道化師様魚鱗癬とは?原因や症状は?治療法はあるの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という病気をご存知でしょうか?難病指定されている赤ちゃんの病気です。発症する赤ちゃんは約30万人に1人という極めて稀な病気ですが、発症した場合、長期的なママやパパのサポートが必要不可欠なものです。そこで今回は、道化師様魚鱗癬の原因と症状、治療法についてご紹介します。

道化師様魚鱗癬とは?

赤ちゃん 泣く 新生児

道化師様魚鱗癬とは、先天的な遺伝子異常により、全身の皮膚が著しく厚い板状の角質に覆われた状態で生まれてくる病気です。

皮膚がひび割れて魚の鱗状になる「先天性魚鱗癬」の重症なものが、道化師様魚鱗癬です。皮膚が鱗状になるだけでなく、厚い角質に皮膚が引っ張られ、皮膚に深い亀裂が入ってしまうことが特徴です。

難病情報センターによると、道化師様魚鱗癬を発症する新生児は約30万人に1人と想定される極めて稀な病気です(※1)。しかし多くの場合、完全に治ることはなく、この病気と一生涯付き合っていくことになります。

道化師様魚鱗癬の場合、皮膚の亀裂だけでなく、まぶたが下がっていたり、耳や鼻が平坦になっていたり、呼吸困難が起こったりするなど、生まれたときの症状は重篤です。

皮膚バリア機能も低下しているため、昔は脱水や感染症、呼吸困難などにより、生まれてから数日〜数週間以内に亡くなることが多い病気でした。

しかし最近は新生児集中治療室の技術の進歩により、道化師様魚鱗癬を発症した赤ちゃんの生存率は高くなってきています。

道化師様魚鱗癬の原因は?

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道化師様魚鱗癬を発症する原因は、表皮細胞の脂質輸送を担っている遺伝子の変異です(※1)。

この遺伝子が変異することで、皮膚のバリア機能にとって大切な脂質がうまく分泌されず、表皮細胞の中に溜まってしまいます。その結果、皮膚のバリア機能障害と、厚い角層が生じると考えられています。

先天的な遺伝子変異は、ママやパパのどちらか片方、または両方に遺伝子異常があり、それを赤ちゃんが受け継ぐことで生じます。しかし、両親のどちらにも遺伝子異常がないにも関わらず、赤ちゃんの遺伝子が突然変異することもあります。

道化師様魚鱗癬は妊娠中に分かるの?

診察を受ける妊婦

前述のように、道化師様魚鱗癬は原因となる遺伝子が明らかになっています。

そのため、妊娠中に「絨毛検査」や「羊水検査」を受けることで、赤ちゃんの道化師様魚鱗癬の原因となる遺伝子に異常があるかかどうかチェックすることができます。

この2つの出生前診断の精度はほぼ100%ですが、母体と胎児にわずかながらリスクがあります(※2)。また、もし赤ちゃんが道化師様魚鱗癬だと分かったことで心の準備ができる人もいれば、悩みが深くなってしまう人もいます。

そのため、出生前診断を受けるかどうかは、夫婦や医師とよく話し合って、慎重に検討する必要があります。

道化師様魚鱗癬の場合は赤ちゃんにどんな症状が出るの?

はてな 疑問 クエスチョンマーク

道化師様魚鱗癬の場合、胎児のときから皮膚が厚くなっているため、赤ちゃんが生まれた時点で症状が出ています。

先述のように、道化師様魚鱗癬は、全身の皮膚が著しく厚く、皮膚がひび割れて魚の鱗状になっているだけでなく、ひどい場合は、厚くなった皮膚が引っ張られて深い亀裂が入っています。

また、まぶたの垂れ下がり、鼻や耳の著しい変形、唇のめくり返りなど、皮膚だけでなく顔の変形も特徴的な症状です。このような症状があるため、呼吸状態は悪化する傾向があります。ただし、他の臓器の合併症はありません。

道化師様魚鱗癬の治療法は?

新生児 NICU

道化師様魚鱗癬を発症した赤ちゃんは、皮膚のバリア機能がとても弱いため、重度の皮膚感染症にかかりやすい状態です。また、呼吸困難になったり、体温の調節ができなかったりするため、すぐに新生児集中治療室での治療が必要となります(※3)。

生まれたばかりの赤ちゃんには、栄養や水分を点滴で投与したり、湿度と温度が管理された保育器の中で正常な体温の維持をしたり、呼吸管理や感染症予防をするなど、赤ちゃんの生命維持のための治療が中心となります。

これに加えて、皮膚には保湿剤やワセリンを塗るなどして、対症療法を行います。最近は新生児期から、皮膚の新陳代謝を活性化するレチノイドという薬を投与することもあるようです。

厚い角質に覆われた重篤な時期を過ぎると、皮膚が鱗状になるだけでなく、全身の皮膚が赤くなります。道化師様魚鱗癬を完全に治すことは難しく、様々な皮膚のケアを続けていくことが必要です。

道化師様魚鱗癬には温かいサポートを

赤ちゃん 手 親 握る

道化師様魚鱗癬を発症した場合、現在の医療技術では、完全に治ることはほとんどありません。そのため、赤ちゃんが大きくなっても、ママやパパがケアを続けていく必要があります。

道化師様魚鱗癬を発症した赤ちゃんは皮膚バリア機能が弱いため、皮膚感染症にかからないように、毎日皮膚を清潔に保ち、入浴後は保湿剤を使って皮膚の乾燥を防ぐことが必要です。

また、道化師様魚鱗癬の症状は、全身の皮膚や顔の変形といった外見に出るため、子供の心のケアも必要です。子供本人だけでなく、ママやパパも大変かもしれませんが、子供が少しでも快適に過ごせるように、温かくサポートしてあげてくださいね。

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