学習障害(LD)とは?原因や症状は?治療法はあるの?

監修医師 小児科医 黒木 春郎
黒木 春郎 日本小児科学会専門医、子どもの心相談医。1984年千葉大学医学部卒。現在はこどもとおとなのクリニック パウルームの院長として診療を行っております。公認心理師や発達臨床心理士の資格も取り、お子さんとご両... 監修記事一覧へ

子どもが他の同年齢の子と比べて読み書きや計算ができないと、「勉強が苦手なのかな?」と思うこともあるかもしれません。しかし、「計算は得意だけど文章を読むのが遅い」など特定のことだけに困難がみられる場合は、「学習障害(LD)」の可能性も考えられます。

今回は学習障害について、原因や症状、障害との向き合い方などをご紹介します。

学習障害(LD)とは?

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「学習障害(LD、限局性学習症)」とは、発達障害の一つで、全般的な知的発達には遅れがないのに、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算」「推測」といった特定のことだけに困難がある状態です(※1,2)。

ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などを伴うこともあります。

学習障害は、知能面に遅れがある知的能力障害とは異なるため見極めが難しく、本格的な学習が始まる小学生頃までは判断できないことが多いです。

学習障害をもつ子どもの割合は?

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2023年に文部科学省が全国の公立小中学校を対象に実施した調査では、「学習障害」と明確に定義しているわけではありませんが「学習面で著しい困難を示す」とされた子どもの割合は6.5%でした(※3)。

つまり、35人クラスと仮定すると、2人ほどは学習障害の傾向があるといえます。

ただし、これは通常学級に通う児童・生徒に占める割合を示しているため、特別支援学級などに通っている児童・生徒も含めると、実際の数字はもっと高くなると考えられます。

学習障害の原因は?

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学習障害の原因は、はっきりと特定されていませんが、生まれたときから学習障害をもっていることもあれば、もともと学習障害が起こりうる体質で、髄膜炎などの病気や低栄養などを引き金として発症することもあります(※4)。

学習障害は、親の育て方やしつけ方、本人の性格が直接的な原因で起こることはありません。

学習障害の症状・特性は?

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学習障害の症状・特性にはさまざまあり、現れ方や程度は子どもによって違います。以下に、学習障害の症状・特性の例をご紹介します。

「読む」ことに困難がある

● 文章を読むのが遅く、よく読み間違えることが多い
● 1文字1文字は読めるが単語や文として読むことが難しい
● 「ソ」と「ン」など見た目が似ている字を区別できない
● 文字がぼやけて二重に見えたり反転して見えたりする
● 読んでいる文章の意味を理解できない など

「書く」ことに困難がある

● 文字を書くのに時間がかかる
● バランスのとれた文字が書けない
● 書き写しのスピードが遅い
● 助詞の使い方の間違いが多い
● 作文を書くことが難しい など

「聞く」ことに困難がある

● 正しい音として聞き取ることが難しい
● 新しい言葉を聞いてもなかなか覚えられない
● 聞いた話の意味を理解することが難しい
● 聞いた話の内容をすぐ忘れてしまう
● 例え話や冗談をその通りに捉えてしまう

「話す」ことに困難がある

● 考えていることをわかりやすく伝えることが難しい
● 思いついたことをすぐに口にする
● 話の内容がどんどんそれていってしまう
● ひとりごとを言うことが多い
● 質問に対して適切な回答をすることが難しい など

「計算する」ことに困難がある

● 数を覚えるのに時間がかかる
● 数の大小が理解できない
● 計算をすることに困難がある
● ひっ算の繰り上がりや繰り下がりがについて理解できない
● 時計の時間・分などの概念を理解できない など

「推論する」ことに困難がある

● 文章問題を解くことに時間がかかる
● グラフや表の問題を解くことが難しい
● 図形を理解したり描いたりすることが苦手 など

特に、読み書きに困難がある状態を「発達性ディスレクシア」と呼ぶことがあります(※2)。

学習障害の治療法はある?どのようにサポートするといいの?

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学習障害は原因が完全にわかっていないため、根本的に治す方法はありません。

しかし、苦手な分野をうまくカバーして社会的に自立していけるように、できるだけ早く気づき、家庭と学校が連携して子どもの特性にあった以下のようなサポートをすることが必要です。

学校・家庭での様子を共有する

担任の教師や特別支援教育を担当する先生と密に連絡を取り合って、授業中のどんなときに困難がみられるか、家庭ではどのように勉強に取り組んでいるかなど、学校と家庭での様子を共有しましょう。

また、子どもに学校でのその日の出来事を聞くようにして、学習障害によって困っていることはないかを確認することも大切です。

苦手を克服するよりも得意な分野を伸ばす

学習障害がある子どもは知的発達に遅れがあるわけではありません。小学校の教科では国語や算数の授業で困難を感じることが多いかもしれませんが、体育や図工、音楽などは得意という場合もよくあります。

学習障害によって生じる課題に対応しつつ、その子が得意とする分野で能力を発揮できるようサポートしていきましょう。

子どもの特性に合った勉強法を探す

一口に学習障害といっても、困難をきたす分野には個人差があるため、子どもの特性に合った勉強法を取り入れることもポイントです。

例えば、読字障害で文字を認識するのが難しい場合は文字とイラストを照らし合わせながら覚えられるようにする、算数障害で筆算の桁がずれてしまう場合にはマス目を設けてどこに数字を書けばいいか明確にする、といった対応が考えられます。

学習障害は子どもに合った方法で苦手をカバーしよう

読み書きや算数の学習が始まる小学生頃にならないと、判断することが難しい学習障害。親や教師ができるだけ早く気づき、子どもの特性を理解して支援することが大切です。

最近では、学習障害の子どものための早期療育も充実しています。学習障害があるとわかったら、その子に合った学習方法や療育を探して、苦手な分野をカバーしていけるといいですね。

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