ペアレントトレーニングという言葉、聞いたことはありますか?もともとは、発達障害のある子供を持つ家庭を支援するために、アメリカで開発されたプログラムです。日本では子育ての困りごとを改善し、親と子供のよりよい関係作りを目指すプログラムとしても注目を集めています。そこで今回は、ペアレントトレーニングとはどのような内容なのか、どこで受けられるのかなどについてご説明します。
ペアレントトレー二ングとは?
ペアレントトレーニングは、1974年にアメリカのUCLA神経精神医学研究所のハンス・ミラー博士によって開発されました(※1)。
子供に発達障害があるなど子育てにストレスや悩みを抱える保護者に対し、子供への適切な関わり方を指導するプログラムで、行動療法を土台にしています。
行動療法とは?
ペアレントトレーニングの土台となっている行動療法とは、患者さんが抱えている行動上の問題(癖や恐怖症など)を、様々な技法を用いて修正していく心理療法です(※2)。
例えば、何か恐怖を抱く対象のある患者さんには、楽しい雰囲気の中で少しずつ恐怖の対象に近づき慣れていくようにします。あるいは、怖いと思う対象に思い切って近づき、一定時間身を置くことで恐怖に慣れてしまうという「暴露療法」などもあります。
ペアレントトレー二ングはなぜ保護者向けに作られたの?
行動療法は子供の行動がどう変化するのかを確認しやすいため、専門家によって、治療の現場で広く実践されてきました。
しかし、専門知識のない保護者が家庭の中で行うのは難しいこと、そして子供への応対のキーパーソンは保護者であることから、保護者を継続的に指導する「ペアレントトレーニング」のプログラムが確立していきました。
それだけ、子供の成長には親の関与が欠かせないということですね。
日本でのペアレントトレーニングの歴史は?
日本では1990年代から発達障害に対する関心が高まり、障害の特性に合わせたサポートが検討されるようになりました。
そして、日本に先駆けて研究や実践が進んでいたアメリカの「ペアレントトレーニング」に着目し、日本の実態に合わせて改良し、取り入れたのが始まりです。
日本にはいくつかのペアレトレーニングがあり、以下が代表的なものです。
● 肥前方式(国立病院機構肥前精神医療センターが開発)
● 奈良方式(奈良県心身障害者リハビリテーションセンターが開発)
● 精研方式(国立精神・神経センター精神保健研究所が開発)
いずれのペアレントトレーニングも10回の講習(隔週開催・5ヶ月で修了)で構成されています。
日本のペアレントトレーニングの現状は?
ペアレントトレーニングは、厚生労働省によって発達障害者支援施策のひとつに認定されていて、「発達障害者の親が自分の子供の行動を理解し、発達障害の特性をふまえた褒め方や叱り方を学ぶための支援」と定義しています(※3)。
しかし現在は「何度言っても聞かない」「落ち着きがない」「かんしゃくを起こす」といった、保護者を悩ませることが多い子供の行動に対応するペアレントトレーニングも多くあります(※4)。
ペアレントトレーングは発達障害者支援施策だけでなく、育児の困りごとを解決し、ママやパパと子供のよりよい関係を築くためのプログラムという意味合いも強くなってきています。
現在、ペアレントトレーニングのような子育て支援を必要だと感じている自治体は多いものの、十分な情報提供や実施体制が整っていないのが現状です(※5)。
ペアレントトレーニングの具体的な内容は?
ペアレントトレーニングは、参加者の対象や人数、構成や内容などが規定されていません。
そのため内容は様々ですが、一般的なペアレントトレーニングでは、個人ワークや参加者同士のセッション、グループワークを通して以下のことを考えたり、学んだりすることが多いようです。
1. 子供の行動やその意味を分析する
2. 変化させたい行動を明確に整理し、その対処法を考える
3. 褒め方、子供の言動に対する効果的な無視の仕方、指示の出し方を習得する
ペアレントトレーニングの効果は?
例えば、食事中に立ち歩いてしまう子供に「座って食事をする」という目標を設定したとします。すると、専門家との訓練では座って食事をできても、自宅に帰ると食事中に立ち歩いてしまう、というようなことがよく起こっていました。
一方、ペアレントトレーニングで保護者が行動療法や子供への接し方を学ぶと、子供も日々の生活の中で訓練を積み重ねられるようになります。その結果、よりスムーズに目標を達成したり、新しい行動を習得できるようになったといわれています。
そのほか、下記のようなメリットもあると考えられています。
● 子供にどう接したらいいのか見えるため、きょうだい関係・親子関係が改善される可能性が高い
● ペアレントトレーニングに参加した保護者同士で、子育ての悩みや不安を共有しあえる
ペアレントトレーニングはどこで受けるの?
ペアレントトレーニングを行っている団体は複数あります。
例えば、自治体にある発達障害者支援センターなどの行政機関や役所、病院などの医療機関、大学と連携している研究会などです。
最近では、NPO法人や社団法人などでペアレントトレーニングを実施しているところも増えています。
ペアレントトレーニングは、開催団体によって対象となる子供やプログラム内容も様々のようです。問い合わせをしてから参加すると安心ですね。
ペアトレーニングでよりよい親子関係に
子供に発達障害があったり、頭を悩ませてしまう行動があったりすると、保護者としてどう対応していいのか困ってしまうこともありますよね。そんなときは、積極的にペアレントトレーニングを活用してみましょう。
ペアレントトレーニングをとおして行動療法に基づいた子供への接し方を学ぶことで、子供はできることが増えて自信がつき、不適切な行動をやめられるようになってくるでしょう。
そうすると子供はもちろん、家族みんながいつも笑顔で生活できるようになりますよ。