生理周期がバラバラで、生理のときの経血が多すぎたり少なすぎたりする場合、それは生理ではなく「破綻出血」の可能性があります。破綻出血が起こる人は排卵していないことが多く、そのままだと妊娠しづらくなってしまうため、早めに対処することが大切です。今回は破綻出血の原因や症状、治療法などについてご説明します。
破綻出血とは?原因は?
破綻出血は、不正出血のうち妊娠や臓器の炎症などによる出血を除いた「機能性子宮出血」に分類されるものです。
女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」は分泌されているものの、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が不足していることによって起こります(※1)。
女性の子宮内膜は、エストロゲンの作用によって厚くなり、プロゲステロンの働きでその厚さが維持されます。しかし、プロゲステロンが分泌されないと、子宮内膜が剥がれ落ちて破綻出血を起こしてしまうのです。
破綻出血はピルや更年期のせい?
プロゲステロンが分泌されない原因は、主に無排卵です(※1)。本来であれば、排卵を終えた卵胞が黄体という組織に変わり、プロゲステロンを分泌しますが、そもそも排卵がないとプロゲステロンは分泌されません。
無排卵になる理由としては、過度なストレスや、過激なダイエットによる体重減少などが挙げられます。ホルモンの分泌をコントロールしている脳下垂体や視床下部は、精神的なストレスなどで障害を起こしやすく、ホルモンバランスが乱れてしまうことがあるのです(※1)。
また、卵巣そのものの機能が低下し、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」などの病気が原因で排卵が起こりにくくなっていることもあります(※1)。
そのほか、排卵を抑えるピルの服用中や、加齢によって卵胞の数が少なくなっている更年期にも、破綻出血が見られることがあります(※1,2)。
破綻出血の症状は?基礎体温でわかる?
前述のとおり、破綻出血は無排卵であることによって起きるケースが多く、その場合は生理不順が見られます(※1)。
出血量や期間には個人差があり、量が多すぎる・少なすぎる、長く続きすぎる・早く終わりすぎるという人もいれば、正常な生理の経血と変わりない人もいるため、出血の状態だけでは、それが生理なのか、破綻出血なのかを判断するのは難しいところです(※1)。
そこで、無排卵による破綻出血かどうかを見分けるには、次のとおり「基礎体温」に注目しましょう。
排卵が起きている場合
ホルモンバランスが正常で、排卵が起きている場合は、上図のように基礎体温が高温期と低温期の2相に分かれます。
ただし、卵胞が破裂せず、排卵できないまま黄体になってしまう黄体未破裂卵胞症候群を発症している場合には、排卵しなくても高温期が訪れる場合があるため、注意が必要です(※3)。
無排卵の場合
プロゲステロンには基礎体温を上昇させる作用がありますが、無排卵の場合はプロゲステロンが分泌されないため、上図のとおり基礎体温が高温期に入りません。
もし生理周期が不規則で、基礎体温がなかなか上がらない場合は、正常な生理の出血ではなく、無排卵による破綻出血の可能性があるので、一度婦人科を受診しましょう。
破綻出血の治療法は?
破綻出血が一時的なものと考えられる場合は、経過観察となることもあります。
しかし、破綻出血の原因が無排卵であると診断された場合は、治療を行う必要があります(※1)。
子供をすぐに授かりたいという人は、排卵をきちんと起こすことが大切なので、クロミッドなどの排卵誘発剤を使って卵胞の発育と排卵を促します。
特に妊娠を希望していない人は、経過観察となることもありますが、出血量が多いことで貧血を起こしているなど、日常生活に支障が出ている場合は、ホルモン剤による治療法を行うこともあります。
破綻出血は体からのSOSかもしれません
「タイミングは不規則だけど、生理は来ているから大丈夫」と思っている人もいるかもしれませんが、もしかすると生理と思っていた出血は、破綻出血かもしれません。
過度な食事制限によるダイエットを繰り返す、連日終電帰りの仕事を続ける、夜更かしが多く睡眠時間が短い、といったことで脳にストレスがかかりすぎると、無排卵が続き、将来の妊娠に悪影響を与えかねないので、心当たりがあるときはできるところから生活習慣を見直してみてくださいね。
生理不順が続いたり、経血量や期間がいつもと違うと感じたりしたときは、一度婦人科を受診しましょう。また、自分の体の不調に早く気づけるよう、普段から基礎体温を記録する習慣をつけておくのも大切ですよ。