ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とは?作用や排卵との関係は?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

「ゴナドトロピン」という物質をご存知ですか?これは、人間の生殖機能に関わる重要なホルモンの一つで、「性腺刺激ホルモン」とも呼ばれます。月経異常や不妊が見られる場合、ゴナドトロピンのホルモン数値を調べることもあります。今回は、ゴナドトロピンの作用や、排卵との関係についてご説明します。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とは?

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ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とは、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種です。脳の視床下部から「ゴナドトロピン放出ホルモン」が分泌されると、それを受けてゴナドトロピンが分泌されます。

ゴナドトロピンには、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」の2つがあります。2種類ある女性ホルモンのうち、卵胞刺激ホルモンはエストロゲンの産生を、黄体形成ホルモンはプロゲステロンの生成を促進します。

また、卵胞刺激ホルモンは卵胞の発育・成熟を促し、黄体形成ホルモンは排卵を誘発するなど、排卵に至るまでのプロセスでゴナドトロピンが重要な役割を果たします。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の作用は?

基礎体温表 グラフ 女性ホルモン 卵胞期

2つのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)は、女性の体内で、卵胞の発育と排卵に次のように関わっています(※1)。

卵胞期

まず、脳の視床下部から「ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)」が分泌されます。すると、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の産生と分泌が促されます。

卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵胞を刺激し、発育した卵胞からエストロゲンが分泌されます。エストロゲンは、妊娠に備えて子宮内膜を増殖させ、受精卵が着床しやすい環境を作ります。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)とともに卵胞をさらに発育させます。

卵胞期の後半に、成熟した卵胞から分泌されるエストロゲンが急増すると、ゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量も増していきます。

排卵期

ゴナドトロピン放出ホルモンの刺激が強まると、脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌されます。この現象を「LHサージ」と呼び、これをもって卵胞の成熟が完了します。

LHサージの開始から約36~40時間後、ピークを迎えてから約10~12時間後に排卵が起きます。通常、一度の生理周期で排卵される卵胞は1個だけで、それ以外の卵胞は卵胞刺激ホルモン(FSH)の低下に伴い、成長が止まって退縮します。

黄体期

排卵後の卵胞は、黄体形成ホルモン(LH)の作用によって「黄体」という組織に変化し、大量のプロゲステロンを分泌します。プロゲステロンは、子宮内膜の充実した状態を維持し、受精卵の着床(妊娠)に備えます。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の正常値は?

増加 グラフ 増える 黒板 アップ

無月経などの月経異常や、不妊、生殖機能の低下が見られる場合に、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値を測定する下垂体検査が行われることがあります。

LHとFSHのホルモン基礎値は、通常、生理開始から3~7日目の午前中に測定します。ただし、無月経の場合は生理何日目かにこだわらず、卵胞期前期に採血を行えば良いとされています。

測定の結果は、その人の年齢を考慮する必要がありますが、生殖年齢の女性については次の範囲であれば正常とされます(※3)。

● 黄体形成ホルモン(LH):1.8~7.0mIU/ml
● 卵胞刺激ホルモン(FSH):5.2~14.4mIU/ml

なお、卵巣機能が衰えるにつれてFSH値は上昇し、11mIU/ml を超えると自然妊娠する可能性が低く、20~25mIU/mlも超えると排卵しづらいと考えられています。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)は不妊治療にも使われる?

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先ほどご説明したとおり、ゴナドトロピンは排卵までのプロセスに大きく関わり、女性ホルモンの分泌を促進する作用を持っています。

逆に言えば、ゴナドトロピンの産生・分泌が不十分だと、女性ホルモンの分泌や排卵がうまくいかず、ホルモンバランスや生理周期が乱れるといった悪影響が出る可能性があるのです。

そのため、不妊治療の一環で、ゴナドトロピンを含む注射で卵胞の発育と排卵を促す「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」が行われることがあります。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法は、重度の排卵障害やPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)を抱えている人を対象とした治療法です。クロミフェン療法など、他のホルモン療法と比べて排卵率・妊娠率が高い一方で、卵巣過剰刺激症候群など副作用のリスクもあるため、医師と相談のうえ慎重に行う必要があります。

ゴナドトロピンは排卵・妊娠に関わる重要なホルモン

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ゴナドトロピンが分泌される脳の視床下部は、ストレスの影響を受けやすいといわれています。

日常生活で身体的にも精神的にも過度なストレスがかかるとホルモンバランスが乱れ、ゴナドトロピンの分泌に悪影響を与える可能性があります。睡眠・栄養を充分にとり、なるべく心身に負荷のかからない生活を心がけましょう。

ただ、生活習慣を見直してもなかなか妊娠できない場合は、生殖機能に疾患が潜んでいる可能性も。生理周期が不安定な人や排卵が起きているか心配な人は、婦人科を受診して医師に相談してみてはいかがでしょうか。

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