「デュファストン」は、不妊治療や妊娠維持のために処方される合成ホルモン製剤のひとつです。産婦人科などで広く処方されていますが、女性ホルモンのバランスに作用する薬であり、副作用が起こる可能性もゼロではありません。今回は、デュファストンの副作用で現れる症状について具体的にご説明します。
デュファストンとは?
デュファストンは、「ジドロゲステロン」を主成分とした合成黄体ホルモン製剤です。ジドロゲステロンは、体内で女性ホルモンの「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の作用を補ってくれます。
黄体ホルモンには、受精卵が着床しやすいよう、子宮内膜をふかふかの厚い状態に整える作用があります。妊娠が成立しなかった場合はこの子宮内膜が剥がれ落ち、「生理(経血)」のときの経血として体外に出されます。
しかし、黄体機能不全などが原因で黄体ホルモンの分泌が不足すると、子宮内膜が厚くなりづらくなって不妊につながったり、子宮内膜の厚さを維持できずに早く剥がれてしまうことで生理不順が起こったりすることがあります。
デュファストンを一定期間飲むと、黄体ホルモンの作用が補われることでホルモンバランスが整い、このような症状が改善されることが期待できます(※1)。
デュファストンの製造販売元によると、服用を続けた女性のうち黄体機能不全による不妊症が改善された人は51.4%、生理不順が改善された人は83.3%です(※1)。
デュファストンの副作用は?吐き気がある?
デュファストンの副作用は、一時的に黄体ホルモンの量が増加し、体内のホルモンバランスが変化することが原因で現れるものがほとんどです。
デュファストンの製造販売元によると、主な副作用として見られるのは、吐き気や食欲不振、嘔吐など消化器系の症状ですが、どれも頻度は1%未満です(※1)。
上記のほかに、発疹や頭痛、眠気、倦怠感などが現れることもあります(※1)。
なお、デュファストンはほかの黄体ホルモン製剤と同じく、肝臓で分解・合成されてから体内で作用するため、副作用として「肝機能異常」が現れることもあります。
もともと重い肝障害・肝疾患のある人がデュファストンを服用すると症状が悪化する恐れがあるため、処方される前に必ず医師に伝えましょう。
デュファストンの副作用で太るの?
デュファストンに含まれる黄体ホルモンが電解質代謝に影響を与えることで、副作用として「むくみ」や「体重増加」が生じることがあります(※1)。
電解質とは、ナトリウムやカリウムなど体液に含まれる電気を通す物質です。黄体ホルモンの作用によって電解質代謝が正常に働かないと、体が水を溜めこみやすくなり、むくんだり体重が増えたりすることがあるのです。
起こる頻度は明らかになっていませんが、「デュファストンを飲んで太った」というケースは、むくみや体重増加といった副作用が原因だと考えられます。
これはデュファストンを飲んでいる期間に見られる一時的な副作用であり、服用が終わればまた解消されることがほとんどですが、むくみによる手足のだるさなどが気になる場合は医師に相談してください。
出血・腰痛もデュファストンの副作用?
製造販売元による臨床テストでは、デュファストンの副作用として「出血」や「腰痛」は特に報告されていません。
もし、デュファストンを服用してから出血や腰痛の症状が見られた場合、薬の副作用ではなく、以下の可能性が考えられます。
黄体ホルモン不足による消退出血
デュファストンを飲んでいる途中に、生理とは違う少量の出血が起きたときは、「消退出血」の可能性があります。
これは、もともと重い黄体機能不全があった場合、デュファストンによる黄体ホルモンの補充が追いつかず、子宮内膜が剥がれ落ちて起こるものです。
多くの場合、デュファストンを何周期か飲むうちに黄体ホルモンが補われ、出血は見られなくなりますが、出血量が多いなど不安なことがある場合はかかりつけの医師に相談しましょう。
生理痛による腰痛
デュファストンを服用して腰痛が見られるようになった場合、それは薬による直接的な影響ではなく、生理痛かもしれません。
通常、デュファストンで黄体ホルモンを一定期間補充し、子宮内膜が十分維持されたあとに服用をやめると、数日後に生理が来ます。
もともと生理が来ない「無月経」や、生理周期が長い「稀発月経」などの症状があった人の場合、デュファストンを飲んで定期的に生理が起きるようになることで、それまで感じていなかった生理痛の症状を感じることもあります。
デュファストンの副作用はいつ現れる?どれくらい続く?
デュファストンの副作用は、服用を始めたばかりの時期に現れることがほとんどです。
これは、デュファストンを飲むことでそれまで不足していた黄体ホルモンの量が急に増えるためです。ホルモンバランスの変化に体が慣れるまでは、副作用が出てしまうと考えられます。
何周期か飲み続けるうちに、だんだん副作用が現れにくくなることが多いですが、吐き気などの症状があまりにつらいときには、デュファストンを処方した担当医に相談してみましょう。
デュファストンの副作用は医師に相談しよう
特にデュファストンをはじめて服用した人は、ホルモンバランスの変化に体が反応して、まれに副作用が現れこともあります。継続的に服用して体が慣れ始めると、だんだん副作用は治まっていくので、あまり心配しすぎないようにしましょう。
ただし、体質や体調、薬との相性などによって、副作用の症状や感じ方は異なります。日常生活に支障が出るほどつらいときには、医師や薬剤師に服用方法を相談してみてくださいね。