「赤ちゃんがほしい」と願っていても、妊娠できずに悩んでいる人はたくさんいます。妊娠・出産の高齢化に伴い、不妊治療に取り組むカップルの数は増えています。妊娠率を高めるためには、早期に不妊の原因を特定し、適切な対処法を取ることも大切です。そこで今回は、「不妊症かも?」と思ったときのセルフチェックの方法や、不妊の理由についてご紹介します。
不妊症チェックはいつぐらいから必要?
通常、避妊をせずに継続的に性交渉を行う場合、半年~1年以内に子供を授かることが多いとされます(※1)。
日本産科婦人科学会の定義によると、「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しない場合」を「不妊」または「不妊症」と呼びます(※2)。
ただし、加齢により妊娠率は低下していくことから、年齢が高い夫婦の場合は不妊期間が1年より短くても、早めに検査を受けて必要であれば治療を開始することをおすすめします。
不妊症の原因をチェック!
「不妊」というと女性側に原因があると考えられがちですが、男女ほぼ半々で不妊の原因を抱えていることがわかっており、原因不明なケースもあります。
以下、男女それぞれの主な不妊理由をご紹介します。
女性の不妊症の原因
女性側の不妊は大きく3つの原因に分けられます。1つは「排卵障害」で、脳の視床下部や下垂体の機能不全や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、卵巣機能不全などが原因で、正常に排卵しなくなります。
2つ目は、「卵管障害」です。卵管は、卵巣と子宮をつなぐパイプの役割を果たす器官です。過去の病気や手術の影響で卵管が閉じてしまうと、卵子や精子が通過できず、受精が起こりません。
もう1つは、「着床障害」です。子宮にポリープや筋腫がある場合や女性ホルモンが正常に分泌されていない場合、受精卵の着床や妊娠の維持が難しくなることがあります。
男性の不妊症の原因
男性側にも、不妊の原因がいくつかあります。割合として最も多いのが、精子を作る能力に問題がある「造精機能障害」です。精索静脈瘤などの病気が原因となりますが、原因不明なケースも多いとされます。
そのほかには、作られた精子を運ぶ精路に問題がある「精路通過障害」、勃起不全(ED)や逆行性射精などで性交渉をうまく行えない「性機能障害」があります。
不妊症チェックの方法は?
もしかして不妊症かもしれないと思っても、「自分たちは違うだろう」と思いこんだり、病院に行くのをためらったりすると、不妊症の検査を受けないまま時間が過ぎてしまいます。
「早く不妊症がわかっていれば妊娠ができていたかもしれないのに…」という悲しい結果を招かないために、まずは以下のセルフチェックリストを使って、不妊症の可能性を確認しましょう。
1年以上避妊なしで性行為をしているのに妊娠できないカップルで、男女ともに、1つでもチェックがつく場合は不妊症の可能性があると考えて、不妊症の検査を受けることをおすすめします(※3,4)。
女性の不妊症チェックリスト
□ 生理周期が不規則
□ 生理時の出血量が多い
□ 生理痛がひどい
□ 生理ではない時に不正出血がある
□ 性交痛がある
□ 性感染症にかかったことがある
□ 甲状腺の病気や糖尿病などの疾患がある
□ 抗うつ剤などの薬を服用している
□ 開腹手術や婦人科の手術を受けたことがある
□ 強いストレスがある
□ BMIが25.0以上で、肥満傾向である(※)
□ BMIが18.5未満で、やせ傾向である(※)
※BMI(標準体重)=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)
男性の不妊症チェックリスト
□ 射精・性交がスムーズにできない
□ 射精時に出る精液の量が少ない
□ 睾丸が極端に小さい・大きい
□ 睾丸に引きつれた痛みやしこりがある
□ 大人になってからおたふく風邪にかかった
□ 強いストレスがある
□ 常用している胃腸薬などがある
不妊症チェック後に受けるべき検査は?
上でご紹介したチェックリストのうち、男女どちらか、もしくは両方に当てはまる項目がある場合、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
女性は、婦人科や不妊専門クリニックで、血液検査や超音波検査(エコー検査)、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査などを受け、子宮や卵巣などに病気がないか、そのほかの不妊の原因がないかどうかを調べます。
男性の場合、泌尿器科や不妊専門クリニックで精液検査を受けましょう。精子の数や運動率、奇形率などに異常がないかどうかを調べます。
なお、産婦人科で不妊症の検査を行っているクリニックでは、女性も男性もどちらも検査を受けられることが多くあります。夫婦で一緒に受診することは、お互いの状況を知り、協力しながら妊娠に取り組んでいくためにも大切なことといえます。
何らかの病気が原因で不妊が起こっている場合、基本的にはその病気を治療します。また、状況によってはタイミング法の指導を受けるか、人工授精や体外受精など生殖医療技術による妊娠を目指します。
早期の不妊症チェックで妊娠率を高めましょう
早く子供を授かりたいのに、なかなか妊娠できない…となると、不安になったりイライラしてしまうかもしれません。不妊症の原因ははっきり特定できないケースも多くありますが、少なくとも病院にかかることでタイミング法の指導を受けたり、早期に人工授精や体外受精、顕微授精といった不妊治療を開始することができます。
今回ご紹介したチェックリストも参考に、気がかりな点があれば医師に相談してみましょう。