赤ちゃんがあまり泣かなかったり笑わなかったりすると「サイレントベビー」と呼ばれることがありますが、医学的根拠はあるのでしょうか。
今回は「サイレントベビー」という言葉が生まれた背景や根拠、赤ちゃんが泣かない・笑わない場合に何かの原因があるのかについてご説明します。
サイレントベビーとは?医学的根拠はあるの?
無表情で、あまり泣かない・笑わない赤ちゃんのことを「サイレントベビー」と呼ぶことがありますが、これは医学用語ではなく俗称です。
「サイレントベビー」は、1998年に初版で発行された書籍『サイレントベビー -「おとなしい子」ほど、未来は危険』(著/小児科医の柳澤慧氏)から生まれた言葉と考えられます。
これにより「泣いている赤ちゃんを放っておくと、主張しなくなったり表情が乏しくなったりすることでサイレントベビーになる」「サイレントベビーのまま成長すると将来コミュニケーション能力が低くなる」「物静かだと心身の発達に影響が出る」などの噂が生まれましたが、医学的根拠はありませんよ。
泣いても抱っこしない・テレビやスマホを見せると物静かになるってホント?
「赤ちゃんにスマホやテレビを見せっぱなしにするとサイレントベビーになる」「赤ちゃんが物静かなのは親子のコミュニケーション不足」といった噂もありますが、これらにも医学的根拠はありません。
赤ちゃんが親の会話を見たり聞いたり、親が赤ちゃんに話しかけたり、泣いている原因を取り除いてあげることは、赤ちゃんの成長を促すきっかけにはつながります。
しかし、泣いてもすぐに抱っこできなかったり、テレビやスマホで少し赤ちゃんの気をそらしたりしたからといって、赤ちゃんが物静かになるわけではありませんよ。
テレビやスマホを使う時間やタイミングを工夫したり、すぐに抱っこできないときは声を掛けて待ってもらったりすると良いですね。
赤ちゃんがあまり泣かない・笑わない原因は?
赤ちゃんがあまり泣かない・笑わない・物静かな場合、サイレントベビーとの関連性はありませんが、以下のようなことが考えられます。
性格がおとなしい
赤ちゃんにもそれぞれ性格や個性があります。同じような環境で育っている兄弟・姉妹でも、感情がよく見られる子もいれば、おとなしい子もいます。
赤ちゃんが生まれつき物静かな性格であることも十分ありえるので、その子の個性ととらえてあげてくださいね。
知的障がいや自閉症スペクトラム症
赤ちゃんが物静かであることは、知的な発達の遅れや自閉症などの障がいの有無を判断するために注意が必要な要素のひとつとされています(※1)。
知的障がいや自閉症スペクトラム症の赤ちゃんには、あまり笑わない、一人でいても泣かない、目が合いにくいなど対人関係における発達の遅れが見られることがありますが、一概には肯定されていません。
泣かない、笑わないだけでなく、赤ちゃんと接していて気になることがあれば、抱え込まずにかかりつけの小児科医に相談してみてくださいね。
重度のネグレクトや虐待
重度のネグレクト(育児放棄)や虐待を受けた赤ちゃんは、自分の要求をママやパパに満たしてもらったり、期待通りに受け入れてもらったりした経験が極端に少なく、他者との関係に不安を抱くようになります。
その結果、赤ちゃんは感情をあまり表に出さなくなったり、周囲に関心を示さなくなったりすることがあります(※2)。
「サイレントベビーにならないように」と気にしすぎないで
赤ちゃんの心の発達において親子の関わりはとても大切ですが、ママやパパが頑張りすぎてストレスがたまった状態でお世話をしていると、赤ちゃんはかえって不安を感じることもあります。
ゆとりがないときは無理をせず、できる範囲で赤ちゃんに寄り添い、たくさんの愛情を伝えてあげてくださいね。