女性は、ホルモンバランスが崩れると、月経周期に異常をきたして不妊の原因になることがあります。月経周期を司る女性ホルモンには2種類ありますが、そのうちの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」を補うホルモン剤として「エストリオール錠」というものがあります。エストリオールとはどのような薬なのでしょうか?今回は、エストリオール錠の効果や副作用についてご説明します。
エストリオール錠とは?
エストリオール錠とは、エストロゲンの1つである「エストリオール」を成分とした、経口卵胞ホルモン剤(エストロゲン製剤)です。
エストロゲンは、卵胞の発育にしたがって分泌される女性ホルモンです。受精卵が着床しやすい、つまり妊娠しやすい状態を作るため、子宮内膜を厚く増殖させる役割を持っています。また、子宮頸管粘液を分泌させる作用もあります。
エストロゲンには、「エストロン(E1)」「エストラジオール(E2)」「エストリオール(E3)」の3種類があります。エストロンは閉経後、エストラジオールは性成熟期に体内で作られることが多く、エストリオールは主に胎児の副腎と胎盤で産生・分泌されます(※1)。
エストリオール錠の効果は?
先ほどもご説明したとおり、エストロゲンは女性の妊娠しやすい体作りをサポートする女性ホルモンです。何らかの原因でエストロゲンの分泌が減少すると、ホルモンバランスが乱れ、不妊の原因となることがあります。
エストリオール錠は、エストロゲン製剤の中でも比較的おだやかに作用する薬ですが、他の2つのエストロゲン製剤と比べると「子宮頸管粘液の分泌を増やす」「子宮口を開きやすくする」「腟粘膜を良い状態にする」といった作用は強いことがわかっています。
また、エストリオール錠には、エストロゲンの分泌不足により低下している腟の自浄作用を回復させ、炎症に対する腟の抵抗力を強める作用もあります(※2)。
そのため、子宮頸管に炎症が見られる場合などに、エストリオール錠が処方されることがあります。自覚症状がないことが多い病気ですが、炎症が広がったり慢性化したりすると妊娠しづらくなる可能性があるため、不妊治療の一環で使われます。
そのほか、エストリオールは、更年期障害や老人性骨粗しょう症に対する治療薬としても使われます。
エストリオール錠の副作用は?
エストリオール錠は、先ほどもご説明したとおり、子宮内膜への作用という点では比較的おだやかな薬ではありますが、いくつか副作用もあります(※2)。
エストリオール錠の重大な副作用
起こる頻度は不明ですが、ほかのエストロゲン製剤と同じく、「血栓症」が起こる可能性もあります。血栓症とは、血管内で血液が固まり、詰まってしまう病気です。心筋梗塞や脳梗塞になると命に関わる危険性もあるので、注意が必要です。
ふくらはぎや下半身の痛み、息切れ、胸の痛み、めまい、急性の視力障害などは、血栓症の初期症状として知られています。これらの兆候が現れたら、放置せず、すぐに病院を受診しましょう。
また、同じく頻度は不明ながら、下記のような副作用が出る場合もあります。
エストリオール錠のその他の副作用
● 過敏症:発疹、かゆみ
● 子宮:不正出血、おりものの増加
● 乳房:乳房の痛みや張り
● 肝臓:肝機能障害
● 消化器:吐き気、食欲不振、嘔吐
● その他:めまい、脱力感、全身のほてり、体重増加
これらの症状が現れたら、適切な処置をする必要があるため、すみやかに担当医に相談しましょう。特に発疹、かゆみの症状が現れた場合は、エストリオール錠の服用をすぐにやめてください(※2)。
エストリオール錠を飲むときの注意点は?
子宮頸管炎や子宮腟部びらんの治療薬としてエストリオール錠を服用する場合、通常は1回0.1~1.0mgを1日1~2回飲むことになります(※2)。
ただし、服用する人の年齢や症状によってエストリオール錠の服用量や頻度は変わります。処方前に問診や婦人科検診を受けたうえで医師から適切な量が処方されるので、必ず医師の指示どおりに服用しましょう。
なお、エストリオール錠の投与を始めたら、定期的に乳房検診や婦人科検診を受ける必要があります。薬を飲みはじめて気になる体調の変化や疑問点があれば、検診の機会に医師に相談してみてくださいね。
エストリオール錠の効果と副作用を知っておきましょう
エストリオール錠は、子宮頸管炎や子宮腟部びらんなど、悪化すると不妊の原因につながる病気の治療薬として広く使われています。
エストロゲン製剤の中では作用が比較的おだやかではありますが、自己判断で飲み方を変えたりせず、用法・用量を正しく守って服用を続けましょう。エストリオール錠を飲んでいて気になることがあれば、医師に確認してください。