月経前不快気分障害(PMDD)とは?原因や症状、治療法は?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

生理前になると気分が沈む、なんとなくイライラするという症状は、程度の差はあれ、多くの女性が持つ悩みです。こうした精神的な不快症状が強く出て、仕事や家事が手につかないほどになっている人は「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性があります。治療や予防をすれば症状を緩和することもできるので、きちんと理解しておきたいですね。今回はPMDD(月経前不快気分障害)について、原因や症状、治療法、予防法をご説明します。

PMDD(月経前不快気分障害)とは?

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女性の体調は、ホルモンバランスの影響を受け、生理周期にあわせて変化します。

生理の3~10日前くらいから生理が始まるまでの間に、胸が張る、腰が痛くなるという身体的症状のほか、イライラ、憂鬱などの精神的な症状が現れることがあります。これは一般的に、PMS(月経前症候群)と呼ばれます(※1)。

PMSのうち、精神面の症状が重くなり、日常生活に支障をきたすもののことを、PMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。

PMDD(月経前不快気分障害)の原因は?

PMDD(月経前不快気分障害)の原因について、はっきりしたことはまだわかっていません。ただし、PMDDの発症に関係があると考えられているものが2つあります。

ホルモンバランスの乱れ

排卵後に分泌量が増える「プロゲステロン」という女性ホルモンが、過剰に分泌されている可能性があります。女性ホルモンの分泌量のバランスが崩れると、一時的に不安定な状態になって、身体的・精神的に不快な症状が現れてしまうと考えられています。

セロトニンの減少

生理前には、幸福感を増やすといわれる「セロトニン」という脳内物質の分泌量が減ることがわかっています。精神を落ち着けてくれるセロトニンが減少することで、精神状態が不安定になってしまうのではないかと考えられています。

PMDD(月経前不快気分障害)の症状は?

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PMDD(月経前不快気分障害)になると、精神的に様々な症状が現れます。個人差があるものですが、以下のようなものが一般的です。

● 強いうつ症状
● 悲しい気分になる、涙もろくなる
● 気持ちを抑えられないほどイライラする
● 強い不安を感じる
● 極度に緊張する

こうした症状は、生理前に現れ、生理が終わると何事もなかったように治まります。

また、精神科の診断マニュアルである「DSM-V」では、PMDDの診断基準を下記のとおりに示しています。

A. ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経終了後の週には最小限になるか消失する。

B. 以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する。


1. 著しい感情の不安定性(例:気分変動:突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)
2. 著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
3. 著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
4.著しい不安、緊張、および/または”高ぶっている”とか”いらだっている”という感覚


C. さらに、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準Bの症状と合わせると、症状は5つ以上になる。


1. 通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退
2. 集中困難の自覚
3. 倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
4. 食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
5. 過眠または不眠
6. 圧倒される、または制御不能という感じ
7. 他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または腫脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚,体重増加
注:基準A~Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない。


D. 症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避:仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)。


E.この障害は、他の障害、例えばうつ病、パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティー障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併発する可能性はあるが)。


F. 基準 Aは、2回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、暫定的に下されてもよい)。

引用:日本産科婦人科学会 『産科婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2017』(※2)

PMDD(月経前不快気分障害)の治療法は?

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PMDD(月経前不快気分障害)の症状は、薬を服用することで抑えることができます。症状がつらいときは、早めに婦人科や心療内科を受診することをおすすめします。

病院を受診してPMDDと診断されると、SSRIやSNRIといった、うつ症状に使われる薬を処方されることがあります。これらは脳内のセロトニンの分泌量を増加させる作用があるため、服用することで気持ちを落ち着けることができます。

また、PMSの治療でも使われる低用量ピルや漢方薬で、女性ホルモンの分泌バランスを整える方法もあります。

ただし、「この薬を飲めばPMDDが治る!」という特効薬はなく、症状や体質などによって、効果がある薬や服用量が違います。医師や薬剤師に相談し、自分にあう薬をみつけられるといいですね。

PMDD(月経前不快気分障害)の予防法は?

PMDD(月経前不快気分障害)の症状は、どうにもできないくらいつらいときもあります。つらさが少しでも和らぐように、普段の生活でホルモンバランスを整えていけるといいですね。

できるだけ規則正しい生活を送って、疲れたときには休息をとり、睡眠時間をしっかりと確保しましょう。つらいときは、美味しいご飯を食べて、ゆっくりと休むことが大切です。適度な運動をして、リフレッシュするのもいいですね。

カルシウム・マグネシウムの摂取や、アルコール・カフェインの制限などによっても、症状が改善する可能性があるようです(※2)。

また、大豆製品などに多く含まれている「イソフラボン」は、女性ホルモンに似た働きがあり、ホルモンバランスを整える効果が期待できます(※3)。納豆や豆腐などを普段の食事に取り入れてみてくださいね。

PMDD(月経前不快気分障害)のつらい症状は早めに病院へ

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PMDDは精神的な症状がでるので、気持ちの問題だと思われがちです。それだけで病院を受診するのは気がひけるという人もいるかもしれません。

しかし、PMDDの症状を放っておくと、うつ症状が悪化する恐れがあります。周りの人との関係や仕事などにも影響が出てしまうかもしれません。生理前に精神的な違和感が何周期も続くようであれば、一人で悩まず、早めに婦人科や心療内科を受診してくださいね。

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