つである健康保険は、基本的には妊娠や正常な出産に対しては適用されません。これは、健康保険が病気や怪我をした場合に適用されるものであり、妊娠や正常な出産はそれらに該当しないからです。
つまり、妊婦検診や経腟分娩は保険の適用外であるということです。
一方、妊娠高血圧症候群や帝王切開などの妊娠・出産にまつわる病気やトラブルに対しては健康保険が適用されます(※3)。
民間保険の場合は、加入している保険の給付条件によって異なります。
例えば、一般的に医療保険は、正常な妊娠や出産の場合は保険金が支払われません(※4)。しかし、なかには保険金が支払われる医療保険を扱っている保険会社もあります。
妊娠中でも保険に加入できる?
保険会社や保険商品ごとに加入できる条件が異なるため、妊娠中に加入できる民間保険もあれば、加入できない民間保険もあります。特に妊娠中に加入できるかどうかが問題になるのは、生命保険と医療保険が多いようです。
生命保険の場合
生命保険は、妊娠中でも加入できることが多いようです。しかし、出産予定日に近い場合は、出産してから一定の期間が経つまで契約できないこともあります。妊娠は病気ではありませんが、その前後に体に異常をきたすことが多いため、保険会社も慎重にならざるをえないようです。
医療保険の場合
基本的には生命保険と同じで、出産の前後は加入制限のある保険会社が多いようです。また、正常な妊娠であっても、その後に異常妊娠や異常分娩となる可能性もあるので、加入できるとしても以下のような条件が追加されることがあります。
● 子宮の病気に対しては保険金が支払われない
● 出産に関わる病気に対しては保険金が支払われない
妊娠したら保険は必要なの?
妊娠や出産、あるいは生まれてくる赤ちゃんのために医療保険や生命保険に加入する必要があるかどうかは、最終的には個人の判断次第です。
例えば、正常な妊娠・出産の場合は、健康保険は適用されないため、費用は全額自己負担となってしまいます。しかし、出産育児一時金や出産手当金などの公的な支援があるため、実質的な出費は請求される額よりも低く抑えることができます(※5)。
流産や帝王切開、子宮外妊娠など、妊娠・出産時にトラブルがあった場合は、健康保険が適用されます。しかし、手術費や入院費、差額ベッド代などがかかってしまい、正常な出産のときより費用が高額になりがちです。医療保険に加入していれば、そうした費用を自己負担せずにすむ可能性があります。
一方、貯蓄が十分にあったり、親から援助を受けられたりする場合は、医療保険に入る必要はないかもしれません。
生命保険も同様です。遺族年金などの公的な支援だけでは足りないという場合は、生命保険に加入するのも一つの方法でしょう。
保険を検討するときは、必要な金額や自身の経済力、公的な支援、保険金が給付される条件などを参考にして、必要かどうかを判断してくださいね。
妊娠したら保険に入るべきかは人それぞれ
妊娠や出産は何が起こるかわかりません。場合によっては、手術や入院が必要になり、健康保険や公的な支援を受けたとしても、それなりの出費が発生することもありえます。
そうしたときのことを考えて、医療保険などの民間保険に加入する人はいます。反対に、妊娠しても保険に入らない人もいます。
いずれにせよ、妊娠してから保険に加入するとなると、追加条件が設定されたり、出産してしばらく経つまで契約が保留になったりすることがあります。そのため、保険に加入する前にしっかりと給付条件や保険の内容を確認しておきましょう。
妊娠や出産への備えとして、保険に加入する必要があるかどうか、一度考えてみるといいかもしれませんね。