更年期障害の不眠の原因は?薬や漢方で対策できる?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

40代になってから、「夜なかなか寝つけない」「夜中に突然汗をかいて目が覚めてしまう」ということはありませんか?更年期障害の不眠に悩む女性は少なくないようです。そこで今回は、更年期に不眠になる原因と、その対策についてご説明します。

更年期障害の女性の半数が不眠に悩んでいる

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不眠とは、寝つきが悪い(入眠障害)、夜中に目が覚める(中途覚醒)、早く目覚めて眠れない(早朝覚醒)、寝た気がしない(熟眠障害)の4つの状態をいいます。

更年期障害に悩む女性の42〜57%が不眠を訴えていて、その大半が入眠障害と中途覚醒という報告があります(※1)。

実際に脳波を調べたところ、上記のほかに、睡眠時間が細切れになっている、深い眠りに落ちている時間が減っているということも確認されています(※1)。

更年期に見られる不眠の原因とは?

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更年期の不眠の原因は大きく2つに分けられ、そのいずれも更年期障害からくるものとされています(※1)。

まず1つめは、更年期障害によって引き起こされる情緒不安定や抑うつ状態、不安などが原因となってなかなか寝つけないというケース。

もう1つは、更年期障害によって引き起こされる、「ホットフラッシュ」と呼ばれるほてりやのぼせ、発汗といった症状が寝ている最中に突然起こり、目が覚めてしまうというケースです。

更年期は睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい

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更年期に気をつけたい不眠の原因として、先に説明した2つのほかに、睡眠時無呼吸症候群があります。

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に何度も呼吸が止まる病気で、心臓や脳、血管に負担をかける危険性があります。

女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンが呼吸中枢に作用し、睡眠時無呼吸症候群になる女性が増えると考えられています(※1,2)。

睡眠時無呼吸症候群は更年期の不眠とは分けて考えられていますが、高血圧や心不全といった病気にかかるリスクが高まるので、注意が必要です(※3)。

家族や周りの人から、寝ているときのひどいいびきや無呼吸を指摘されたことがある人は、病院を受診するようにしてください。

更年期の不眠の対策は?薬や漢方も効く?

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更年期の不眠対策には、「薬物療法」「カウンセリング」「生活指導」が有効です(※1)。

薬物療法とは

不眠のタイプに応じて、適切なタイミングで効き目が現れる睡眠薬を服用します。

不眠の症状と合わせて、情緒不安定や抑うつ状態が強く見られる場合や、うつ病の傾向が見られる場合は、抗不安薬や抗うつ薬も服用します。

ホットフラッシュによって目が覚めてしまう場合は、不足している「エストロゲン」を薬で補う「ホルモン補充療法」を行います。

カウンセリングとは

更年期の不眠をきっかけに睡眠へのこだわりが強くなり、眠れないことへの恐怖が強まることもあります。そうすると、不眠が慢性化してしまうことも珍しくありません。

ストレスが不眠を悪化させている場合は、カウンセリングも有効です。カウンセリングを通して、今の症状が更年期障害による一時的なもので、いずれよくなることが理解できると、安心感から症状が軽くなる人もいますよ。

生活指導とは

生活指導とはその名の通り、生活に関する改善の指導です。症状や不眠の原因に合わせて、医師からアドバイスがもらえます。

たとえば、抑うつ状態が見られたり、社会的な責任が重かったりする人には、家族や職場の協力を得て、適度な休息を取るようにアドバイスされることがあります。

家にこもりがちな人には、気分転換をかねて趣味やスポーツを楽しむように勧められることもありますよ。

更年期の不眠の予防法とは?

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現代の社会の中には、睡眠のリズムを乱しやすい要因がたくさんあります。日頃から下記のような規則正しい生活習慣を心がけ、更年期の不眠を予防しましょう(※4)。

適度な運動と朝食をとる

適度な運動を習慣化すると、寝つきがよくなり、途中で目が覚めることが少なくなります。また、朝食をきちんと食べると体がしっかり目覚め、生活リズムにメリハリがつきます。

夕食後はカフェインが入った飲み物は控える

カフェインには脳を覚醒させる作用があり、その作用は3時間続くとされています。また、カフェインには利尿作用があるので、夜中に目が覚める原因にもなりかねません。

寝る前の飲酒・喫煙は避ける

アルコールは一時的に眠気を誘いますが、途中で目が覚めるなど、熟睡感を得にくくなります。喫煙は、寝つきを悪くし、睡眠を浅くします。

眠りやすい環境を作る

寝る部屋が暑すぎたり寒すぎたりすると、寝つきが悪くなってしまいます。また、明るい光には目を覚ます働きがあります。寝る部屋は心地よいと感じる温度で、不安を感じない程度の暗さにしましょう。

朝起きたら太陽の光で体内時計をリセットする

体内時計は、起床直後の太陽の光をきっかけに時間のズレをリセットしています。朝起きたらカーテンを開け、しっかりと体を目覚めさせましょう。

更年期の不眠にはリラックスできる環境が何よりの対策

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なかなか寝つけなかったり、途中で目が覚めてしまったりすると、「翌日の仕事や家事に支障をきたしてしまうかも」と気になってしまいますよね。

しかし、睡眠時間を気にすれば気にするほど寝つきが悪くなったり、睡眠の質が悪くなったりすることもあります(※4)。

更年期障害で不眠になったら、ひとりで悩みすぎず、適切な治療や対策をしましょう。そうすればまた、質の高い睡眠を取り戻せるはずですよ。

眠れないのが気になったり不安になったりするときは、寝る前にお気に入りの曲をかけたり、アロマをたいたりして、リラックスできる環境を作るのもおすすめです。

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