この記事では、管理栄養士である中村美穂さん著『まいにちの手を動かす食事で、すくすく育つ 1〜3歳 発達を促す子どもごはん』より、子どもの食事に対する考え方について紹介します。
記事提供:「まいにちの手を動かす食事で、すくすく育つ 1〜3歳発達を促す子どもごはん」(中村美穂著、日東書院本社)
愛情たっぷりの食事で子どもの体と心を育む
子どもにとって毎日の食事は、単に空腹をしのぐだけのものではありません。
必要な栄養素をバランスよく摂取することで体の成長・発達を支えるのはもちろん、 周りの人と楽しくコミュニケーションをとりながら食べることで心の発達も促します。
さらに、さまざまな色やかたさの食べ物を 手や道具を使って食べることで、手指の操作の発達を促し、脳の発達にも通じると考えられます。
つまり、日々の食事は、子どもの成長・ 発達に密接にかかわる大切な時間だと言えるのです。
食事は子どもの体と心を育む土台
体の発達
子どもの体は常に成長を続けているため、大人の何倍もの栄養が必要となる。食事は、必要な栄養素を補給し、発育を支えながら、生命も維持する。
心の発達
においを嗅いだり、手で触れたり、五感で食事を 楽しむことで、心の発達 が促される。周りの人とのコミュニケーションを通じて安心やよろこびを感じ、自信につなげる。
機能の発達
手でつかんで食べたり、スプーンなどの道具を使ったりすることで手指の動きの発達が促される。また、口に入る適量をよく噛んで食べる力も育む。
「食べる意欲」を引き出すことが大切
特に1〜3歳の頃は、好みがはっきりしてきたり、こだわりが出てきたり、自分でやりたい気持ちはあっても上手くいかずに苦戦したりと、食事のトラブルが増える時期です。
でもそれは、発達の一過程。この時期に、試行錯誤を繰り返しながら味覚の基礎を作ったり、食べ方を習得していったりするのです。
食事を通じて子どものさまざまなな発達を促すためにも、まずは「食べてくれること」が大前提。そのためには、「食べたい!」という気持ちを引き出すことが大切です。
「どんなものを」「誰と」「どこで」「どのように」食べるかなど、いろいろな要因で子どもの気持ちは変わってきますから、お子さんに食べる意欲がないという場合には、下記に挙げた6つのポイントで、毎日の食事を見直してみてください。
お子さんのペースに合わせ、できることから積み重ねていくと、少しずつ変化が見えてくるはずです。今、「自分で食べる楽しみ」を知ることや、家族や仲間と食卓を囲む「楽しい食の思い出」を作ることは、将来の生活を支える力にもつながっていきます。
「食べたくなる!」食事のポイント6
ポイント1:
楽しい雰囲気でみんなで食べる
子ども一人で食べるよりも、おう ちのかたも食事を並べて、声を かけながら一緒に食べることで、
「自分もまねしてみよう」という 気持ちになる。
ポイント2:
世話を焼きすぎず、自主性を尊重する
せかさずに見守ることが大切。自 分でやりたい気持ちを損ねないよう、手元ではなく子どもが食べている食器を押さえてあげるなど、さりげないフォローを。
ポイント3:生活リズムをととのえる
早寝早起きをし、日中にできるだけたくさん体を動かす。だらだらとお菓子や飲み物をあげずに、しっかりおなかをすかせることが大事。
ポイント4:自分で食べやすい調理の工夫
食材の大きさやかたさは子どもの発達段階に合わせたものを。子どもが自分でおいしく食べられれば、達成感を感じて食べることへの自信につながる。
ポイント5:見た目の楽しさ
まずは食べ物をしっかりと見せ、 何を食べるのかを知ることが大 切。きれいな色やかわいい形な ど、子どもをひきつけるビジュア ルにするよう心がけるとよい。
ポイント6:食事作りに参加する
さまざまな食材の色や形、調理中のにおいや音など 、「いただきます」にいたるまでの過程に、五感で触れる実体験が子どもの食欲を引き出す。