不妊症の原因として、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の減少があります。黄体ホルモンの不足は、無月経や月経周期異常、月経量異常といった症状を引き起こすため、ホルモン剤を投与して黄体ホルモンを補う治療が行われる場合があります。ホルモン剤にはいくつか種類がありますが、「プロベラ錠」もその一つです。今回は、プロベラ錠の効果や副作用、飲み方のほか、服用したあとの生理周期についてご説明します。
プロベラ錠とは?
プロベラ錠とは、経口黄体ホルモン剤の一種で、黄体ホルモンを人工的に補充するための薬です。
通常、黄体ホルモンは、排卵後に卵胞から変化した「黄体」という組織から分泌されます。もう一つの女性ホルモンである「卵胞ホルモン(エストロゲン)」とともにバランスよく分泌されることで、生理周期が作り出され、妊娠しやすい体になります。
具体的にいうと、卵胞ホルモンが子宮内膜を厚くし、黄体ホルモンがその状態をさらに整え、維持することで、受精卵の着床と発育を助けます。黄体ホルモンには、体温を上げる作用もあります。
プロベラ錠を服用することで、黄体ホルモンの不足やホルモンバランスの乱れによる諸症状の改善が期待できます。
プロベラ錠の効果は?
プロベラ錠は、生理不順や不妊を改善したり、流早産を回避したりする目的で処方されます。製造販売元の臨床試験データによると、下記症状に対して平均74.1%の有効率があるとされています(※1)。
月経異常の改善
● 無月経
● 月経周期異常(稀発月経、頻発月経)
● 月経量異常(過少月経、過多月経)
● 機能性子宮出血
● 黄体機能不全
体内で黄体ホルモンが不足すると、卵胞ホルモンとの分泌バランスが崩れます。その結果、生理がこない「無月経」や、月経周期が異常に長い・短い「月経周期異常」、生理のときの出血量が異常に多い・少ない「月経量異常」などを起こしてしまうことがあります。
それらの治療に、プロベラ錠が処方される場合があります。一定期間飲み続けて、子宮内膜を充実・維持させ、そのあと服用を中止することで人為的に生理を起こします。このサイクルを繰り返すことで、除々に正常な月経周期に整えていきます。
また、子宮内膜の状態が維持されることで、剥がれにくくなるため、機能性子宮出血の治療としてもプロベラ錠が使われることがあります。
黄体機能不全による不妊の改善
通常、排卵が起きた後の卵胞は「黄体」という組織になり、女性ホルモンを作り出します。しかし、黄体の機能が正常に働かないと、女性ホルモンがうまく分泌されません。これが「黄体機能不全」という状態です。
黄体機能不全が見られると、子宮内膜の発育が悪くなり、受精卵が着床しにくい、つまり妊娠しにくい状態になってしまいます。たとえ着床がうまくいっても、黄体が早く退縮して消退出血が起こり、妊娠が維持できなくなるリスクがあります(※2)。
排卵の時期に合わせてプロベラ錠を服用することで、黄体ホルモン不足による着床障害や妊娠維持の障害など、不妊の原因を改善します。
流産・早産の予防
プロベラ錠は、切迫流早産、習慣性流早産の患者にも処方されることがある薬です。先ほどもご説明しましたが、黄体ホルモンには妊娠を維持する働きがあり、近年では特に、早産予防効果を示すデータも報告されています(※3)。
ただし、妊娠維持を目的にプロベラ錠を投与する場合は、「黄体機能不全によると考えられる流早産にとどめること」とされています(※1)。
プロベラ錠の副作用は?
プロベラ錠には様々な効果があり、不妊治療でも使われることがあるホルモン剤です。しかし、発生頻度は不明ですが、副作用もあることを理解しておきましょう(※1)。
プロベラ錠の重大な副作用・兆候症状
● 血栓症:激しい頭痛、胸の痛み、下肢の疼痛・むくみ
● うっ血性心不全:呼吸困難、全身のむくみ、血圧が高い
● アナフィラキシーショック:呼吸困難、全身のほてり、じんましん
● 乳頭水腫:眼が見えにくい、眼球が出てきた、ものが二重に見える
プロベラ錠のその他の主な副作用
● 発疹
● 肝機能の異常、黄疸
● むくみ、体重増加
● 食欲不振、吐き気・嘔吐、腹痛、お腹の張り、下痢
● めまい、頭痛、眠気、神経過敏、不眠、抑うつ
● 乳房の痛み、子宮出血、おりものの変化
● 悪寒、倦怠感、発熱
● 脱毛、肌のかゆみ、蕁麻疹
これら以外にも副作用が起きる可能性はあります。副作用が見られた場合は、服用の中止など対処が必要なこともあるため、担当医に相談してください。
プロベラ錠の飲み方は?
一般的にプロベラ錠は、1日2.5~15mg(1~6錠)を1~3回に分けて飲みます。服用の目的によって飲む量や期間は異なるので、自己判断せず、医師の指示に従って用法・用量を正しく守りましょう。
プロベラ錠服用中の生理は?
プロベラ錠を服用中は、子宮内膜が充実し、脳が「排卵後の状態だ」と判断するため、プロベラ錠を飲んでいる期間は排卵も生理も起こらなくなります。
ただし、プロベラ錠の服用を止めると、一般的な目安として、数日後に子宮内膜が剥がれ落ち、生理が来ます。生理が起こるまでの日数には個人差がありますが、プロベラ錠を最後に飲んだ日からおよそ3~10日後に生理がくると考えておきましょう。
もし、プロベラの服用中に生理が来た場合、黄体ホルモンの不足に対して、薬の効果が追い付いていない可能性もあります。もしくは、副作用として子宮出血が現れている可能性もあります。
プロベラ錠の服用開始・終了日と出血日について、医師に正確に伝えられるように記録しておくと安心です。
プロベラ錠で月経異常や不妊を改善
プロベラ錠は、月経異常や黄体機能不全による不妊を改善したい妊活中の女性や、切迫流早産などのリスクがある妊婦さんなど、様々な人の悩みに応えるホルモン剤です。
医師の診断で処方される薬ですが、プロベラ錠の効果と副作用を理解したうえで、自分の症状に合わせて上手に活用してください。