妊娠中に必要な栄養素について調べていると、「葉酸」という言葉に出会うことが多いのではないでしょうか。葉酸はビタミンの一つですが、ビタミンCやビタミンEと比べるとなじみが薄いかもしれません。しかし、葉酸には様々な働きがあり、特に妊婦さんはしっかり摂りたい栄養素です。今回は、葉酸の効果・効能や、妊娠前から摂るべき理由などをご紹介します。
葉酸とは?
葉酸はビタミンB群の一種です。別名で「ビタミンM」や「ビタミンB9」と呼ばれることもあります。ほうれん草やレバー、アボカドやいちごなどの食品に多く含まれます。
水に溶けやすい「水溶性ビタミン」なので、体内に溜めておくことはできず、使われなかったぶんは尿などから排出されます。そのため、1日あたりの摂取推奨量を毎日摂ることが大切です。
葉酸には次の2種類があります。
● プテロイルポリグルタミン酸(天然葉酸):食品などに含まれる
● プテロイルモノグルタミン酸(合成葉酸):サプリメントなどに含まれる
主に食品中に含まれる天然葉酸は、食品の調理や加工、消化の過程で栄養分が失われやすいという特徴があります。厚生労働省によると、天然葉酸が最終的に体内に取りこまれる割合は50%ほどです(※1)。
そのため、場合によっては、通常の食事だけでなくサプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂ることが必要となります。
葉酸の効果・効能は?妊娠中になぜ必要なの?
葉酸には様々な働きがありますが、特に妊娠中は次のような効果・効能を得るため、しっかり摂ることをおすすめします。
正常な赤血球をつくる
葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球をつくりだす働きを持っています。赤血球は4ヶ月のサイクルで死滅しますが、葉酸が不足すると正常な赤血球をつくることができなくなってしまいます(※2)。
特に妊婦さんは貧血になりがちなので、葉酸を摂取することが大切です。
たんぱく質の合成を助ける
葉酸は、アミノ酸の一種である「ホモシステイン」が、たんぱく質の合成に必要な「メチオニン」という必須アミノ酸に変換される過程で重要な役割を果たします(※1)。
メチオニンが不足すると肝機能障害を引き起こす恐れがあるので、妊婦さんの体調維持のためにも葉酸を摂取する必要があります。
細胞増殖を助ける
たんぱく質や細胞をつくるときの設計図となるのが核酸(DNAやRNA)で、葉酸はこの核酸を合成するために必要な栄養素でもあります。
特に、胎児の細胞増殖が盛んな妊娠初期に葉酸が不足してしまうと、後述のとおり胎児に神経管閉鎖障害を引き起こすリスクがあるのです(※1)。
葉酸には神経管閉鎖障害のリスクを減らす効果がある?
「神経管閉鎖障害」とは、胎児の体の左右にある神経ヒダがうまくつながらず、神経管がむき出しになってしまうことによって、背中から脊髄(せきずい)などが飛び出てしまう先天性の奇形です。
この障害が神経管の下部で起こると「二分脊椎症」、上部で起こると「無脳症」という状態になります。
ママのお腹の中で、脳や脊髄など中枢神経系の元が作られるのは、妊娠4~6週頃です。世界各国で行われた研究結果により、妊娠前から十分な量の葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクを大幅に減らせるということがわかっています(※1)。
そのため厚生労働省は、妊娠初期の妊婦だけでなく妊娠を希望する女性は、食事に加えてサプリメントなどの栄養補助食品からも1日400μg(0.4mg)の葉酸を摂ることを推奨しています(※3)。
アルコールは葉酸の効果を下げてしまうの?
アルコールは、葉酸の吸収・代謝を妨げ、分解を促進してしまいます。そのため、過剰にお酒を飲む人は、葉酸が不足してしまう傾向にあるので注意が必要です(※2,4)。
そもそも妊娠中のアルコール摂取は、生まれてくる赤ちゃんに「胎児性アルコール症候群」を引き起こし、発育の遅れや奇形が現れるリスクがあります。妊婦さんはもちろんのこと、妊活を意識しはじめた段階で、お酒は控えましょう。
葉酸の効果はたくさん!妊娠前から摂取しましょう
赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクは、妊娠初期に適切な量の葉酸を摂取することによって軽減できます。その時期はまだ妊娠したことに気づかない人もいるので、妊活中から葉酸を摂取することをおすすめします。
ただし、食事だけで十分な量の葉酸を摂取することはなかなか難しいので、葉酸サプリも賢く利用してみてください。
手軽に摂れるのがサプリメントの長所ですが、厚生労働省は、葉酸の1日あたりの上限摂取量を18~29歳は900μg(0.9mg)、30~69歳は1,000μg(1mg)としています(※3,5)。くれぐれも過剰摂取には注意しましょう。