ペルテス病とは?原因や症状は?治療に手術と装具が必要?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

我が子が「ペルテス病」と診断されると、ママやパパはショックを受けるかもしれません。しかし、早い段階で発見されて適切に治療が行われれば、大人になっても日常生活が送れるようになる病気です。回復するまでは、長期の治療が必要になることもあるため、子供の心身のケアのためにもどんな病気かを知っておきましょう。今回はペルテス病の原因や症状、治療法、後遺症についてご説明します。

ペルテス病とは?

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ペルテス病とは、「大腿骨骨頭(だいたいこつこつとう)」と呼ばれる、骨盤に接している太ももの骨の先端が壊死してしまうことで起こる病気です。

3〜13歳ころのやせ型で低身長、元気で活発な子供に多く発症し、特に5〜7歳で多く発症しています(※1)。発症率は1万人に1人程度で、男の子は女の子よりも約5倍の発症数があります。

ペルテス病は、適切な治療を受ければ、ほとんどが回復する病気ですが、発症年齢が低いため、子供がうまく症状を伝えられず、病気の発見が遅れてしまうこともあります。

ペルテス病になる原因は?

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ペルテス病は、大腿骨骨頭の成長が終わるまでの間に、大腿骨骨頭の先端に栄養を与えている血流が悪くなる、あるいは途絶えることで骨が壊死し、発症します。

原因として、繰り返し外傷ができることによる血行障害や血液凝固の異常、受動喫煙など様々な説がありますが、はっきりとしたことはまだわかっていません(※1)。

ペルテス病の症状は?

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股関節から太もも、膝にかけての痛みと、痛みが強くなることにより足を引きずって歩く「跛行(はこう)」が主な症状です。

しかし、発症初期は強い痛みを感じることが少ないため、子供自身が自分の症状に気づかないことも。子供が痛みを訴えなくても、歩き方に違和感を覚えたら、整形外科などを受診しましょう。

筋肉痛や成長痛だと簡単に判断し、放置してしまうと、ペルテス病の診断が遅れてしまいます。治療しないまま症状が進むと、壊死した骨頭がつぶれて変形がひどくなり、装具を使用しても歩行困難になるなど予後に影響する可能性があるため、できるだけ早く病院を受診することが大切です。

ペルテス病の治療法は?手術と装具が必要?

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ペルテス病の治療目的は、「骨を治す」というよりも、骨折したときと同じように「骨の再生・修復力を邪魔しないように状態を整える」ことが重要になります。

壊死した骨はやがて吸収され、1~2年で新しい骨が作られます。その間、特に痛みもなく歩行ができる状態にはなりますが、自然に任せて放置してしまうと骨頭が変形してしまう恐れがあります。そこで、装具や手術によって処置を行い、骨が整うまで訓練・リハビリを行います。

ペルテス病の治療法は、大きく3つに分けられ、発症の年齢や症状の程度によって選択されます(※1,2,3)。

1. 免荷・牽引治療

ペルテス病の発症初期は、痛みをやわらげたり、股関節の癒着などを治すため、患部に体重がかからないように免荷・牽引治療を行います。

子供は、両足に1~3kgのおもりをつけて、ベッドの端から引っ張られた状態で過ごすことになります。治療期間中、MRI検査を受け、関節の可動域などを診ていき、装具療法や手術療法をどう行っていくか、主治医が判断します。

2. 装具療法(保存的療法)

壊死が起こってから、壊死骨が吸収されるまでの期間は、骨頭が球形に再生するよう、装具をつけて過ごします。装具はおよそ1.5〜2年つけることになりますが、年齢が低いほど短い期間になる傾向にあります。

治療用装具には、座りながら両足を開いて使うタイプや、立って移動できるタイプなどがあり、患者に合った装具を医師が判断します。

3. 手術療法(外科的治療法)

壊死してしまった大腿骨の骨頭を、本来の球形に修復するため、手術を行うこともあります。特に9歳以上で発症した場合、装具をつける期間が長くなり、骨頭がさらに変形してしまう恐れがあるため、手術が選択されることがあります。

股関節に近い部分の大腿骨や、腸骨などの骨盤骨に人工的な骨折をつくり、大腿骨の骨頭を包み込む「骨切り術」などが行われます。

ペルテス病による後遺症は?

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先ほども触れたとおり、壊死した骨頭は自然と修復されます。しかし、新しく再生された骨はまだやわらかく、骨の中まで形成されるには3~5年かかります(※1)。

日常の歩行や生活では特に支障が出ませんが、激しい運動などでやわらかい骨頭に力が加わってつぶれたり、反対側の足にもペルテス病の症状が出たりすることがあります。そのため、装具や手術によって適切に骨の状態を整えていくことが重要なのです。

治療後も、子供が10代後半になり、骨が成長し終わるまで経過観察を続けますが、40代を過ぎてから再び足の痛みが現れたり、変形性股関節症になったりするケースもあります。

大人になってからも足の様子には気をつけておき、違和感があったときは医師に相談するよう本人に伝えておきましょう。

ペルテス病の自宅ケアの方法は?

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ペルテス病の自宅でのケアにはいくつかのポイントがあります。次のことに気をつけて子供のサポートを続けましょう。

長期間の運動や激しい運動は控える

骨の修復中に強い負荷をかけると形が変形してしまうことも。医師からの許可が出るまでは、走ったり、飛んだり跳ねたりさせないようにしましょう。

装具のフィット感に注意

成長期の子供は、装具をつけていても、すぐに大きさや形が合わなくなってしまいます。装具による不自然な圧迫がないか、正しく装着できているかなど、こまめにチェックしましょう。

心のケアを大切に

ペルテス病は治療期間が長いため、自由に動けない、走れないなどストレスを抱える子供たちも多くなります。学校の先生に正確に事情を伝えることも大切です。運動制限に配慮した参加の仕方を子供や先生と一緒に考えていきたいですね。

ペルテス病の治療には早期発見が重要

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装具や手術など、子供に不自由な思いをさせることも多いペルテス病の治療ですが、早期に発見し、適切な治療を受ければ、治療後の状態が良くなります。

日頃から子供の足の痛みや歩き方に注意し、異常に気づいたらできるだけ早く整形外科を受診するようにしましょう。

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