複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは?原因や症状、治療法は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子宮頸がんの予防ワクチンの重大な副反応の一つに「複合性局所疼痛症候群」があるといわれています。発症頻度は約860万接種に1回と、極めて稀な事例ですが(※1)、万が一のことを考えるとどんな疾患なのか心配になりますよね。今回は「複合性局所疼痛症候群」について、原因や症状、治療法などをご説明します。

複合性局所疼痛症候群(CRSP)とは?原因は?

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複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、外傷や神経損傷のあと、慢性的に痛みを感じるようになる神経系の疾患です。

複合性局所疼痛症候群は、一般的には骨折や捻挫などのケガや手術、末梢神経などの損傷をきっかけに、「原因とは無関係かつ、不釣り合いな程度の痛み」などの症状が続く、原因不明の病気です(※1)。

この複合性局所疼痛症候群が、子宮頸がんを予防するためのヒトパピローマウイルスワクチンの予防接種を受けた後に、症状として現れたと可能性があるいう症例が報告されています。

今のところ、子宮頸がん予防ワクチンの成分と複合性局所疼痛症候群との間に因果関係があるかどうかについて、はっきりしたことはわかっていません。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症状は?

複合性局所疼痛症候群は、外傷や神経損傷が治っても疼くような痛みが持続する、というのが特徴ですが、症状の現れ方は様々です。主な症状には、次のようなものが挙げられます(※2)。

● 感覚異常:少し触れただけで感じる異常な痛み
● 血管異常:皮膚温度や色の左右差
● 発汗異常:発汗の過剰・減少、むくみ
● 運動障害:可動域の低下、筋肉や皮膚の萎縮

子宮頸がんの予防接種の副反応の可能性がある、と報告された中には、手足のしびれや倦怠感、歩行困難といった症例も見られます。

なお、国際RSD/CRPS財団によると、複合性局所疼痛症候群は性別に関係なく発症するが、子供の場合は特に女の子の方が、発生率が高いとされています(※3)。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)の治療法は?

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複合性局所疼痛症候群に対する、確立された診断法・治療法は現在のところありません。しかし、早期に治療を始めることで、回復しやすくなると考えられています。

治療法として、症状に合わせて薬物療法や理学療法(リハビリなど)が行われます。慢性的な痛みに対して鎮痛薬や抗炎症薬が処方されることもあれば、痛みからくる抑うつ症状に対して抗うつ薬が処方されることもあります。また筋肉や皮膚の萎縮の進行を抑えるために、リハビリで体を動かす必要もあります(※2)。

ただし、治療によって症状をどこまで抑えられるのかは個人差が大きく、痛みが気にならないくらいにまで改善することもあれば、数年にわたって同じような症状が続くこともあります。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)については医師に相談を

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子宮頸がん予防ワクチンは、中学1年生になる年度に受けるのが標準的です(※1)。ただし、前述のような症状の報告もあるため、ワクチン接種を行う人が少なくなっているのが現状です。今のところ、予防接種を受けるかどうかは親と本人の判断にゆだねられています。

予防接種を受けておけば、子宮頸がん全体の50~70%の原因を占めるウイルスに対する予防効果があり、メリットは大きいですが、重大な副作用が起こる可能性がわずかでもあるというのは親として心配だと思います。不安があれば、予防ワクチンのメリットとリスクの両方について、接種を受ける前に医師の説明を受けることをおすすめします。

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