「抗ミュラー管ホルモン」という言葉を聞いたことがありますか?なじみのない言葉かもしれませんが、卵巣の状態を知る上では重要なホルモンです。
今回は、抗ミュラー管ホルモンとは何か、基準値や正常値はあるのか、検査数値が低いときに考えられることなどをご説明します。
抗ミュラー管ホルモンとは?
抗ミュラー管ホルモンとは、卵子への発育過程にある前胞状卵胞から分泌されるホルモンのことで、略称を「AMH(アンチミューラリアンホルモン)」といいます。このホルモンの数値を測定することで、卵巣に残っている卵子の数(卵巣予備能)を推測することができます。
女性は、卵子の元となる「原始卵胞」を胎児の頃から持っていますが、それらは新たに増えることはなく成長するごとに減少します。1回の生理周期ごとに成熟して排卵に至るのは1個のみで、成熟しなかった原始卵胞は消失していきます。
一般的には卵子の数は年齢を重ねるごとに減っていきますが、そもそも卵子の数には個人差があり、年齢とは比例しない場合も。そのため、主に妊娠計画や不妊治療の方針を検討することを目的に検査することがあります。
抗ミュラー管ホルモンはどうやって調べるの?
抗ミュラー管ホルモンの測定(AMH検査)は、採血によって血中濃度を調べます。生理周期など時期に制限はなく、いつでも受けることができますよ。
AMH検査でわかるのは、あくまでも卵巣にある卵子の数であり、卵子の状態がわかるものではありません。
ただAMH検査は、排卵誘発剤の注射による卵巣刺激にどのくらい反応しそうか、いくつくらいの卵胞が発育できそうかを推測できるため、体外受精など不妊治療の進め方を検討するときに検査することもあります。
抗ミュラー管ホルモンの基準値は?数値が低いときは?
抗ミュラー管ホルモンの濃度を示すAMH値は、年齢を重ねるにつれて減少していくのが一般的です。
38歳以下でおおよその正常値は2.0〜6.8ng/mLとされています(※1)が、個人差があり、病院では年齢別の平均値などをもとに低いか高いかを判断します。
数値が低い場合
数値が低い場合は「卵巣の中にある卵胞の数が少ない」と考えられますが、「妊娠率が低い」ことではありません。AMH値が低くても卵子の状態が良ければ妊娠できる可能性はあります。
年齢が上がるほど卵巣の機能低下が進むため、AMH値も低くなります。この場合、妊娠計画や不妊治療を早めにはじめる検討材料になります。
数値が高い
抗ミュラー管ホルモンの数値が平均より高い場合、卵巣の中に残っている卵胞の数が多い状態ではありますが、先の通りAMH検査は卵子の状態がわかるものではないので、「妊娠率が高い」とは一概には言えません。
AMH値が高いのに妊娠の兆候が見られない場合は、別の検査を検討する材料となります。
しかしAMH値があまりにも高いと、「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性も考えられ、検査が必要となります。
多嚢胞性卵巣症候群は排卵に影響が出る病気なので、そのまま放置してしまうと不妊につながる恐れもあります。発症の可能性があると判断された場合、詳しい検査を受けたうえで、症状に合わせた早めの対処をすることが重要です。
AMH検査の費用は?
検査費用は病院によって異なりますが、不妊検査としてAMH検査を行う場合は健康保険の適用外となるので5,000~10,000円ほどかかります。
しかし体外受精や顕微授精を行う際、卵巣刺激をするための排卵誘発剤の投与量を判断するためにAMH検査を行う場合に限って保険適用となり、自己負担額は上記の3割になりますよ。
体外受精や顕微授精は、保険が適用される年齢や回数に上限があるため、30代後半〜40代で治療を検討している人は注意しましょう。
地域によっては、AMH検査を含む不妊検査を行う場合に助成金がもらえるところもあるので、自治体のホームページなどで確認するのがおすすめです。
抗ミュラー管ホルモンは不妊治療の検討材料
抗ミュラー管ホルモンの数値は、妊娠率を判断するためではなく、今後の不妊治療をどれくらい続けていけるかの参考にするために重要な材料となります。
AMH値が低いからといって妊娠できないわけではありませんが、「受精できる可能性のある卵子が少ない」ことを意味するので、年齢を重ねてから妊娠を望んでいる人は、婦人科で一度検査をしておくことをおすすめします。