「先天性魚鱗癬(せんてんせいぎょりんせん)」という病気をご存じですか?赤ちゃんが発症する先天的な病気で、皮膚が魚の鱗のようになるのが特徴です。先天性魚鱗癬の患者数は、日本では200人程度と低いですが、妊婦さんや赤ちゃんがいるママにとっては気になる病気ですよね。赤ちゃんが先天性魚鱗癬を持って生まれてきた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?今回は先天性魚鱗癬について、原因や症状、治療法などをご紹介します。
先天性魚鱗癬とは?
先天性魚鱗癬とは、先天的異常により皮膚の表面にある角層が厚くなり、皮膚が魚の鱗状になる病気です。
胎児期から新生児期(出生4週間未満)までの間に発症し、多くの場合、完全に治ることはなく、一生涯付き合っていくことになります。難病情報センターは、日本全国で約200人の患者がいると想定しています(※1)。
先天性魚鱗癬の原因は?
先天性魚鱗癬は、表皮を作っている細胞の分化異常や、脂質の産生異常・輸送異常などにより、皮膚表面の角層が厚くなることで起こります(※1)。
先天性魚鱗癬は遺伝性の病気のため、遺伝的要因によって細胞や脂質に関する異常が起きていると考えられています。
先天性魚鱗癬の症状は?
先天性魚鱗癬は、症状によっていくつかの種類に分類されます。
全身の皮膚が赤くなる先天性魚鱗癬のうち、水ぶくれを伴うものは「水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症」、水ぶくれがないものは「非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症」と呼ばれます。
皮膚に赤みがなく、皮膚が大きな鱗状になっている場合は「葉状魚鱗癬」と呼ばれます。
重症なものとしては、胎児のときから皮膚表面の角層が厚くなっていて、生まれた時点で全身が厚い板状の角質に覆われている「道化師様魚鱗癬」があります。
このほかにも、先天性魚鱗癬の症状として、まぶたや唇のめくれ返り、耳の変形、臓器の異常、皮膚の亀裂が現れることもあります。
先天性魚鱗癬の場合、新生児に症状が現れる?
先天性魚鱗癬の多くは、生後すぐに外見的な皮膚の異常が現れるので、基本的に産後の入院中に発見されます。しかし、生まれたときは症状がなくても、乳幼児期になってから発症する「尋常性魚鱗癬」という病気もあるので注意が必要です。
尋常性魚鱗癬は、手足を含めたほぼ全身の皮膚が極度に乾燥しますが、肘、膝、陰部には症状が出ません。この症状は夏には良くなり、冬に悪化することがよくあります。
また、汗がうまく出ないため、体温調節が難しく、夏は熱中症になりやすい傾向があります。アトピー性皮膚炎を合併することもあり、素人目には尋常性魚鱗癬と見分けるのが困難です。乳幼児期に皮膚がカサカサになって鱗のように広がってくる場合は、皮膚科を受診しましょう。
先天性魚鱗癬の診断・治療法は?
病院では、まず先天性魚鱗癬の特徴的な皮膚の症状が現れていないかを確認します。先天性魚鱗癬の疑いがある場合は、皮膚の一部を切り取って顕微鏡でチェックしたり、血液から遺伝子を取り出したりなどして、診断を行います。
現在のところ、先天性魚鱗癬に根本的に治療する方法はなく、症状を和らげるために、ワセリンや保湿剤を使って対処していきます。新生児期に重たい症状が現れている場合は、新生児集中治療室で、呼吸管理や正常体温の維持などの治療を行います(※1)。
先天性魚鱗癬は、年齢を重ねるにつれて少しずつ良くなることもありますが、多くのケースでは対症療法を行いながら、生涯にわたって付き合っていくことになります。
先天性魚鱗癬は日頃のケアをしっかり
先天性魚鱗癬を発症した場合は、様々なケアが必要となります。
皮膚表面が厚い角層で覆われているので、体温が高くなりやすく、室温や衣服の調節をこまめに行うことが大切です。
また、鱗状の皮膚がカサカサしていたとしても、無理に剥がさないようにします。そして、毎日の入浴で皮膚を清潔に保って、細菌感染を防ぎ、入浴後は保湿剤を使って、皮膚を乾燥から守ります。
気を使うことが多くて面倒に感じることもあるかもしれませんが、子供が少しでも快適に過ごせるように、日頃のケアをしっかり行っていきましょう。