子供だけでなく、大人もかかる「扁桃炎」。命に別状はないことがほとんどですが、痛みが生じることから、子供がかかると心配になる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、扁桃炎について、症状や原因、治療方法などをご説明します。
扁桃炎とは?扁桃腺炎とちがうの?症状は?
喉の奥の両サイドにある「扁桃」と呼ばれるリンパの器官に炎症が起こった状態を、「扁桃炎」と言います。
よく「扁桃腺が腫れた」「扁桃腺炎になった」という話を耳にすると思いますが、「扁桃腺(炎)」は一般的な名称で、正しくは「扁桃(炎)」と言います。
扁桃炎にかかると、下記のような症状が起こります。
● 39度以上の高熱
● 声がかすれる
● 喉の痛み
扁桃炎にかかると特に喉の痛みが強く出て、つばを飲み込むだけで痛みを感じることもあります。扁桃が赤く腫れ、白い膿を持つこともあります。
また、扁桃炎と似たような症状が出る病気に、のどちんこの周辺に炎症が起こる「咽頭炎」というものがあります。
咽頭炎は一般的に、扁桃炎より喉の痛みが弱く、発熱の他に、軽い咳や鼻水、倦怠感など、風邪のような症状が見られます。
子供の扁桃炎の原因は?
扁桃炎の原因は様々ですが、大きく分けて、風邪のウイルスによるものと、細菌の感染によるものの2種類があります。
風邪のウイルス
扁桃炎のほとんどは、風邪のウイルスによるものです。夏風邪のひとつであるプール熱を引き起こす「アデノウイルス」などが扁桃周りで強い症状を引き起こすと、扁桃炎になります。
細菌の感染
扁桃炎は、下記のような細菌の感染によって引き起こされることもあります。
溶連菌感染症
溶蓮菌感染症とは、A群β溶血性連鎖球菌という細菌による感染症のことです。3歳以上の子供がかかりやすく、多くは菌を含んだ咳や唾液を吸い込むことで感染します(※1)。
溶連菌感染症にかかると、先に説明した扁桃炎の症状以外に、下記のような症状が見られます。
● 嘔吐
● 腹痛
● 関節痛
● 筋肉痛
● 体や顔に、かゆみを伴う3~4mm程度の大きさの赤い発疹が出る
● 舌が赤く、プツプツになる(いちご状舌)
● 口角が荒れる
適切な抗菌薬などを使用せず、治療を行わなかった場合には、熱が下がった2~3週間後に、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを起こす可能性が、まれにあります。扁桃炎が治ったあとも、引き続き注意が必要です。
肺炎球菌
肺炎球菌は、重い感染症につながる可能性がある細菌です。扁桃炎の他に、髄膜炎や中耳炎、菌血症、肺炎などを引き起こすこともあります。
肺炎球菌は予防が大切とされており、定期接種で、予防接種を受けることが推奨されています。生後2~7ヶ月の間に接種を開始し、27日以上間隔を開けて、3回行いましょう(※2)。
また、生後1歳になったら1歳半までに追加接種を受けてください。追加接種は、3回目から60日以上開けてくださいね。
インフルエンザ菌
インフルエンザ菌は、冬に流行するインフルエンザとは全く別物の細菌です。感染すると扁桃炎以外に、髄膜炎などを引き起こす恐れがあります。
インフルエンザ菌は、a~fまで6種類ありますが、このなかでもかかりやすく重症化しやすいのがb型で、なかでも有名なのが「ヒブ」と呼ばれる細菌です。こちらも任意ですが、予防接種を受けることができます。
生後2~7ヶ月までの期間に開始し、27~56日の間隔をおいて3回接種し、初回接種終了後7〜13ヶ月後に追加接種を1回行いましょう(※3)。
子供の扁桃炎の治療は?薬を使う?
子供の扁桃炎の治療は原因によって異なります。
風邪のウイルスが原因で扁桃炎になったときは、風邪と同じように、安静にして様子を見ることがほとんどです。急には良くなりませんが、扁桃に溜まった膿を取り除いたり、うがいをして喉を清潔に保ったりしていれば、1週間もすれば回復に向かいます(※4)。
扁桃炎の原因が細菌の感染にある場合は、抗菌薬を内服して治療にあたります。痛みや熱がひどいときは、点滴を行ったり、場合によっては入院をすることもあります。
また、扁桃炎による高熱を繰り返すときは、扁桃を取る手術を行うことがあります。とはいえ扁桃は、人の免疫機能を担う器官なので、手術前には十分な検討を行う必要があります。
年に4~5回以上の頻度で扁桃炎にかかり、高熱で学校を休む場合や、慢性化していて他の病気を引き起こす原因になっているときは、手術が推奨されています(※5)。
子供が扁桃炎のとき食事はどうする?
子供が扁桃炎になると、激しい喉の痛みで食欲が落ちてしまうこともよくあります。食欲がないときは、とにかく水分補給に努めましょう。水分も摂れないときは、脱水症状が心配なので、病院を受診してください。
食欲があるときは、喉を刺激せずに食べられるよう、硬いものをさけて、柔らかいものや熱すぎないものなどを食べさせてあげてくださいね。のどごしのよいジュースやヨーグルト、ゼリーも良いですよ。
扁桃炎の予防は、親子で取り組もう
扁桃炎にかかると、喉の痛みや高熱などで苦しい思いをしてしまいます。ウイルスや細菌が喉に入らないように、うがいをしたり、免疫力を高める生活を心がけたり、予防接種を受けたり、大人が寄り添いながら予防をすすめていってくださいね。