妊娠・出産体験は、十人十色。奇跡の出産には、それぞれ違ったドラマがあります。今回は、29歳で第一子である男の子を出産したRさんの体験談です。
日に日に食べられるものが減ったつわり期
8月上旬に妊娠していることがわかり、喜んでいたのもつかの間、次第につわりの症状が出てきました。私の場合は吐き気と頭痛。
まずは、肉や魚が食べられなくなり、ご飯が炊ける匂いもダメになりました。まさか、スーパーの肉や魚売り場を通ることすらできなくなるとは…。仕事中も気分が悪くなり、よくオフィスで寝かせてもらっていました。
昨日食べられたものが今日食べられなくなる、という繰り返しで、メニューを決めるのにも一苦労。最後まで食べられたのは、トマトとフルーツでした。
つわりは妊娠14週頃まで続き、突然何事もなかったかのように、パタッと終わりました。
風邪が悪化し切迫流産に
つわりが終わって気持ちも晴れ、「休みがちだった仕事にもようやく専念できる」そう思っていた矢先、風邪を引きました。これくらい大丈夫、と休まずにいた結果、咳が治まらなくなり、お腹の痛みを感じるように。
病院で診てもらったところ、「切迫流産」と診断されました。張り止め薬が処方され自宅安静となり、しばらくは一日のほとんどをベッドで過ごすことに。
もともと根っからのポジティブ人間ですが、あのときの私は自分でも驚くほどマイナス思考に陥りました。やめておけばいいのに、「切迫流産」を検索して不安になって泣いたり、赤ちゃんを一番に考えてあげられなかったことを悔やんだり…。
仕事は切迫流産の診断が出た日から休んでいましたが、1ヶ月ほど経って体調が落ち着いてきた頃に引き継ぎをし、そのあとは産休まで休職となりました。
このときにようやく、「今の私の体は私だけのものじゃないんだ」と気付くことができたのだと思います。
穏やかな妊娠後期!臨月はヤンキー座りで
妊娠後期に入ると体調も安定し、夫と映画を観たり、両親と食事をしたり、同じ妊婦仲間の友人と会ったり、ようやく楽しいマタニティライフを過ごせるようになりました。
里帰り出産だったので、この時期に夫と2人で出かけられて良かったと思います。
臨月になって実家に帰り、出産する産院での健診がスタート。安静の期間が長かったうえ、妊娠後期は冬だったので、あまり体を動かしておらず、出産できる体力があるのか心配でした。
先生に、「散歩とかした方がいいんでしょうか?」と聞いたところ、「スクワットとヤンキー座りができる妊婦さんは安産ですよ」とのこと。
早速その日から始めたのですが、スクワットは次第に腰が痛くなってきたのでやめて、暇さえあればヤンキー座り(と言っても10秒ずつくらい)をやっていました。
出産予定日を過ぎても生まれる気配なし…
出産予定日は3月31日。
もちろん、元気に生まれてきてくれればいつでもいいと思っていましたが、4月生まれの方が保育園に入りやすいと周りからも聞いていたので、4月生まれになったらいいなぁという親の勝手な欲も、ほんの少しありました。
そんな気持ちを赤ちゃんが察してくれたのか、予定日になっても、翌日になっても生まれてくる兆しはなく、そのまま4月2日に。
4月2日からは新学年にもなるし「いつ生まれてきてもいいよ」と体の力が抜けたのかもしれません。これまで感じなかった陣痛のような痛みが、この日の深夜2時頃から出てきました。朝まで待って病院へ。
でも、子宮口はまだ2センチ、この痛みは前駆陣痛で、まだ間隔に波があるといわれ、自宅に戻ることに。ちょうど週末で夫が実家まで来ていたので、一緒に近所を散歩し、ゆっくりと過ごしました。
翌日の深夜から再びお腹の痛みが。朝また病院に行きました。しかし、前日と同じように前駆陣痛で、「本陣痛は比べものにならないくらい痛くて違いがわかるから慌てなくて大丈夫」と助産師さんにいわれ、帰宅することに…。
いきみたい!でもそれほど痛くない…
日付が変わり、4月4日。この日もまた深夜からお腹の痛み。前日までの痛みの強さとあまり変わらなかったため、そのまま様子をみることにしたのですが…
自宅でいきみ逃し
夕方からいきみたくなる衝動が出てきたので、いきみ逃しをして過ごしました。ヨガの猫のポーズをして息をふーっと吐ききると、気持ちが落ち着きました。
いきみたいけど、痛みはそれほどつらくない。そんな時間がしばらく続いていましたが、いきみたくなる衝動がもっと強く頻繁に来るように。次第にいきみ逃しもできなくなってきて、病院に行こうと思ったのが20時半頃でした。
トイレで破水…赤ちゃんの頭が!
病院へ行く前にトイレへ行ったら、破水。両親を呼ぶも、父は2階の自室へ、母は夕飯の洗い物をしていて私の声に気がつかない様子。
どうしよう、と思っている間に、いきみたくなる衝動に耐えられなくなり、赤ちゃんの頭が少し出てきてしまいました。さすがにまずいと思い、大声で「赤ちゃん出てきた!」と叫び、駆けつけた両親は大慌て。
まさかの車内出産!痛みはなく、するんと!
急いで車で病院へ向かうことに。私は後部座席で寝転がりました。
母親学級に参加したときに、「病院に向かっている車中で赤ちゃんが生まれてしまったら」という話を助産師さんから聞いていました。
- 赤ちゃんの口をぬぐって泣かせること
- お腹の中と比べて外は寒いから赤ちゃんをバスタオルなどでくるんであげること
- へその緒はママの胸元に赤ちゃんを抱き寄せられるくらいの長さがあるということ
車の中で父が慌てて病院に電話をかけ、赤ちゃんの頭が出てきたと状況を説明しました。その間も赤ちゃんがどんどん下りてくるのがわかります。でも、正直、本当に痛みはありませんでした。
そして、父が「いきまないようにですね、わかりました」と言って電話を切ろうとした瞬間、車の中で赤ちゃんがするんと生まれてきたのです。
自分の手で赤ちゃんをキャッチし、口をぬぐってあげるとすぐに泣いたのでホッとしたのを覚えています。「自分で生まれてきたね、頑張ったね、すごいね」と話しかけ、すぐにバスタオルで包み、赤ちゃんを抱っこしました。
このときの私は自分でも驚くほど冷静で、さっきまでお腹の中にいた子がこの手の中にいる、ただただその嬉しさで満たされていました。
結果的に超安産!息子に感謝
父が再び病院に電話をかけ、「今さっき生まれました、21:15です」と伝え、息子の出生時間となりました。病院に着くと、助産師さんが車の中でへその緒を切ってくれ、まずは赤ちゃんを分娩室へ。
私も後産のため、分娩室に行きました。切開部分の縫合処置の方がお産よりも痛かったです。
夫も自宅から急いで病院に。あまりのスピード出産に面食らっていましたが、立会い出産を少し怖がっていた夫には、ちょうど良かったのかもしれません。
病院の先生には、「超安産ですよ、こんな体験なかなかできないですよ」とたくさん褒めてもらいました。
痛みもなく、するんと元気に生まれてきてくれた息子に感謝しています。
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