生活環境やライフスタイルの変化を背景に、アレルギーを持つ患者は増えており、喘息を発症する子供も増加してきています(※1)。この病気にかかると呼吸が苦しそうな状態になるので、子供がかかるとパパやママは心配になってしまいますよね。今回は、小児喘息について、原因や症状、治療・対処法のほか、発作を予防するためにできることをご説明します。
小児喘息とは?
私たちは日々呼吸をしていますが、そのときに空気の通り道になるのが「気道」です。鼻や口から吸い込まれた空気は、喉から気管を通って「気管支」という分岐点を経て、左右の肺へと送られます。
「気管支喘息」は、様々な要因で気道の粘膜に炎症が起こり、気道を通るあらゆるものや刺激に対して敏感な状態になることで、気道と気管支が急に収縮して狭くなり、呼吸困難になる病気です。
厚生労働省によると、気管支喘息の60~70%は2~3歳までに発症し、子供のときに呼吸困難や笛の音のような喘鳴といった症状が見られるものを「小児(気管支)喘息」といいます(※2)。1歳未満の赤ちゃんの咳がゼロゼロしている場合、気管支喘息ではなく、喘息様気管支炎などウイルス感染性の気管支炎であるケースがほとんどです(※3)。
小児喘息の原因は?
気管支喘息の原因はいくつか考えられますが、小児喘息の場合は、アレルギーによって発症する「アトピー型」が90%を占めます(※4)。
たとえば、ダニやハウスダスト、かび、ペットのふけなどのアレルゲンを吸い込んでしまい、気道や気管支の粘膜がアレルギー反応を起こすと、炎症が起こります。
両親のどちらかが小さかったころに気管支喘息だったり、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー体質だったりすると、その子供にもアレルギー体質が遺伝し、小児喘息が見られるケースが多いとされます(※3)。
ただし、喘息を発症するメカニズムはアレルギーだけでは説明できない部分もあり、風邪やインフルエンザなどの気道感染ウイルスや、たばこの煙、薬、ストレス、寒暖の差などが原因で発症する「非アトピー型」というタイプもあります。
小児喘息の症状は?
小児喘息にかかると発作が起こるのが特徴ですが、その程度には個人差があります(※3)。発作は夜中や早朝に起きやすい傾向にあるので、この時間帯は特に子供の様子に気をつけてあげてください。
軽度の発作
発作が軽ければ、息を吸ったり吐いたりするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった軽い喘鳴はするものの、それほど呼吸困難にはならず、日常生活にも支障がありません。
中程度の発作
中程度の発作になると喘鳴がひどくなったり、息を吸っても吸い切れないような苦しい状態が続きます。呼吸回数が多くなったり、肩で息をするようになったりします。
大きな発作
大きな発作だと、さらに呼吸が苦しくなり、横になって眠ることも難しくなります。くちびるが紫色になるチアノーゼが起きてしまうことも。
チアノーゼを起こして意識が遠のくようなことがあると、命に危険を及ぼす可能性もあります。中程度の発作以上のレベルで、夜に眠れない、日常生活に支障があるといった場合には、たとえ休日や夜中でも病院を受診しましょう。
小児喘息の治療法は?
喘鳴や咳などをきっかけに病院を受診して、小児喘息であると診断されるのが一般的です。病院で受ける治療は、次に挙げる薬による発作の予防と対症療法が基本となります(※4)。
長期管理薬(コントローラー)
小児喘息を持つ子供の気道は、慢性的な炎症を起こしている状態です。そこで、発作が出ていないときでも毎日定期的に「抗アレルギー薬」や「吸入ステロイド薬」などを使用することで、少しずつ気道の炎症状態を改善していきます。
発作治療薬(リリーバー)
発作が現れたときに、気道の腫れや収縮をすみやかに和らげ、狭くなってしまった気道を広げることで、呼吸を楽にします。「β2刺激薬」と呼ばれる気管支拡張薬や内服薬のほか、テープで貼るタイプの薬もあります。
小児喘息の場合は、成長とともに発作の頻度や症状が軽くなり、自然に改善していくことも多いのですが、発作に対処するためにもきちんと病院で診てもらってください。
小児喘息の症状が現れたら、早めに治療を
アトピー体質の子は小児喘息を発症しやすく、発作が起こると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴が起こり、ひどい場合は呼吸をするのが苦しくなります。特に夜中から明け方にかけては発作が出やすいので、子供がパニックにならないよう、パパやママがやさしくフォローしてあげてください。
小児喘息は、適切な治療を受け、発作がなるべくひどくならないようにコントロールすることで、健康な子供とほぼ変わらない生活を送ることができます。小学校に上がるまでには治っていることもありますが、発作や症状が軽くなっていくまでは、根気強く治療を続けていきましょう。