「骨肉腫」という病名を、ドラマや映画で聞いたことがある人がいるかもしれません。骨肉腫は、10代の子供が発症する小児がんのひとつです。今回は、骨肉腫の初期症状、生存率や転移、治療法についてご紹介します。
骨肉腫とは?
骨肉腫とは、骨に悪性の腫瘍が発生する小児がんで、骨のがんのなかでも最も頻度の高いがんです。身長がぐんと伸びる、特に中学生や高校生くらいの10代の子供に発生しやすいのが特徴です(※1)。
日本で骨肉腫を発症する子供は1年間で150人ほどなので、がんの中では非常に稀なものに入ります(※1)。骨肉腫を発症する原因はまだ明らかにはなっていませんが、遺伝的な要因と後天的な要因の両方が、骨肉腫の発症に影響していると考えられています。
骨肉腫の初期症状は?膝・すねの痛みは?
骨肉腫の初期症状として、太ももやすね、膝、肩の骨の「痛み」や「腫れ」が現れます。
しかし骨肉腫を発症する年齢の子供は、成長痛やスポーツによる怪我などが原因で、骨の痛みや腫れが現れることもあります。そのため、こうした初期症状があるからといって、直ちに骨肉腫だと判断することはとても困難です。
ただ、膝やすねの骨に痛みがあるにも関わらず、成長痛だろうと思ってそのままにしておくと、骨肉腫が進行してしまうことがあります。
● 骨の痛みがずっと続く
● 安静にしていても骨が痛む
● 夜中に起きてしまうほど骨が痛む
● 関節が腫れている
上記のような症状がある場合は、早めに整形外科で医師に診てもらいましょう。
また上記のような初期症状がなく、転んだりぶつけたりしたわけではないのにいきなり骨折することがあります。この場合、骨肉腫が進行して骨が弱っている可能性が高いので、すぐに整形外科を受診してください。
骨肉腫の初期症状が出たらどうする?
前述のように、骨肉腫の初期症状が現れたら、整形外科を受診しましょう。
病院では、まず骨の痛みがある部分のレントゲン撮影をして、画像診断します。ただしレントゲン検査では、骨肉腫かどうか判断することはできません。
骨肉腫は、患者の年齢やがんの進行度合いによって治療方法が異なります。整形外科でのレントゲン検査で骨肉腫の疑いがあると判明した場合は、骨肉腫の治療経験が豊富な施設が紹介されるので、すみやかに受診してください。
骨肉腫の疑いがあると診断された場合は、MRIやCTなどで精密検査が必要になります。それでも骨肉腫と診断することは難しいため、手術によって腫瘍を一部切除し、悪性の腫瘍かどうか病理検査を行うことになります。
また、骨折してしまうと骨肉腫の治療が難しくなることがあります。骨肉腫の疑いがあると診断された場合は、専門の施設を受診するまで安静にして、太ももや膝に体重がかからないように気をつけましょう。
骨肉腫の生存率は?転移はするの?
他の場所に転移がない場合、骨肉腫を発症してから5年後の生存率は、65〜75%とされています(※2)。
骨肉腫は肺に転移することが最も多く、次に他の骨に転移することがあります。転移があったとしても、肺への転移に限られている場合であれば、治る可能性が高いようです。骨肉腫は再発や転移が生じることがあるため、治療後も定期的な検査が必要です。
骨肉腫の治療方法は?
骨肉腫の治療は、抗がん剤の投与と手術の両方を行います。
骨肉腫は、腫瘍を完全に取り除くことが大切なため、腫瘍の周囲にある正常な骨や筋肉も一緒に切除する必要があります。そのため、まず先に抗がん剤を使って腫瘍を小さくしてから手術を行います。腫瘍が小さくなってから手術をすることで、腫瘍のある部分の切断をせずに残せるようになってきています(※3)。
手術で切除した骨の部分は、自分の骨を別の部分から取ってきて移植したり、人工関節を入れたりして元に戻します。
手術後は、再発を防ぐために抗がん剤治療を行います。また、リハビリを行うことで運動機能を取り戻すことも必要です。
骨肉腫の初期症状が出たら病院へ
骨肉腫はとても稀な病気のため、子供が膝やすねの骨を痛がるからといって、必ずしも骨肉腫であるとは言い切れません。骨の痛みがあっても、成長痛や、怪我である場合が多くあります。
しかし、骨の痛みが長引く場合や、関節が腫れている場合は、骨肉腫の初期症状の可能性もあるため、早めに整形外科を受診してください。
骨肉腫の生存率は高く、最近は医療の進歩により足を切断しなくても治療ができるようになってきています。骨肉腫の治療法は患者によって異なるので、疑いがある場合は必ず専門医に診てもらいましょう。
骨肉腫と診断された場合、子供だけでなく、ママやパパの心にも大きな負担がかかると思います。子供をサポートしながら、自分たちの心と体のケアを忘れないようにしてくださいね。